私はいつも、抽象概念を理解できるかどうかということが極めて人の資質として重要だと思っているのですが、これは恐らくはコリン・ウィルソンの影響でしょう。
彼は人類の中でわずか4%しかその資質を持った人間は居ないと言っていましたが、果たして実際にはいかがなものでしょうか。
最近では、まともに物を考えられるのは人類の内、5%だけだなんて言う先生も出てきているので、21世紀になって1%くらいは向上したのかもしれません。
一般に、中国武術は誰がやってもできるようにならないと言われて来ました。
中国との国交が正常化して中国武術が日本に入ってきてから少なくとも21世紀に入るくらいまではそんな感じで間違いではなかったと思います。
また当時言われていたのが「十年不出門」と言って太極拳を始めとした中国武術は十年やってればできるようになる、ということでした。
ですので、すぐに強くなりたいのならボクシングや空手などをやったほうが良いというのも定説でした。
ただ、実際にはおそらく、間違った練習を正しくない指導者から受けていたら、何十年経っても恐らくはできるようにはならないでしょう。
そしてそれがこの国の中国武術の殆どの現状であると思われます。
教わっている物がそもそも正しくないのだから、それは当然たどり着く訳がない。
しかし、正しければ全員が成功できるのかというと、やはりそういう物ではないようです。
4%か5%だとは言いませんが、どうしても出来る人と出来ない人が出てきてしまう。
それは、恐らくは心根や感性といった資質の問題なのでしょう。
それほど真面目ではない人でも、やっているうちに「あ、これ前に教わったやつと同じことやってる。そうだ、ほんとに全部同じなんだ」と、武術の中の多くの練功法や技術に通底したテーマを自力で見つけられる人がいます。
こういう人は後はもう、その一つをやっていくだけだから道が早い。
そうでない人は、目先のことを全部バラバラに追いかけてゆくことになってしまうので、労力が多い割にはいつまで経っても得られないということがおきえます。
「一が分かれば全てが分かる」これが私自身も昔からずっと言われてきたことでした。