「ブーリン家の姉妹」
(原題: The Other Boleyn Girl)
2008年2月29日公開。
ヘンリー8世の寵愛を受けるアン・ブーリンとその妹を描く。
興行収入:$68,280,091。
脚本:ピーター・モーガン
監督:ジャスティン・チャドウィック
キャスト:
アン・ブーリン:ナタリー・ポートマン
メアリー・ブーリン:スカーレット・ヨハンソン
ヘンリー8世:エリック・バナ
あらすじ:
16世紀。
王族間において政略結婚が常識だった時代のイングランド。
新興貴族のトーマス・ブーリン卿(マーク・ライアンス)には、アン(ナタリー・ポートマン)とメアリー(スカーレット・ヨハンソン)という二人の姉妹がいた。
ブーリン家にとって、娘たちは一族の経済的、社会的繁栄をもたらすための大切な道具であった。
その頃、世継ぎの男子を得られない王ヘンリー8世(エリック・バナ)は、世継ぎを生むための愛人を探していた。
それを聞きつけたブーリン卿は、娘のアンをその座に据えようと画策。
アンを王に引き合わせる。
ところが、王が興味を示したのは妹のメアリーだった。
既に結婚していたメアリーだったが、一族の繁栄のため、王の申し出を受け入れる。
一方、深く傷ついたアンは秘密裏に結婚。
だが、王の許可なく貴族が結婚することは認められていない時代。
両親によって、アンはフランスへ送られてしまう。
やがて、メアリーは王の子供を身篭る。
それに合わせてブーリン一族は次々と出世してゆく。
だが、メアリーが体調を悪化させ、ベッドで過ごす時間が多くなると、王は次第に興味を失ってゆく。
危機感を抱いたブーリン卿は、王を繋ぎ止めるためにアンを呼び戻す。
王との結婚を奪われたアンにとって、それは待ちに待った妹への復讐の機会だった。
宮中に出入りするようになったアンは、洗練された振る舞いでたちまち王の心を捉える。
王に迫られたアンは、男子を出産したメアリーを田舎へ送り、王妃との離婚を要求。
離婚を認めないカトリック信徒の王は躊躇するが、姉との和解を願うメアリーが説得。
遂にアンはイングランド王妃となる。
だが、それは大きなスキャンダルに。
アンが男子を出産しさえすれば丸く収まると考える王だったが、生まれたのは女子だった。
そして二人目を流産すると、王はアンを反逆罪で捕らえる。
死刑宣告されたアンを救うため、姉を信じるメアリーは自らの危険も顧みず王の下へ向かうが……。
ネタバレ:
16世紀のイングランド王室。
イングランド王ヘンリー8世と、兄の未亡人キャサリン・オブ・アラゴンとが結婚した。
だが、男子後継者が誕生しなかった。
二人の間の子供は、娘のメアリー王女だが、ヘンリーは彼女が女性としてうまく統治できないのではないかと懸念していた。
一方、レディ・メアリー・ブーリンはウィリアム・ケアリー卿と結婚する。
メアリーの叔父であるノーフォーク公トーマス・ハワードと彼女の父トーマス・ブーリン卿は、メアリーの姉であるアンにヘンリーの息子を産ませ、一家の地位が向上することを期待して、アンをヘンリーの新しい愛人に据えようと画策する。
アンはその作戦を受け入れる。
だが、狩猟中の事故で負傷したヘンリーは、傷の手当てをしてくれるメアリーに夢中になってしまう。
その後、ヘンリーは彼女とそしてブーリン家を招待する。
メアリーとアンはキャサリン女王の侍女となり、ウィリアム・ケアリーは海外に赴任する。
メアリーは王と関係を持ち始め、彼と恋に落ちる。
失意のアンは、メアリー・タルボット夫人の婚約者である貴族ヘンリー・パーシーと密かに結婚する。
アンは兄のジョージに結婚生活を明かし、ジョージはメアリーにそのことを知らせる。
アンの評判を守りたいメアリーは父親と叔父に警告し、二人は結婚の事実を秘密にしたまま強制的に結婚を無効にさせた。
トーマスはアンをフランスに追いやる。
メアリーはすぐにヘンリーの子供を妊娠する。
その見返りに、彼はブーリン家に新たな称号と財産を与え、ジョージが大嫌いなレディ・ジェーン・パーカーと婚約するという報酬を与えた。
メアリーは妊娠の合併症を経験し始め、子供が生まれるまで寝たきりになってしまう。
ノーフォークはアンを思い出し、別の愛人を探すことからヘンリーの気をそらした。
ヘンリーが最初は自分の妹を好んでいたことに憤り、嫉妬し、復讐に駆られたアンは、ヘンリーの誘いを拒否してヘンリーを惑わしはじめる。
メアリーはヘンリーとの間に息子を産むが、アンはその男児は嫡出子であり王位を継承できないと指摘する。
このため、ヘンリーはメアリーを拒否し、子供を認知することを拒否する。
アンはヘンリーの誘いを断り続け、ヘンリーがキャサリンをもう寝かせなくなり、メアリーと話すのをやめたら受け入れると約束する。
これにノーフォークは激怒するが、アンは女王になってヘンリーに嫡子と後継者を与えるという野望を明かす。
その直後、メアリーとその子供は田舎に追放され、ウィリアム・ケアリーは亡くなる。
教皇クレメンス7世がキャサリンとの離婚を拒否したため、アンはヘンリーにカトリック教会から離脱するよう圧力をかける。
ヘンリーはアンとパーシーの結婚の噂を知る。
メアリーは英国法廷に連れ戻されるが、ヘンリーにその噂は誤りだと断言する。
メアリーはアンの勧めで残ることにした。
ヘンリーは自らを英国国教会の最高首長であると宣言する。
彼は離婚を認め、キャサリンを法廷から追放する。
