外見至上主義 | サウス・マーシャル・アーツ・クラブ(エイシャ身体文化アカデミー)のブログ

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気持ちよく生きるためのライフスタイルとしての南派拳法(カンフー)蔡李佛拳とエスクリマ(フィリピン武術)ラプンティ・アルニス・デ・アバニコを横浜、湘南、都内で練習しています。オンライン・レッスン一か月@10000で行っております。
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 以前こちらに書いたのですが、ある知的な感じの筋トレユーチューバーが言うには、現在地方のボディ・コンテスト(ボディ・ビル、フィジーク、ビキニ・フィットネスなど含む)に出てくる選手たちというのは、一昔前ならユーチューバー、もう少し最近なら素人喧嘩大会などで一発当てようと言うような山師的な人間ばかりなのではないか、ということでした。

 であるので彼は、そのような人間のたまり場である以上、ドラッグ(ステロイド)の濫用は避けようがないのではないか、という社会学的分析をしていました。

 その後の数か月で、あっという間にフィットネス業界の薬物汚染が暴かれて行っています。

 つい先日目にした中には、このような発信もありました。

 この間、薬物乱用者が多数発覚した大会に過去二回参加したことがあると言うボディ・ビルダーの方の動画なのですが、彼もまた、前述のトレーナーと同様の見解を示しています。

 この方はもう大会参加は取りやめたようなのですが、その理由と言うのが界隈の民度の低さだと言うことでした。

 動画の中で言うには、大会は「汚れた水槽」、参加者は「人として三流以下の畜生」であり、明らかに薬物が蔓延して当たり前の環境だと彼もまた言っています。

 なぜそのようなことになっているのか。

 上述のトレーナーの見解は、結局はこの閉塞して貧困化している社会で、都会に出てくるだけの資金を貯めることも出来ず、何かをするだけの時間を確保することも難しい地方の低所得階層の若者が、どうにか脱出のためのルートとして、生活の中で出来る努力に筋トレを選び、一発当てるための手段として参加してくるのであろう、という物でした。

 今回の動画の方はまた、また別のユニークな社会学的見解を示しています。

 つまり、このボディ・コンテストというものは、初めからジェンダーの優位を権威づけるという機能の企画で、いわゆるミスコンの亜種であると言うのですね。

 そのような、ルッキズム、ジェンダー意識の低い企画に参加しようと言う人間が、世の中的に見て高いレベルの見識にある訳がない、というのがこの方の見解です。

 これは確かに面白いと思いました。

 そうですね。人の外見を見ていいだ悪いだと言うことは、現在世界規模で人類が直面している問題に関わることです。

 我々はそういった己の心の硬直を乗り越えようとしている最中ですね。

 この方が曰くには、ミス・コンテストの優勝者なんてのは、インタビューでどれだけきれいごとを語っていたって、結局は整形手術で出来上がって外見だけに全力を費やしているような連中なのだから、それに対して整形はするなと言っても無駄だというのですね。

 なので、ボディ・コンテストでドーピングをするなというのも同じことで、そんなもの絶対にするに決まっているということです。

 だって、たかだかちょっと使うだけで、唯一絶対の評価基準に対して圧倒的な成績を示せるのですから。

 その唯一絶対の評価基準と言うのは、外見ですね。

 そのような外見至上主義というのを、この方は口を極めて否定している訳です。

 現在、ボディ・ビル界で期待されているある若い天才は、わずか七年で王位に就きました。

 以前にも書いたことですが、本気で取り組んだなら人間はおよそ10年で自己の筋肉の限界に達することができるそうです。

 それを七年。

 そして、その後を考えると、どうしても人間は衰えてゆきます。

 同じ年齢のリーグの中で上位にはなれても、40代の自分が20代の自分よりはるかに優れたボディ・ビルダーになっているということは考えにくいでしょう。

 彼の配信者の考えを借りるなら、これはまさにミスコンと同じですね。

 若さによって限られたピークの時代の中で、最短で結果を求めようとするなら……。

 そして若さと言うのは不可逆な物なので、あとでやっぱりやりなおそうということが出来ないのです。

 人生において外見しか自分のアイデンティティが無い人間が、その最盛期に最高度まで至ろうと思ったら? 

 きっと誘惑の力は大きいのでしょう。

 ルッキズムとジェンダー意識という新しい切り口でこの現象を分析するとしたら、ここにはまさに現代社会の基本的な構造が集約されているようにも思えます。

 

 少し話がずれますが、いつも書くように武術界も偽物ばかりが溢れています。

 日本の中国武術界などは山ほど先生が居るけどほとんどが偽物だと思って良いでしょう。

 その中で、明らかに間違いない本物だと言う正統の先生も何人かいます。

 私は本物が正しく伝わることだけが最善だと思ってそれらの先生方を陰ながら応援しているのですが、その中の一人があるとき、私のこのような見解に同意を示してくれました。

 世の中には、格闘技まがいや表演の偽物が溢れているので、本物としてはやはりそれらとの差別化を正しく訴え、きちんとした物への理解を求めているようでした。

 なぜ、人々は騙りを犯し、偽物に流れるのでしょうか。

 ボディ・コンテスト業界の腐敗と同じ構造がそこにはあるのではないでしょうか。