「真昼の決闘」
(原題: High Noon)
1952年7月24日公開。
リアル西部劇の決定版。
興行収入:12百万米ドル。
受賞歴:
- アカデミー主演男優賞:ゲイリー・クーパー
- アカデミードラマ・コメディ音楽賞:ディミトリ・ティオムキン
- アカデミー歌曲賞:ディミトリ・ティオムキン ※作曲、ネッド・ワシントン ※作詞("Do Not Forsake Me, Oh, My Darlin")
- アカデミー編集賞:ハリー・ガースタッド、エルモ・ウィリアムズ
脚本:カール・フォアマン
監督:フレッド・ジンネマン
キャスト:
ウィル・ケイン:ゲイリー・クーパー
ジャック・コルビー:リー・ヴァン・クリーフ
エミイ:グレース・ケリー
ハーヴェイ:ロイド・ブリッジス
ヘレン・ラミレス:ケティ・フラド
あらすじ:
午前10時35分、丘の上に1人のガンマン、ジャック・コルビー(リー・ヴァン・クリーフ)が人待ち顔で立っていた。やがて1人が馬でやって来て、もう1人も加わり、3人が馬で並びながら町へ入って来る。
彼らはこの日の正午に着く汽車を待つのであった。
この町、ハドリーヴィルの 連邦保安官ウィル・ケイン(ゲイリー・クーパー)は、この日ちょうど結婚式を挙げて、これを最後に退職して新妻エミイ(グレース・ケリー)と町を出ていくことになっていた。
そのケインの元に、以前彼が逮捕した悪漢フランク・ミラーが釈放され、正午の列車でハドリーヴィルに到着するという知らせが舞い込む。
ミラーは彼の仲間3人と共に、ケインに復讐するつもりであった。
午前10時55分、皆の勧めでケインはエミイと共に逃げようとするが、思い直して引き返す。
父と兄を殺されてクエーカー教徒になったエミイは、正義よりも命の方が大事だと説得するが、彼の意思は固い。
ケインは仲間を集めに奔走するが、誰も耳を貸さない。
ミラーに判決を言い渡した判事は早々に町から逃げ出した。保安官助手のハーヴェイ(ロイド・ブリッジス)は、腕はいいが精神的に未熟な若者で、ケインの後任に自分が選ばれなかった恨みと、かつてはケインやミラーの恋人だった婚約者のヘレンとの因縁もあって協力を断る。
酒場の飲んだくれたちは、ケインよりもミラー一味を応援している始末であった。
午前11時30分、ケインは教会を訪ねて皆に応援を頼む。
ここでは意見が分かれて議論になるが、結局ヘンダーソン町長(トーマス・ミッチェル)の意見で、ケインが町を去るのが一番良いという結論が出る。
保安官助手たちは、居留守を使ったり怪我を理由に辞退し、最後に加勢に来た男も自分1人と知って急に怖気づいて去っていく。
ケインを慕う少年が加勢を希望するが、ケインは「まだ子供だ」と言って家に帰らせる。
午前11時57分、結局大人は1人も集まらないまま、ウィル・ケインは保安官事務所で一人遺書を書く。
午後0時、正午(ハイヌーン)、フランク・ミラーの乗った汽車の汽笛が聞こえ、汽車の到着が近づいてきた。
留置所の酔っ払いを放免して、ケインは一人銃を取った。
外へ出た時に目の前を酒場の女主人ヘレンとエミイの馬車が横切っていく。
ヘレンはハーヴェイにも町にも愛想を尽かし、エミイを連れて行くのだった。
駅に到着し、汽車からミラーが降りると入れ替わりに、ヘレンとエミイが同じ汽車に乗った。
ヘレンとミラーはじっと互いを見合った。
ケインの、4人を相手にした孤独な決闘が始まった。
戸口や窓が全て閉められ静まり返った町の中を、4人が並んで闊歩して行く。
ケインは物音を聞いて横道に隠れ、裏へ回って彼らの背後から声をかけて、まず1人目のベン・ミラーを倒す。
汽車の発車寸前、町から銃声が鳴り響いたので、エミイはとっさに飛び出して町へ戻って行く。
ケインは馬小屋に隠れながら応戦し、2人目のジャック・コルビーを倒す。
馬小屋に火をつけられると馬を放って脱出するが、肩を撃たれて1軒の店に飛び込み、包囲されてしまう。
エミイは保安官事務所で息をひそめるが、3人目ジム・ピアースの後姿を窓越しに見つけ、撃ち倒してしまう。
ミラーは彼女を人質にとってケインをおびき出すが、エミイに抵抗されて一瞬怯んだ隙に、ケインに撃たれる。
決闘が終わって、2人は強く抱き合う。
やがて町の住民が集まって来るが、ケインの目は厳しく皆を見まわして、やがて保安官バッジを足元に捨てると、今は唯一人心許せる少年が運んできた馬車にエミイと共に乗り、町を去って行くのだった。
コメント:
この映画は、ゲイリー・クーパーがオスカーを獲得した名作である。
「リアル西部劇」と呼ばれている。
つまり、ガンさばきや、射ち合いのシーンなどのカッコ良さなどを誇張したものではない。
この物語の主題は何だろうか。
マーシャル保安官ウィル・ケイン(ゲイリー・クーパー)は、町の人のために「正義」を貫こうとしたが、町民たちは誰もケーンを助けない。
助力を申し出たのはアル中らしい片目の中年男ジミーと、14歳のジョニーだけである。教会では6人が志願するが、市長ジョナス(トーマス・ミッチェル)「銃撃戦があれば北部がどう思う?ケーンは町を出て行くべきだった」「ケーンとミラーの問題だ」と皆が静観論に押されてしまう。
長年の友人のサム・フア-は居留守を使う。
保安官代理に1人だけ志願していたハーブも「2人で4人を。状況が変わった」と去る。
保安官ケインは、ほかの西部劇の保安官のように格好良くない。
顔に汗をかいて手で度々払う。
保安官事務所の机に突っ伏して泣いているような場面もある。
一方、花嫁のエイミー・ファウラー(グレイス・ケリー)は、父も兄も射殺され、19歳の兄が死んだ時にクエーカー教徒になった。
この町(ハドレーヴィル HADLYVILLE)の教会はクエーカー教徒ではない。
「不戦の誓い」のクエーカー教徒の妻が銃で1人(弟ベン)を撃ち殺した意味は?
ケーンも普段は教会に足を運んだことはない。
「死刑判決を出して北部に送ったが、政治家によって減刑されてミラーは5年で釈放された」→正義のために戦っても報われない。
本作は「赤狩り」への隠喩か。
老元保安官マート「たかがバッジのせいだ」→これがテーマか。
ラストでケーンもバッジを道に捨てる。
おそらく、この映画の言わんとしていることは、保安官という仕事は、孤独であり、カッコいい仕事なんかではないという事だ。
そして、おそらく人生というものもそうなのだろう。
人の一生は、カッコいいものではない。
そして、人は所詮一人で生まれて、一人で死んでゆく。
つまり、人生は孤独なのだ。
この映画の原題は「High Noon」だ。
この言葉の意味は、「真昼」だ。
真昼の中の孤独を描いた作品ということだろう。
なかなか意味深だ。
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