「レイジング・ブル」
(原題:Raging Bull)
1981年2月14日公開。
再起を賭けたボクシング・チャンピオンを描いた名作。
ロバート・デニーロの代表作。
興行収入: $23,383,987。
脚本:
ポール・シュレイダー
マーディク・マーティン
監督:マーティン・スコセッシ
キャスト:
- ジェイク・ラモッタ:: ロバート・デ・ニーロ
- ビッキー・セイラー: キャシー・モリアーティ - ジェイクの2番目の妻。
- ジョーイ・ラモッタ: ジョー・ペシ - ジェイクの弟。
- レノーラ・ラモッタ:: テレサ・サルダナ - ジョーイの2番目の妻。
あらすじ:
1964年のニューヨーク。
バルビゾン・プラザ・シアターの楽屋で、1人、映画「波止場」のシナリオの一節をくり返すジェイク・ラモッタ(ロバート・デ・ニーロ)の姿があった。
彼はかつて「怒れる牡牛」と呼ばれた世界ミドル級チャンピオンに輝いた男だ。
--1941年、クリーブランド。
弟ジョーイ(ジョー・ペシ)がセコンドを務める黒人のミドル級ボクサーとの闘いで、相手を叩きのめしたにも拘らず判定負けをするジェイク。
翌日昼間からやけ酒を飲み、彼は妻に八ツ当りをする。
そして、ブロンドの美女ビッキー(キャシー・モリアーティ)との出会い。
やがて2人は愛し合うようになり結婚する。
1943年、デトロイトでシュガーをKOするが、同年に行なわれた彼との対戦で今度は判定負けをした。
彼ら兄弟には、逃れられない敵がいたのだ。
それは八百長試合を強いる組識だ。
やがてその大物トニー・コモ(ニコラス・コラサント)の誘惑に負けた2人は1947年、遂にマジソン・スクエア・ガーデンでの八百長試合を承諾した。
しかし1949年、デトロイトで、ジェイクはフランスの英雄に挑戦するチャンスを得る。
この世界タイトル・マッチで、ジェイクは見事チャンピオンに輝いた。
しかし、そのころから彼には、ジョーイとビッキーに対する強い嫉妬心が根ざし出し、心は沈んでいった。
1950年、辛くも防衛を果した彼は1951年、シュガーとの6度目の試合でKO負けし、1954年遂にリングを去りナイトクラブ経営をフロリダで始めた。
そんな彼からジョーイもビッキーも去り、1956年には未成年者をホステスに使った罪で独房に入れられた。
そして1964年のこのバルビゾン・ブラザーシアターの楽屋には、無残に肥えた肉体のジェイクの、しかし過去の栄光を決して忘れたことのない男の姿があるのだった。
コメント:
ロバート・デニーロの代表作とされているボクサーの人生を描いた映画である。
世界ミドル級チャンピオンの栄誉に輝き“ブロンクスの猛牛”と呼ばれた男ジェイク・ラモッタ。
彼の数奇な人生の浮き沈みを彼の自伝を基に描くファイティング・ドラマ。
主演のデ・ニーロは、ミドル級チャンピオンまで上り詰めた鍛え上げられた肉体と、引退後の肥満体型を表現するために体重を27kg増量。
徹底した拘りから生まれた造語、「デ・ニーロ・アプローチ」の完成形とも言える役作りを敢行し、第53回アカデミー主演男優賞を初めアメリカ国内の映画賞を多数獲得した。
タイトルの「レイジング・ブル」は「怒れる雄牛」という意味。
このニックネームで呼ばれた主人公ジェイク・ラモッタのことを指す。
ボクサーとしての実力と栄光、マフィアに取り込まれていく凋落、異常なまでの嫉妬心と猜疑心から離れていく恋人、仲間、弟……。
実在のボクサーの自伝を元にした作品で、デニーロ&スコセッシの大傑作。
激しい気分屋で異常な嫉妬心をもつ主人公が、ボクシングのファイトスタイルだけでなく、無性にかっこよく見えるのは、デ・ニーロの演技とスコセッシ監督の演出によるものだ。
ロバート・デ・二・ロの魂の籠った渾身の作品だ。
あの「ディア・ハンター」の2年後の作品である。
デニーロは映画内で30㎏もの体重差の体を作り上げ、あまりのカメレオン変貌ぶりにデニーロ双子説が出たほどだ。
同じ映画の中であんなに特殊メイクなしに体重を変えられるのは、とにかく信じられない。
それだけでも凄いが、演技の面でも、人生を転落してからのパートは真に迫っていて素晴らしい。
弟役のジョー・ペシもすごく良くて、この人たちはいつもセットでやってもらいたい感じだ。
(スコセッシ監督とデニーロ)
カメラワークが抜群。
微妙なタイミングでのスローモーションと等倍を行き来し、スチールやホームビデオのカラー映像も挿入しながら、ジェイクの孤独な戦いを追っていく。
彼の周りの空気が濁ることで、また熱を帯びることで、その歪みをも写し撮っている。
拳闘場面においては早いカットを選択し、ラウンドのリズムや、マッチメイクの早いテンポをも絡めとっている。
リング上から捉えた様々なアングルは、再現ドラマを超越し、不可能な再現を試みている。
スポーツの記録映像を凌駕し、聖域でもあるリング内に侵入しつつ、俳優の肉体濫造へも同調し、再現し得ない瞬間やアクションをリング上に浮かび上がらせている。
この映画で、アカデミー賞に輝いたのは、主演男優賞のデニーロと、編集賞を受賞した女流編集技師セルマ・スクーンメイカーだ。
彼女はこれ以外にも、ディカプリオ主演の「アビエイターや「ディパーテッド」など何度もアカデミー編集賞に輝いている。
彼女の編集技術なくしてこの「レイジング・ブル」での激しいファイティングシーンやプライベートな微妙なシーンが際立つことはなかったろう。
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