ハリウッド・スリラー映画 第80位 「レベッカ」 ヒッチコック監督のハリウッド作品第1作! | 人生・嵐も晴れもあり!

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「レベッカ」

 

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「レベッカ」 全編 (日本語)

 

1940年3月12日公開。

ヒッチコックの渡米第一作。

第13回アカデミー賞作品賞、撮影賞受賞。

興行収入:$6,000,000

 

原作:ダフニ・デュ・モーリエ

脚本:ロバート・E・シャーウッド、ジョーン・ハリソン

監督:アルフレッド・ヒッチコック

 

キャスト:

  • わたし: ジョーン・フォンテイン - ド・ウィンター夫人となった女性。両親を亡くし、天涯孤独の身で生活のためにホッパー夫人に支えていたが、マキシムと出逢い、彼の再婚相手になる。
  • マキシム・ド・ウィンター: ローレンス・オリヴィエ - マンダレイの主人。地元の名家の子息。最近妻のレベッカを事故で喪っている。気が短く、我を忘れて怒り出す悪癖がある。
  • ダンヴァース夫人: ジュディス・アンダーソン - マンダレイの家政婦長。レベッカを崇拝しており、「わたし」を嫌って屋敷から追い出すべく画策する。
  • ジャック・ファヴェル: ジョージ・サンダース - レベッカの従兄で愛人。本人曰く職業は高級車のセールスマン。軽薄で不躾な男。
  • フランク・クローリー: レジナルド・デニー - マキシムの不動産管理人で友人。
  • ベアトリス・レイシー: グラディス・クーパー - マキシムの姉。夫を尻に敷いているが、不安そうな「わたし」を励ましたりアドバイスを与える。
  • ジャイルズ・レイシー少佐: ナイジェル・ブルース - ベアトリスの夫。恰幅のいいユーモラスな紳士だが、不用意な発言も多い。
  • ジュリアン大佐: C・オーブリー・スミス - 警察管区長。マキシムと親しい。
  • ベン: レオナルド・キャリー - マンダレイの海岸の隠遁者。精神を病んでいる。
  • タブ: ラムスデン・ヘイア - 船大工。レベッカの船の整備を担当。
  • フリス: エドワード・フィールディング - マンダレイの最も古株の執事。
  • イーディス・ヴァン・ホッパー夫人: フローレンス・ベイツ - 「わたし」の雇い主。「わたし」を顎でこきつかったり、マキシムに色目を使ったりする。マキシムと「わたし」の婚約を知ると嫌味と捨て台詞を「わたし」にぶつけて去っていった。
  • ベイカー医師: レオ・G・キャロル - レベッカの主治医。ロンドン在住。レベッカが隠していた重大な事実をマキシムたちに告げる。
  • レベッカ・ド・ウィンター夫人 - マキシムの前妻。美しい黒髪の美人でマキシムと愛し合っていたと評判だったが、一年前に乗っていたヨットが転覆し、事故死している。名前のみの登場だが、物語で重要な役割を担う。タイトルのレベッカは彼女の名前。

 

レベッカ | アルフレッド・ヒッチコック

 

あらすじ:

ヴァン・ホッパー夫人の付き人(レディズ・コンパニオン)としてモンテカルロのホテルにやってきた「わたし」(ジョーン・フォンテイン)は、そこでイギリスの大金持ちであるマキシム(ローレンス・オリヴィエ)と出会い、2人は恋に落ちる。

マキシムは1年前にヨットの事故で妻・レベッカを亡くしていたのだが、「わたし」はマキシムの後妻として、イギリスの彼の大邸宅マンダレイへ行く決意をする。

多くの使用人がいる邸宅の女主人として、控えめながらやっていこうとする彼女だったが、かつてのレベッカづきの使用人で、邸宅を取り仕切るダンヴァース夫人(ジュディス・アンダーソン)にはなかなか受け入れてもらえない。

次第に「わたし」は前妻レベッカの見えない影に精神的に追いつめられていき、遂にはダンヴァース夫人に言われるまま、窓から身を投げようとしてしまう。

そのとき、偶然に上がった花火の音で「わたし」は正気を取り戻すが、それは座礁した難破船が上げた救難信号だった。

程なくその難破船の下から小型船がダイバーによって発見される。

見つかった船はレベッカのヨットで、船内からレベッカの死体が見つかる。

レベッカは嵐の夜にヨットで遭難し、流れ着いた死体をマキシムが確認して既に葬られていたとされていたことから、改めてレベッカの死因が調べられることになる。

この事態に絶望したマキシムはレベッカの死の真相を「わたし」に語る。

その日、かねてよりレベッカの放蕩と愛の無い結婚生活に悩まされ続けていたマキシムは、浜辺のボート小屋で彼女に妊娠した事を告げられ、「自分の子供で無い子供が跡を継ぐのはどんな気分かしら?私を殺したいでしょう?」と嘲られる。

