「キャリー」
(原題: Carrie)
1976年11月3日公開。
いつもバカにされていた女の子が、実は念動能力者(テレキネシス)であった事から起こるサスペンス作品。
興行収入:$33,800,000。
原作:スティーヴン・キング
脚本:ローレンス・D・コーエン
監督:ブライアン・デ・パルマ
キャスト:
キャリー:シシー・スペイセク
キャリーの母:パイパー・ローリー
クリス:ナンシー・アレン
スー:エイミー・アーヴィング
トミー:ウィリアム・カット
あらすじ:
メイン州チェンバレンのハイスクールに通うキャリー(シシー・スペイセク)は、冴えない容姿とおどおどした物腰で、学校中の笑い者にされていた。
ある日、体育授業がおえ、シャワーを浴びていたキャリーは、17歳にして初潮を迎えた。
はやしたてるクラスメート達。
教師により騒ぎはおさまったものの、事件は学校中に知れ渡った。
キャリーは母1人子1人の家庭で育っており、母(パイパー・ローリー)は狂信的な正統キリスト教信者で、性を罪悪視し、肉体の成長はよこしまな邪念の現われだという人間だった。
さらにキャリーの超能力(彼女の心的興奮がある限界点に達した時、電気はショートし、置物は飛び、ドアは音をたてて閉まるという現象がおこる)のため、親子仲は悪かった。
一方、シャワー事件により、キャリーをいじめた張本人クリス(ナンシー・アレン)らのグループは、教師から罰としてプロムパーティの参加を禁じられた。
そんな中、キャリーの近くに住むスー(エイミー・アーヴィング)だけは、今までの態度を反省していた。
そしてスーは、ボーイフレンドのトミー(ウィリアム・カット)を説得して、キャリーをプロムにエスコートすることを約束させる。
トミーは女子学生注目の的なのだ。図書館で彼の申し出を受けるキャリー。この事は、クリスらのキャリーへの憎しみを一層つのらせた。
彼女らは、夜、豚を撲殺し大量の血を集めた。
いよいよプロム当日がやってきた。
クラスメートの好奇の視線をあびながらも、トミーが優しくリードしてくれ、幸せなキャリー。
さらに彼女らはベストカップルに選ばれる。
しかしそれはクリスたちが仕掛けた悪質ないたずらだったのだ。
興奮のうちに女王の座についたキャリー。瞳には喜びの涙が。
だが幸福絶頂のキャリーの頭上から突然真っ赤な豚の血が降りそそぐ。
爆笑の会場。血に染ったキャリー。
パニックに陥った彼女の身体が硬直する。キャリーの鬼気迫る姿。
すると突然会場のドアはうなりを上げて閉まり、電気はショートし、そして--。
コメント:
女子高校生をヒロインとするホラー映画。
フルストーリーはこちら:
ベイツ・ハイスクールに通う女子高生・キャリーは、気弱で内気な性格と冴えない容姿から、いつもクラスメイトたちからいじめを受けていた。
ある日の体育の授業後、彼女はシャワーを浴びている最中に初潮を経験し、狂信的なキリスト教信者である母・マーガレットからは月経についての話を聞かされていなかったためにパニックを起こす。
そして、それを見たクラスメイトたちはキャリーをはやし立て、ナプキンを彼女に投げつける。
その場は担任の女性体育教師・コリンズが収拾をつけるが、後日、コリンズはキャリーをいじめたクラスメイトたちを体育館に呼び出し、「毎日居残りで体育授業、それが嫌ならプロムパーティーの参加禁止」との課題を突きつける。渋々同意する彼女たちだったが、その中の一人であるクリスは過酷な授業に耐えかね逃げ出す。
その後、キャリーをいじめた罪滅ぼしとして、スーは恋人であるトミーに、キャリーをプロムパーティーに呼び出すように頼む。
図書館でトミーの誘いを受けたキャリーは、当初からかわれたと思い込み逃げ去るが、トミーはめげずにキャリーの家まで訪ね、彼女をパーティーに誘う。
そして怯えながらもキャリーは遂にトミーの誘いを受ける。
一方、キャリーのせいで自分がパーティーに出られないと逆恨みするクリスは、恋人のビリーと共に恐ろしい悪戯を計画する。
彼らは養豚場で豚を屠殺し、その血を抜き取って立ち去る。
プロムパーティー当日。母親の反対を押し切り、自作のドレスでやってきたキャリー。
