「ロッキー」
(原題: Rocky)
1976年11月21日公開。
オスカー受賞の大ヒット・ボクシング映画。
スタローンが脚本と主演をつとめた名作。
興行収入:$225,000,000。
脚本:シルヴェスター・スタローン
監督:ジョン・G・アヴィルドセン
キャスト:
- ロッキー・バルボア(Rocky Balboa)
- 演 - シルヴェスター・スタローン
- 本作の主人公。ペンシルベニア州フィラデルフィアの小さなアパートで暮らすボクサー。15歳からボクシングを始めているが、芽は出ず、30歳になっても賭けボクシングの賞金だけでの生計を立てられなかった。そのため、闇金融を営むガッツォの元で取立てを行う。しかし根が優しいことが災いしてか、借金を踏み倒そうとする者を責め切れない。また、近所のペットショップで働くエイドリアンに恋心を抱いており、彼女を振り向かせようとするが、不器用な性格からいまひとつ想いを伝え切れずにいる。本名はロバート・バルボア。ニックネームは「イタリアの種馬(Italian Stallion)」。戦績は本作冒頭の時点で64戦44勝38KO20敗。
- エイドリアン(Adrian Pennino)
- 演 - タリア・シャイア
- 本作のヒロイン。 ロッキーが通うボクシングジムの近くにあるペットショップで働いている、人見知りの激しい女性。極端な恥ずかしがり屋で、男性とはまともに目を見て話すこともできない。
- ポーリー(Paulie)
- 演 - バート・ヤング
- エイドリアンの兄でありロッキーの親友。精肉工場で働いているがその収入に満足できないらしく、ロッキーにガッツォの元で働かせてくれるように持ちかける。自らも冴えない男でありながら、いつまでも独りで暮らす妹のエイドリアンを散々罵倒し、彼女に好意を抱くロッキーを奇異に思いながらも感謝している。
- ミッキー(Mickey Goldmill)
- 演 - バージェス・メレディス
- 1920年代初頭バンタム級の世界チャンピオン。引退後はジムを経営し、そこで10年前にロッキーと出会いボクシングを教えるも、結果を出せないうえに自堕落な生活を送る彼に業を煮やし「お前は傷んだトマトだ」と罵り、育成を放棄してしまう。本作では言及されることはないが、続編における彼の葬儀で、墓標にダビデの星が刻まれていたことからユダヤ系であると考えられる。
- アポロ・クリード(Apollo Creed)
- 演 - カール・ウェザース
- 現在の世界ヘビー級チャンピオンで、口汚いが本物の実力を持っている。自分の知名度を上げるため、無名のボクサーにチャンピオンへの挑戦権を与える。
- トニー・ガッツォ(Tony Gazzo)
- 演 - ジョー・スピネル
- ロッキーの知人で高利貸し。ことのほかロッキーを気に入り、食い扶持がないロッキーを取り立て屋として雇っている。
あらすじ:
フィラデルフィアはサウスサイドのスラム。そこに賞金稼ぎボクサー(プライズ・ファイター)としてヤクザな生活をしているロッキー(シルヴェスター・スタローン)がいた。
今、彼には新たな生きがいがある。
ペット・ショップに勤めるアドリアン(タリア・シャイア)に恋心を抱き始めたからだ。
素朴な彼女は精肉工場に勤める兄ポーリー(バート・ヤング)と共に暮している。
4回戦ボーイのロッキーは、今日もラフファイトぶりで勝利をおさめるが、『お前のようなガムシャラなファイトぶりではゼニにならん』と、ジムをほうり出されてしまう。
酒場でポーリーと飲み交うロッキー。
ポーリーはロッキーの妹への好意に感謝する。
数日後、人生最大のチャンスが訪れた。
近づく建国200年祭のイベントの一つ、世界タイトルマッチ出のアポロ(カール・ウェザース)の対戦相手がケガをしたため、代役としてロッキーが指定されたのだ。
元ハードパンチャーとして鳴らしたポーリーが、かつてのジムの老トレーナーのミッキー(バージェス・メレディス)が各々彼の協力を申し出た。
一方、アドリアンとの愛も育っている。
孤独だったロッキーの人生は一変した。
愛が、人生の目的が、そして自分を応援してくれる人々がいる。ロッキーの短期間の猛訓練が始まった。
そして試合当日、ハデな衣装で入場するアポロ、片やポーリーの会社マーク入りのガウンのロッキー。
賭け率は50対1。
ゴングが鳴った。
攻めるアポロ。
負けじと打ち返すロッキー。
7、8、9ラウンド。