怒りに我を忘れたマキシムは彼女を殴り、殴られた彼女は嗤いながら小屋の中を歩いていた所、躓いて転んでしまい、倒れた拍子に船具で頭を打って死んでしまった。

そのために、その遺体を運び入れたヨットごと沈めたのである。

マキシムがレベッカを全く愛してなどいなかったことを知った「わたし」はマキシムを支えようと決意し、2人は互いの愛を確認する。

レベッカの死に関する審問が始まる。

レベッカの船の整備を請け負っていた船大工のタブの調査により、レベッカの船には意図的に中から穴が空けられていたことが判明する。

レベッカの従兄と称する愛人だったジャックはレベッカが自殺するなど考えられないことや、自分の仕事(本人曰く高級車のセールスマン)に嫌気がさしていたことから、マキシムによる殺害の可能性をちらつかせてマキシムに金を無心する。

マキシムはジャックの脅迫を跳ね除け、逆にジャックを告発しようとする。

慌てたジャックはレベッカが自分の子を妊娠し、死の当日に医師の診察を受けていたことを明かす。

ところが、その医師の証言により、レベッカは妊娠していたのではなく、不治の癌に冒されていたことが明らかになり、レベッカの死は自殺によるものと断定される。

実は、自殺を決めたレベッカは自らの病を隠したままマキシムに自分を殺させようとしていたのである。

レベッカによる呪縛からようやく解き放たれた2人だったが、現実を受け入れられずに狂ったダンヴァース夫人によって屋敷は火をつけられ、彼女とともに焼け落ちていった。

こうしてようやく夫妻はレベッカから解放されたのであった。

 

遊歩者 只野乙山 『レベッカ』 (1940)

 

コメント:

 

アルフレッド・ヒッチコック監督による1940年のアメリカ合衆国のサイコスリラー映画。

当初は英国で活動していたヒッチコックの渡米第一作。

ヒッチコックの大傑作である。

原作者であるダフニ・デュ・モーリエ(Dame Daphne du Maurier, 1907年5月13日 - 1989年4月19日) は、イギリスの小説家。アルフレッド・ヒッチコックの撮影した『レベッカ』と『鳥』の原作者として知られる。

1969年、大英帝国勲章のナイト・コマンダーの勲位を得た。

「わたし」を演じるジョーン・フォンテインが美しい。

この人はイギリス人の両親のもとに生まれた。

開巻の女子学生風の夢見る若い女性から成熟した女性に変貌をとげる。

 

ローレンス・オリビエも素晴らしい。

この人は、イギリス人俳優で、舞台と映画で大活躍した。

映画の代表作は、『レベッカ』(1940年)、『ヘンリィ五世』(1945年、兼監督)、『ハムレット』(1948年、兼監督)、『リチャード三世』(1955年、兼監督)、『スパルタカス』(1960年)、『探偵スルース』(1972年)、『マラソンマン』(1978年)。

この映画はダンバース夫人(ジュディス・アンダーソン)の存在なくしては語れないだろう。

 

映画 『レベッカ』 (1940年) ー アカデミー賞作品賞を受賞したヒッチコック監督のハリウッド・デビュー作 ー 20世紀・シネマ・パラダイス

 

 

そして、現れない「レベッカ」という女性の存在が際立っている。

こういう作品を製作できたことで、スリラー映画の監督としてヒッチコックの知名度は一気に上がり、その後多くのヒット作を作り続けることとなるのだ。


ヨットの事故で亡くなったレベッカという女はいったい何者なのか?
その夫の物思いに沈んだような表情からは確かに、いまだその美しかった前妻を思いつめているように見える。

大邸宅を取り仕切る使用人のダンバース夫人は、仕えていたレベッカに対する異常なくらいの執着心を隠さない。

レベッカと情を通じていたらしい狡猾ないとこのジャック。

ボート小屋の番人の男が抱く恐怖心。

後妻となった女性ならずとも、レベッカの実像はつかみにくい。
 

映画 『レベッカ』 (1940年) ー アカデミー賞作品賞を受賞したヒッチコック監督のハリウッド・デビュー作 ー 20世紀・シネマ・パラダイス

 

映画を見る者は、使用人が何人もいる邸宅の新夫人となってまごつく女性の目線で、異様に膨らんだレベッカ像をまさぐらなければならない。

邸宅の誰もが不審な人物に見える。夫すらも。

不安な精神状態のヒロインがさらに追い詰められてゆく様子が際立っている。


ヨットの操舵を誤り、海で遭難したと思われていたレベッカが見つかってからのくだりは、この怪しげで不安定なミステリーを一気にまとめ上げている。
見終わってみると、虚飾に満ちたレベッカという女性の姿が浮かび上がるが、なぜ夫に愛情を感じなかったのか、それ以上に夫を貶め、苦しめようとしたのはなぜなのか、判然としない。

謎がまだある状態のままで終わっている。

このエンディングも、ヒッチコックならではのものだ。

 

 

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