アンは、法的に結婚できるようになるまでヘンリーとの関係を拒否する。
すると、彼は怒りと欲望に支配されて彼女をレイプした。
暴行によって深いトラウマを負ったにもかかわらず、妊娠したアンはヘンリーと結婚し、イングランドの新しい女王の配偶者として戴冠した。
アンは娘エリザベスを出産し、ヘンリーの母親にちなんで名付けられた。
ヘンリーは、まだ男子の跡継ぎがいないことに失望し、アンの女官ジェーン・シーモアに秘密裏に求愛を始める。
アンはイギリス国民にひどく嫌われており、イギリス国民は彼女を魔女として公に非難しており、結婚生活が破綻するにつれて被害妄想を抱き始める。
息子を流産したアンは命の危険を感じ、ジョージに妊娠を懇願する。
彼は同意しますが、それを実行することができない。
彼の妻ジェーンは、彼らをスパイしており、その疑惑を国王に報告する。
アンとジョージはその後、近親相姦、姦淫、反逆罪で逮捕される。
証拠が不足しているにもかかわらず、彼らは有罪となり死刑を宣告される。
メアリーは急いでロンドンに戻るが、首を切られたジョージを救うには遅すぎた。
メアリーはヘンリーにアンの命を助けてほしいと懇願し、ヘンリーはこれ以上メアリーを傷つけたくないと考え、そうすることを約束する。
姉妹は和解し、アンはメアリーに娘の世話をするように頼む。
ヘンリーからのメッセージがメアリーに届けられます。
彼は彼女に戻らないよう促し、アンが処刑されることを明らかにした。
アンが斬首された後、メアリーはエリザベスを連れて田舎へ向かう。
その後メアリーはウィリアム・スタッフォードという男性と再婚し、王室から離れて暮らした。
そして、エリザベスは女王エリザベス1世として40年以上イングランドを統治し続けたのであった。
コメント:
アン・ブーリンというエリザベス女王の実の母の波乱万丈の人生を描いた作品である。
主人公となるブーリン姉妹には、アン役にナタリー・ポートマン、メアリー役にスカーレット・ヨハンソンと、若手の二大女優を配し、両者の初共演となった。ヘンリー8世役にはエリック・バナが配役された。
正妻、妾、不倫がごちゃまぜになって繰り返される英国王室と周囲の男女の関係が描かれているが、もう何が何だか分からない状態だ。
ヒロインのアン・ブーリンを演じたナタリー・ポートマンは、この役が「これまで演じたことのない」キャラクターだったためこの役に惹かれ、アンを「強いが、傷つきやすいところもあり、野心家で打算的で、人を踏みつけることもあるが、良心の呵責も感じている」と評している。
撮影開始の1か月前、ポートマンは方言コーチのジル・マカロックのもとで英語のアクセントを習得するためのクラスを毎日受講し始め、マカロックも撮影中ずっとセットに滞在していたという。
スカーレット・ヨハンソンは、アンとジョージの妹であり、トーマス・ブーリンとエリザベス・ハワードの娘であるメアリー・ブーリンを演じている。
メアリー・ブーリンは、宮廷生活が嫌いで、むしろ田舎に住みたいと思っていた。
彼女は最初にウィリアム・ケアリーと結婚した。
彼の死後、彼女はウィリアム・スタッフォードという男性と再婚する。
ヘンリー8世を演じたのは、エリック・バナ。
4年前には、ブラピ主演の「トロイ」にも出演している。
バナはこの役のオファーを受けたときは驚いたとコメントし、ヘンリーのキャラクターを「どこか幼く、情熱と貪欲に突き動かされた男」と表現し、この役を「信じられないほどの事件に巻き込まれた男」と解釈したと述べた。
複雑な状況は主に彼自身の行為によって引き起こされたことに驚いたと語る。
役の準備中、バナは主に脚本に頼って自分なりのキャラクターを考え出し、「映画でのヘンリーの他の描写はわかりにくく制限がかかりすぎると感じたため、意図的に遠ざけていた」とコメントしている。
この映画は、U-NEXTで動画配信可能:
さて、この話はどこまで史実に合致しているのだろうか。
イギリス(厳密にはイングランド王国)のテューダー王朝のメアリ1世の次に王位についたエリザベス1世という女王(在位1558年~1603年)がいる。
16世紀後半のイギリス・テューダー朝の絶対王政全盛期の女王である。
彼女の父はヘンリ8世、母はアン=ブーリンだ。
父親ヘンリ8世は、6回も結婚を繰り返した。
そのほかにも何度も別の女性と関係を結び、生涯に渡って悪逆非道の限りを尽くしたとされている悪の王だ。
母親のアン=ブーリンは、エリザベス1世を生んだ後、姦通罪で処刑されている。
そんな両親のもとに生まれたにもかかわらず、45年の長期にわたる長期政権を維持した女王であった。
メアリ1世の親スペイン政策に不満を強めていたイギリス国民の心をつかみ、宗教問題の解決を進め、国民的な統合を再現して、テューダー朝絶対王政を確立した。
彼女は生涯結婚することなく、「わたしはイギリスと結婚した」と自ら言っているように政治に一生を捧げたところから「処女王」といわれて人気が高く、後の人びとからイギリスの繁栄した時代ととらえられている。
彼女が結婚しなかったため、王位継承者はスコットランドの王家ステュアート家から迎えることとなり、テューダー朝は終わりを告げたが。
ということで、アン・ブーリンという女性は、まちがいなく歴史に残る人物である。
ただし、アンとメアリーのどちらが姉であったかについては、歴史家の間で諸説あるという。