ロッキーの善戦、手を焼くアポロ。
両者の腫れ上ったまぶたが血と汗にまみれる。
死闘だ。遂に試合終了。
凄まじい試合に酔いしれる観客達。
結果は引き分けだった。
だが、王座をかろうじて守ったアポロに比べ、恋人アドリアンの名を誇らかに呼び続けるロッキーには、敗北感など微塵にも感じられない。
『ロッキー!ロッキー!』と異様な興奮のリング上で、抱き合うロッキーとアドリアンだった。
コメント:
ボクシングに生きる若者の孤独、不安、愛、そして真の勝利とは……。
シルヴェスター・スタローンの代表作の一つ。
スタローン30歳の時の大出世作品。
映画デビューして6年後の作品である。
第49回アカデミー賞の作品賞・監督賞・編集賞ならびに第34回ゴールデングローブ賞ドラマ作品賞受賞作品。
また、2006年に米国連邦議会図書館がアメリカ国立フィルム登録簿に新規登録した作品の中の1つである。
こういう単純明快なストーリーが良い。
絵に描いたようなアメリカンドリームの映画だ。
勇気と希望を与えてくれる作品。
チャンピオンになるんだと戦闘モードのスイッチがはいって、早朝のトレーニングを始めるあたりから試合までは圧巻。
試合は引き分けだったのに、勝ったような感動を覚える。
試合は結果でなく、そこに行くまでの過程が大事なのだ。
早朝トレーニングの時に使われているテーマ音楽が、実によくマッチしていて雰囲気を盛り上げている。
ステディカムを本格的に導入した、その最初期の著名な作品としても知られる。
フィラデルフィア美術館前庭の階段、いわゆるロッキー・ステップをロッキーが駆け上がるシーンなどがその代表である。
練習のシーンの撮影を市内でおこなった際、ステディカムを使った小規模の撮影クルーだったため、映画のロケとは思われず、本物のボクサーと間違えた市民から声援を送られた。
特に、ロードワークシーンでは、果物屋の店主がロッキーにオレンジを投げ渡す場面があるが、これはこの店主が、撮影中のスタローンを本物のボクサーと勘違いしたことで起こったハプニングであり、それをそのまま映画に使用している。
観客役のエキストラを「フライドチキンを配布する」というチラシで募集した。
ほとんどが素人のため、撮影最終盤では統制を保てず、予定していたラストシーン(興奮した観客がロッキーを担いでいくというもの)を撮影できなかった。
また、メイク代を節約するために、負傷したロッキーの特殊メイクを少しずつはがしていくことで、最終ラウンドから第一ラウンドへと逆方向に撮影する変則的なやりかたをとった。
エキストラやカメオには、節約のためスタローンの家族や友人達が出演している。
弟のフランク・スタローンは序盤に登場する街頭で歌を歌って屯する若者達の一員として、父のフランク・スタローン・シニアはゴングを叩く役として出演した。
スタローンの愛犬・バッカスも出演している。
その他、ジョー・フレージャーが本人役としてカメオ出演している。
当時のスタローンの妻サーシャはスチール写真のカメラマンとして参加した。
当初撮られたラストシーンは、全く違うものだったという。
それは、戦いを終えたロッキーが1人控室に戻ると、そこで待っていたエイドリアンが小さな星条旗を取り出しロッキーに手渡す。
そして2人だけで静かに裏口から会場の外に出て行くというものであったが、正式公開には至らなかった。
なお、この没シーンの二人の後ろ姿を使った静かな印象のポスターが作られ、公開時の宣伝として日米で実際に使われた。
しかしそのラストシーン収録の3か月後、激闘を戦い抜いたロッキーが「エイドリアン!」と叫び、リング上でエイドリアンと熱い抱擁を交わすシーンが新たに撮影され、この華やかで印象的なラストシーンが正式なものとなった。
これが、本作の大ヒットの要因になったことを間違いない。
ロッキーが生卵を飲むシーンはアメリカの観客は悲鳴やブーイングが出た。
海外の生卵は危険であり、食中毒の可能性もある。
危険を承知で試合に挑むタフガイなボクサーと印象を強くする演出である。
実際にスタローンはこの撮影を嫌がり、特別ボーナスを得たという。
本作の大ヒット後、その後の物語を描く続編が製作されており、『ロッキー2』、『ロッキー3』、『ロッキー4/炎の友情』、『ロッキー5/最後のドラマ』、『ロッキー・ザ・ファイナル』とシリーズ化された。
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