「俗物図鑑」
1982年11月8日公開。
“出歯亀評論家”“横領評論家”“性病評論家”など奇妙な評論家が集まり、世の良識を向うにまわしてマスコミで活躍する姿を描く。
原作:筒井康隆『俗物図鑑』
脚本:桂千穂、内藤誠
監督:内藤誠
キャスト:
- 平岡正明 - 雷門享介(接待評論家)
- 巻上公一 - 小口昭之助(口臭評論家)
- 南伸坊 - 風巻扇太郎(盗聴評論家)
- 伊藤幸子 - 杉沢亜香(火事評論家)
- 栗林由美子 - 沼田峰子(万引き評論家・月経評論家)
- 山本晋也 - 城亀吉(出歯亀評論家)
- 大林宣彦 - 九十九八十八(自殺評論家)
- 土方聡司 - 羽根田俊也(墜落評論家)
- 黒岩秀行 - 雷門豪介(カンニング評論家)
- 山城新伍 - 片桐孝太郎(反吐評論家)
- 安岡力也 - 西条圭一(パーティ評論家)
- 入江若葉 - 平松礼子(贈答評論家)
- 朝比奈順子 - 歌川華子(性病評論家)
- 海琳正道 - 平戸源五郎(麻薬評論家)
- 上杉清文 - 本橋浪夫(横領評論家)
- 牧口元美 - 芥山虫右衛門(皮膚病評論家)
- 末井昭 - 平松景吉(ベスト・セラー評論家)
- 四方田犬彦 - 片眼の評論家
- 手塚眞 - Xマン(街頭インタビューされる男性)
- 竹中労 - 大屋壮海(映画オリジナルキャラクター・マスコミ界の黒幕)
あらすじ:
古色蒼然たる二階建てモルタルアパートに「梁山泊プロダクション」はある。
梁山泊プロは、接待評論家の雷門享介、贈答評論家の平松礼子、横領評論家の本橋浪夫、万引評論家の沼田峰子、火事評論家の杉沢亜香など、奇妙な分野の評論家の集団で、一般人の良識を逆撫でしながら、テレビ、出版などで活躍している。
ある日、享介、礼子、浪夫、峰子などが一室にいると、天井裏から一人の男が落ちてきた。
城亀吉というその男は覗き見のあらゆる装備を持っており、その日から、出歯亀評論家として、そこへ所属することになった。
さらに、全身皮膚病だらけの老人が現れ、みなは腰を抜かすほど驚くが、なんとか一室に隔離して、皮膚病評論家として登録された。
数日後、午後のテレビショーで、峰子と反吐評論家の片桐が文芸評論家と論争していた。
そして片桐は、持ち運ばれた反吐から、それを吐いた人を、スタジオの見物人から見つけだすというハナレワザを披露して、会場の主婦からヒンシュクを買っていた。
文芸評論家はタジタジとなり、反吐の主であるマスコミ界の黒幕大屋壮海は、梁山泊の活動を励ますのだった。
その頃、事務所には峰子が万引した八百万円のダイヤモンドの件で刑事が来ていた。
その時、亜香が火を放ち、アパートはまたたく間に焼失してしまった。
暫くして、財力を貯えた梁山泊プロは、中層の酒落れたビルを新築した。
その頃には、性病評論家の華子、墜落評論家の羽根田俊也、自殺評論家の九十九八十八、パーティ評論家の西条圭一、麻薬評論家の平戸源五郎が参加し、梁山泊プロはますます充実、主婦連、俗悪番組追放同盟、全国PTA協議会などからヤリ玉にあげられていた。
ついに各団体がビルに乗り込んで来た。そこで、享介たちは三人の代表を人質にするとビルを閉鎖する。
機動隊が動員され、各マスコミ、ヤジ馬が集まり、ビルの周囲は大変な騒ぎだ。
三人の人質は麻薬に酔わされ、抑圧されていた意識が一気に爆発、裸になってワイセツな言葉をまきちらしている。
評論家集団と機動隊の睨み合いは一週間ほど続き、ニュースを求めるマスコミ代表として壮海がやってくると、膠着状態を打破する事件を起こして欲しいと申し出る。
そこでメロメロになった人質を入口から解放し、テレビの晒しものにすることになった。
機動隊の射撃が始まった。
一人また一人と倒れていく評論家たち。
脱出に成功した華子、礼子、峰子たちが遠くの丘から梁山泊のビルを見つめていた……。
コメント:
原作は筒井康隆の長編小説『俗物図鑑』。
“出歯亀評論家”“横領評論家”“性病評論家”など奇妙な評論家が集まり、世の良識を向うにまわしてマスコミで活躍する姿を描く。
正に、タイトル通りの、いわゆる「俗物」のオンパレード。
評論家プロダクションの物語を平岡をはじめとする評論家や文化人が、実際に演じているのが特徴で、プロの俳優は入江若葉ほか少数である。
監督、脚本の内藤、桂の個人出資によって制作。
多くのメンバーがボランティア参加した自主映画。
興行形態の詳細は不明。
第9回映画ファンのための映画まつり(おおさか映画祭)「自主映画賞」受賞作。
筒井康隆の『ウィークエンドシャッフル』が好きだという人には理解出来そうな部分がある。
真面目なストーリーがないとダメという人は、見ない方が良いかも。
それだけ、変な映画であり、何もまとまったものもないから。
とにかく、あり得ない色々な俗物が出てくる最低のネタ満載だ。
てか、そんなの評論すんなよ、っていう感じ。
評論家を徹底的に風刺したツワモノたちがわんさかわんさか。
1982年(昭和57年)の映画なので、みんな若いし、当時のカルチャーが懐かしいというか、やっぱり時代を感じる。
当時はテレビでもこんな変人がこぞって出演して、面白がっている深夜番組がけっこうあった。
それを思い出す昭和は良かったなあという作品だ。
これぞ、大阪の俗ものの極致を行く、筒井康隆の世界を映像化してしまった危険かつ最低の作品。
非常にナンセンスで、ブラックで、悪趣味で、このノリに、ハマらない人には、つまらない映画だ。
俺はこういうノリ、嫌いではないという人だけお楽しみあれ!
エキセントリックモノが大好きな人向けの、ぶっ飛び映画だ。
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