「黄金」
(原題:The Treasure of the Sierra Madre)
1948年6月6日公開。
メキシコの金鉱で金の亡者になる男たちを描く。
興行収入:4.1百万米ドル。
受賞歴:
- 第21回アカデミー賞
- 監督賞
- 脚色賞
- 助演男優賞(ウォルター・ヒューストン)
親子(ウォルター・ヒューストンとジョン・ヒューストン)で、同一作品でアカデミー賞を受賞した最初の作品。
- 第6回ゴールデングローブ賞
- 作品賞 (ドラマ部門)
- 監督賞
- 助演男優賞(ウォルター・ヒューストン)
監督・脚本:ジョン・ヒューストン
キャスト:
- フレッド・C・ダッブス: ハンフリー・ボガート
- ハワード: ウォルター・ヒューストン
- ボブ・カーティン: ティム・ホルト
- ジェームズ・コーディ: ブルース・ベネット
- パット・マコーミック: バートン・マクレーン
- ゴールド・ハット: アルフォンソ・ベドヤ
あらすじ:
1920年のことである。
シエラ・マドレの山脈を西北に望むメキシコのタムピコの港で、運に見放されたあぶれ者のアメリカ人が二人落ちあった。
一人はダッブス(ハンフリー・ボガート)という男ざかり、一人はやや若いカーティン(ティム・ホルト)だ。
建築工事があるというので、早速汗を流したが二人とも賃金はもらえず、宿屋とは名ばかりの薄汚い小屋で、顔を見合わせて苦笑いした。
そして、ハワード(ウォルター・ヒューストン)という老人の山師がマドレの山の中に金があると話しているのを聞いた。
ダッブスとカーティンはだまされた気でハワードに案内させる。
というのはダッブスが富くじで少しばかり当てたので、それで必要な道具と食糧を買い、山が当たれば三人山分けと決めた。
タムピコからデュランゴまで鉄道で行ったがそれからはロバの旅であった。
不思議な運のよさで、三人は金を掘り当てたが、それからというもの、ダッブスは他の二人を疑いの眼で見て、夜もおちおち眠れない。
そこへ得体の知れないコーディ(ブルース・ベネット)と名乗る男が、ひょう然と風の如くに訪れて来て、仲間に入れてくれと資本金を出し、テコでも動かない。
ところが、突如ゴールド・ハットを頭目とする23名の山賊が襲って来た。
その戦いで三人はからくも命は助かったが、不意打ちを食ったコーディは殺されてしまった。
この事件でダッブスの神経はいよいよとがって来たし、その気持はカーティンにもうつって、三人の仲間はお互いを猜疑の眼で見て、にらみ合いを続けるばかりだ。
その間にも砂金は袋に一杯となったので、ともかくも山を去ろうということになる。
帰りの山路は難渋を極めたが、そのうえ途中でインディアンの群につかまった。
幸いにも無害な種族で、少年の急病を治してくれというのだった。
ダッブスの骨折りで少年は助かり、全集落の信任を得たけれども、彼の仲間に対する猜疑は強まるばかりだった。
ついにダッブスとカーティンは射ち合った。
カーティンは傷ついたまま捨てられ、ダッブスは宝を一人占めにして山を下ろうと難儀を続けた。
山賊のゴールド・ハットは待ち伏せして、ダッブスを刺殺して彼の砂金袋を奪ったが、袋を切りさいて出た砂金を金とは知らず折からの強風に金の砂を吹き飛ばしてしまった。
一方、カーティンは息を吹き返し、ハワード老人のところにからくもたどり着く。
そしてゴールド・ハットがダッブスを殺し、砂金を風に吹きちらかし、悪運つきて官憲に捕らえられたという話を一緒に聞いたハワード老人はカラカラと笑いながら、カーティンにさとすようにいった。
人生ってものはお笑い草だよ、とりわけ金が絡んだとなりぁ、きっとお笑い草に終わるんだ。
コメント:
時は1920年代のメキシコ。
メキシコ革命の混乱はほぼ収まっていたが、地方では山賊がはびこり人々を脅かし続けていた。
革命後の新しい政府により、地方の統制と山賊の排除は、フェデラルズと呼ばれる有能で非情な連邦警察に任されていた。
この話の主役ともなる3人のアメリカ人山師たちのような外国人にとって、山賊に出くわすことは死を意味するほど危険なことであった。
同様に、山賊も一度フェデラルズに捕まれば、自分の墓穴を掘り、「最後の一服」を与えられ、銃殺されることは明らかだった。
そんな中、3人の白人がメキシコの港町タンピコで出会い、一攫千金を夢見てシエラ・マドレ山脈の山中に金鉱を求めて参入するというお話である。
この映画は隠れた名作とされている。
ボギーは汚れ役の時こそ輝く。
登場人物みんなが愚か者で、世界は愚か者の欲望の上に成立しているのだとわかる。
倫理もルールもなにもない。
舞台はメキシコであるけれど、アメリカ社会が他人への猜疑心と嫉妬心に渦巻いていることを金鉱堀というドラマに落とし込んだだけかもしれない。
ボギーって都会派の探偵とかじゃなかったのか。
実は金鉱堀りもやるのだ。
真っ黒に日焼けした、徹底した悪役がボギーだ。
しかも、悪役の中でも心のひねこびた欲深く疑い深い男を演じている。
山へ入る前は、給料未払いのボスを襲ったときも、払われるはずだった金額だけを抜いてあとは戻す、律儀な男だったのに、黄金に目がくらんだのだ。
「カネ」「カネ」「カネ」!
この映画は、「人を見たら泥棒と思え」ということわざを思い出させる。
この映画にはまり込むと、観客は皆、3人のうち誰が悪党なんだろうと疑って見てしまって、ボギーと同じような疑心暗鬼になって行くのだ。
なかなか味わい深い作品である。
ボギーは、ニヒルな二枚目よりこういう汚れ役のほうが人間って複雑だなあと感じられて、役者としてこっちの方が面白い。
人生というものを感じさせてくれる。
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