球の勁進捗 | サウス・マーシャル・アーツ・クラブ(エイシャ身体文化アカデミー)のブログ

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気持ちよく生きるためのライフスタイルとしての南派拳法(カンフー)蔡李佛拳とエスクリマ(フィリピン武術)ラプンティ・アルニス・デ・アバニコを横浜、湘南、都内で練習しています。オンライン・レッスン一か月@10000で行っております。
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 この1月に、伊藤聡先生の新刊が発表されました。

 先生はいわば私の先人、オリジナルで、アジアの国を旅して現地の武術を研究されて来た方で、今回の本は古式ムエタイに関するものでした。

 とはいえ内容は新しいものではなくて、以前雑誌で発表していた記事を書籍化したものです。

 基本的に伊藤先生の本は偉大な先人として尊敬しているので見かけたら買うようにしているのですが、古式ムエタイは私にも縁のある重要なファクターです。

 というのも、私が継承している鴻勝蔡李佛拳は、太平天国の乱における調練用の武術ですので、太・平・天・国の四つの感じの名前を冠した套路があります。

 この内、太拳というのは実はこれ、古式ムエタイなのです。

 太平天国が興った江西省は現代でも泰族の自治区であり、泰族とはすなわちシャム族、タイ王国の人たちです。

 今回の伊藤先生の書籍では、もともと彼らが住んでいた雲南省から古式ムエタイは起こり、動乱の中で泰族の人々が移住して行き、いまのタイ王国の場所に根付いたということが書いてあります。

 そうして西に行った一派の一方、東側の中国黄原に移動して行った人々が伝えたのがこの泰拳です。

 または彼らのことを壯族ともいうので、これを壯拳と称したりもします。

 これをする人々の内乱が大規模になり、蔡李佛一門も参入し、そこで泰拳を取り入れて太拳の文字に置き換えたのがこの武術となります。

 そう。つまり私は、希少種の古式ムエタイの継承者なのです。

 そして伊藤先生も書いているように、古式ムエタイには回し蹴りがない(蔡李佛自体にはなぜかあるのですが)。

  メインの武器と成るのは肘と膝です。

 古式ムエタイ名物の跳躍技が出てくるのでびっくりします。

 もしかしたら、鴻勝蔡李佛から分派した北勝蔡李佛でやたらに飛び技があるのはその影響かもしれません。

 まったく同じ様な、現代MMAでいうスーパーマン・パンチがどちらにも伝わっています。

 とはいえ、最近の練習会で肘打ちに力を入れているのはこの影響ではありません。

 肘打ちは、用勁を学ぶのにとても良いのではないかと思ったからです。

 しっかりと立てて、肘で発勁ができるようになったなら、その肘を伸ばしたら前腕による打となります。

 これは客家拳法などで常用される定番手法となります。

 逆に肘を用いず肩で打てば肩打となり、肩ではなく腰が当たれば胯打となります。

 今回フィーチャーしているやり方は、蔡李佛の鉄線勁の基本的なやり方とは少し変わった切り口で説明をしています。

 というのも、以前から書いてきた大きい丹田を使った物だからです。

 下丹田と中丹田、つまり腹腔と胸腔を一つの器官と見立てて使うやり方です。

 やっている事自体は変わらないのですが、こちらの解釈では線ではなく膜が重視されます。

 以前から書いてきているのですが、線を使って連行をしている内に構造が強くなって膜が発達してきます。

 これが膜騰起です。

 この膜によって件の大きい丹田はつくられているので、これを用いれば膜による発勁となります。

 そういう意味ではこれは、岳家拳で教わった丹田発勁の概念に近いのかもしれません。

 五祖拳でやってきた双重が大きなヒントになったことも間違いありません。

 双重をすることで、単重でたつということがどういうことか、またそもそも立つということがどういうことかを改めて見直すことが出来ました。

 また、膜を使って打つのだという方法は洪拳や客家拳の練習で教わったものでもあります。

 しかし、客家拳には客家拳の要領があり、また太極拳にも太極拳の独自性があります。

 ですが、それぞれが作用しあって今回の切り口に繋がっています。

 師父が言う「みんな同じだよな」でも「それぞれちょっと違う」というような状態に私も段々なってきました。

 立つための強い下盤、丹田を捻じるようにして伝える中盤、そして相手に接触する上盤の三つの要素に関しては、老師からも基本として教わったものです。

 これらの教えに逆らうことなく、上盤から線を抜いて放鬆を持ってしても打てるようになりました。

 生徒さんたちを打って伝授をしたのですが、特に両腕を重ねてブロックをした生徒さんをその上から下に垂らした前腕で打ったときには、一瞬体ごと浮くほどになったのですが、内側に力が来たという生徒さんがその一方で、打たれた腕自体はまったく痛くないと不思議がっていたので、これで正解だったのだと改めて思った次第です。

 そこで気づいたのですが、これ、鉄線勁を抜いてこの形で打つのは心意拳の基本技です。

 また、それを単重ではなくて双重で打ったら五祖拳そのもののように成る気がします。

 やはり、いろいろな物が繋がっているようにも思えてまいりました。

 もともと、五祖拳は最終段階では心意拳になるという話を調査しようと始めた五祖拳だったのですが、確かに共通性も見えて来たようにも感じるところです。