定期的に師兄と自主練をしているのですが、私と師兄はそれぞれ主眼としている武術の種類が違います。
というか、全然違ってそれぞれにあった武術を老師が授けて下さっているので、以前も「なんだか私たちは00ナンバーサイボーグみたいだね」なんて話したことがあるくらいです。
それぞれに違う能力を持つ改造人間になって行っています。
私は現在は、五祖拳を専らとして教わっているのですが、師兄は八極拳が一番お好きだそうです。
私は八極拳はやっていないしそちらには目が行かないのですが、師兄やお友達が楽しそうに練習をしているのは非常に好きです。
そんな八極拳好きの師兄は色々なことに関心があるようで、蔡李佛ではこういうのはどうやるのだ? それはどうしてそうなのか? というような質問を受けることがまれにあります。
そのような時は恩ある師兄ですので、隠さずお答えをしています。
この間は五祖拳とよく似た客家拳法のお話が出たので、その勁道についてお話をしました。
五祖拳と客家拳法は、見た目もよく似ていますし、同じく朝暘の姿勢が基本となります。
そして拳訣は浮沈呑吐で両者に共通しています。
しかし。
それでも五祖拳は全身が一つに浮沈呑吐して統合されているのを、揺肩俊胛で操作しているらしいのに対して、客家拳は左右に軸で別々に動かすのでとんでもない。
全身が一つだから揺肩俊胛で水平ラインの操作が出るのでしょうが、そもが左右がバラバラに動いているのでその水平面の操作がありません。
左右の二軸がバラバラに螺旋を描いていますので、双重なのに単重みたいに使うという見たことのない物になっています。
それを説明するために師兄に私のお腹を触ってもらって、左右の腹直筋が別々に上下に動くのを確認したら不思議がっていました。
これが出来るのは、蔡李佛で単重の軸を練功してきた結果です。
これを触ってもらって、生徒さんに体得してもらうからみんなすぐに出来るようになります。
もちろん、単重なので使うのは片方。
両方同時に動かすのは練習としてです。
ですが、客家拳ではこれを本番で用います。
双重なのに単重みたいに使う。
そしてそれを単重みたいに上下の入れ替えを一動作ごとに行います。
腹筋千切れそう。
もちろん腹筋はその一部に過ぎなくて、実際は足の裏から手の先、頭の先にまでこれは通底します。
そしてさらに、下丹田は重石として下に居り続ける。
これがあるから、上に登る方の軸の側が物理的に上がることなく、身体の内側の力だけが上下に動きます。
これは上下勁と言って、昔から大切にしている物でした。
客家拳は偏差が起こりやすいようですが、こんなに難しい体内の操作をしていたら、それは危険な訳ですよ。
師父の門派ではこの武術を、勁道功夫と総称しているようですが、まさに勁の道を重視した流儀であると言えましょう。
そのようである物の為か、戦法そのものはまっ正面からお相撲やフットボールのように相手にぶち当たって行くというような、大変に分かりやすい物になっています。
まさに熊の腰に虎の威。やっている先生方も大柄でちょっと怖い感じの方が多い……。
でも決して、力任せにやっている訳ではないのです。