「針の眼」
(原題:Eye of the Needle)
1981年7月24日公開。
第二次世界大戦下の英国で機密情報を握るスパイと人妻との葛藤を描く。
興行収入:$17,583,634。
脚本:スタンリー・マン
監督:リチャード・マーカンド
キャスト:
ヘンリー・フェイバー:ドナルド・サザーランド
ルーシー:ケイト・ネリガン
デイビッド:クリストファー・ケザノーブ
パーシー・ゴドリマン:イアン・バネン
あらすじ:
1940年のロンドン。
鉄道操車係ヘンリー・フェイバー(ドナルド・サザーランド)は、下宿屋のおかみをナイフで刺殺した。
その頃、同じロンドンの一角でデイビッド(クリストファー・ケザノーブ)とルーシー(ケイト・ネリガン)の新婚カップルが、新婚旅行の途中、自動車事故を起こし、デイビッドは両足を失う。
1944年、4年前にドイツ軍の攻撃で妻を失った中世史研究家パーシー・ゴドリマン(イアン・バネン)は、今、敵スパイ探索の任務についており、「ウィリーによろしく」というラジオ通信で暗躍するドイツ・スパイの正体を探っていた。
そのころ、フェイバーは、ドイツの情報部員からヒトラーの伝言連合軍の上陸地点はノルマンディーかカレーかを知りたいというのを聞き、その後その情報部員を殺した。
実は、フェイバーこそヒトラーが頼る最大のスパイニードルの仮の姿であり、例のウィリー…の発信者でもあったのだ。
フェイバーの顔を見たため情報部員は消されたのだ。
フェイバーは、早速イースト・アングリアの基地に飛び巨大な偽装作戦の事実をつかんだ。
木製の爆撃機が横たわり、いかにもカレー進攻を目ざしているように偽装してあるのだ。
ノルマンディーが上陸地点であることをつかみ、その証拠をカメラに収めたフェイバーは、ヒトラーのもとへと急いだ。
その後を追うゴドリマン一派。
やがて、スコットランドのオーバン海岸からUボートに向かったフェイバーの船は途中嵐で転覆し、とある荒涼たる島の一軒家にたどり着いた。
その家こそ、デイビッドとルーシー夫妻が3歳の息子と共に暮らしている家だった。
足を失って世を捨てた感のあるデイビッドからは、すでに愛を得ていなかったルーシーは、突然の閃入者に胸が高鳴るのを感じる。
その夜、何も知らないルーシーはフェイバーと愛を交わした。
しかし、フェイバーの挙動に疑問を抱いたデイビッドは、彼を灯台におびき出し問いつめた。
フェイバーのナイフが光った瞬間、断崖から落ちてゆくデイビッド。
翌日、ルーシーと息子ジョーは、デイビッドの溺死体を発見した。
彼女はフェイバーの恐ろしい正体に気付きだす。
死にもの狂いでSOSを打電し小屋に息子とこもったルーシー。
今は完全にスパイに戻った非情なフェイバーが、内部侵入をはかる。
鍵をはずそうと窓から手を入れたところをルーシーに斧で切り落とされ、傷ついたフェイバーは、無線を使って知らせようとするが、それをも阻止するルーシー。
彼女は傷つくのを覚悟で指を使ってヒューズをとばす。
電波を絶たれたフェイバーは、外に出て島からの脱出を計った。
海に出て数メートル離れたころ、彼は岸から放ったルーシーの弾丸のもとに倒れるのだった。
コメント:
サザーランドがドイツのスパイを演じるサスペンス作品。
だが、イギリスでのスパイ活動の中で人妻にも手を出すことで、不倫とスパイ活動の両面で活躍する話になっている。
第二次世界大戦下の英国に一人のスパイが暗躍していた。
その男の名はフェイバー、暗号名は「針」。
暗殺に細身の短剣を使うことから付けられた渾名であった。
「針」ことフェイバーは、来るべき連合軍の上陸地点を探り出す使命を受け、英国警察の追跡をかわしながら、それがノルマンディーであることを突き止める。
機密情報を得たフェイバーは小船で英国脱出を試みるが、暴風雨の影響で離れ小島に漂着してしまう。
その島には半身不随の灯台守とその家族が住んでいた。
フェイバーは一家の世話になりながら再度英国脱出を画策するが、心ならずもその家の妻と恋に落ちてしまう。
スパイ活動の場面と並行して、けっこう人妻との濡れ場も時間をかけており、エロいシーンになっているようだ。
そして、最後は彼女によって殺害されてしまうという役柄だ。
サザーランドならではの、怖いスパイと不倫を演じる色男の両面をしっかり演じる姿が際立っている。
ますますサザーランドの多面性が引き立つ異色作品である。
これは、のちに「スター・ウォーズ ジェダイの復讐」で監督を務めることになるリチャード・マーカンドの作品。
上級なサスペンスでまとまっているし、物語の素材はまるでアルフレッド・ヒッチコックばりだ。
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