喜びと不安の気持ちが入り混じる彼女を、トミーは優しく励ます。
自分に自信を持ったキャリーとトミーは、パーティーのベストカップルに選ばれた。
今までに無い幸せを感じながら、ゆっくりとステージ上に上る二人。
この栄光の瞬間をクリスは待っていた。
天井に吊るされたバケツから大量の血がキャリーに降り注がれたうえにトミーの頭上にバケツが落下、トミーは舞台上で失神する。
その場に居た生徒たちだけではなく信頼していた先生からも嘲笑されたと思ったキャリーは、悲しみと怒りの極限となり、秘めていた超能力を解放し、これまでいじめていたクラスメイト達を含むプロムの参加者の大多数を会場に閉じ込め虐殺、破壊と恐怖をもたらす。
そんな中、惨劇の一部始終を目の当たりにしたクリスとビリーは恐怖で狂乱しながらも、プロム会場から逃げ出したキャリーを殺そうと自動車を使って体当たりを強行するが、返り討ちに遭い死亡する。
自宅に戻り、キャリーを“汚れた娘”としての罪を贖うため殺害しようとしたマーガレットを惨殺した後、自分もろとも超能力で家屋を崩壊させる。
後日、生き残ったスーは、キャリーの自宅跡地に出向く。
スーが花を手向け弔おうとしたとき、突如地面から手が伸びて彼女の腕を掴む。
そんな夢からパニックを起こしながら目覚めたスーは、なだめようとする母親の腕の中で泣き叫ぶのであった。
「プロムパーティー」とは、アメリカやカナダなどの高校で学年末に行われるフォーマルなダンスパーティ—のこと。
1977年アボリアッツ国際ファンタスティック映画祭グランプリ受賞。
出演したシシー・スペイセクとパイパー・ローリーはそれぞれアカデミー賞にノミネートされた。
すっかり巨匠の仲間入りをしてしまったブライアン・デ・パルマ監督の出世作。
原作のスティーヴン・キングもこの作品で一躍ベストラセラー作家となった。
冒頭、グダグダのバレーシーンから、覗き見趣味丸出しの女子ロッカールームのスローモーション。
バックには静かで美しい音楽が流れる。
めくるめくデ・パルマ・ワールドの始まりだ。
前半はすっかり青春学園ドラマで、カメラワークもおとなしい。
しかし、シシー・スペイセクがうまいので、飽きはこない。
トミーにプロムに誘われた時の疑心暗鬼だけど、嬉しい様子がいい。
特にトミーが家に押しかけて来た時の、表情は抜群だ。
プロムが始まり、徐々に本当の幸せなのかも知れないとキャリーの表情は益々輝いてくる。
二人のダンスシーンのカメラはよく回る。
めまいがしそうだ。
そしてスローモーション。
幸福の絶頂で、デ・パルマは何と残酷な監督だろう。
いよいよ本領発揮だ。
スプリット・スクリーンとキャリーの母親の家での包丁のジャンプショット。
キャリーのドレスが、母親の予言通りの色に染まった時、そこは地獄と化す。
天国から地獄とはこのことだ。
そして、伝説のラストショット。
初めて映画館で観た時は、もう腰を抜かす。
この後、凡百の映画がこのテクニックを模倣することとなる。
それにしても、この学校の名前がベイツ学園とは知らなかった。
もちろん、「サイコ」のノーマン・ベイツからとったのだろう。
とにかく、監督のブライアン・デ・パルマの演出が半端ない。
これがデビュー作なのだ。
この人は、ニュージャージー州ニューアーク出身の映画監督。
第19回ベルリン国際映画祭銀熊賞、第64回ヴェネツィア国際映画祭銀獅子賞などを受賞。
代表作は以下の通り:
『キャリー』
『殺しのドレス』
『ミッドナイトクロス』
『スカーフェイス』
『ボディ・ダブル』
『アンタッチャブル』
『カジュアリティーズ』
『カリートの道』
『ミッション:インポッシブル』
『ミッション・トゥ・マーズ』
『ファム・ファタール』
『ブラック・ダリア』
『リダクテッド 真実の価値』
『パッション』
1999年に本作の続編となる『キャリー2』(原題: The Rage: Carrie 2)が公開されている。
監督はカット・シーア、出演はエミリー・バーグル、ジェイソン・ロンドン、またエイミー・アーヴィングが本作と同じくスー役で出演している。
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