「スリーパー」
(原題: Sleeper)
1973年12月17日公開。
ウディ・アレンのSFコメディ。
興行収入:$18,344,729。
脚本:ウディ・アレン、マーシャル・ブリックマン
監督:ウディ・アレン
キャスト:
ウディ・アレン:マイルズ・モンロー
ダイアン・キートン:ルナ
ジョン・ベック:アーノ
あらすじ:
不気味な雰囲気を漂わせる未来社会の研究所。
カプセルの中で眠っている奇妙な人間がいる。
200年前に冷凍化された男で、名前をマイルズ・モンロー(ウディ・アレン)といい、凍結されたとき35歳で、ニューヨークで健康食品店を経営する傍らクラリネット吹きもやっていたという変わり種。
胃潰瘍の検診で入院したとき併発症を起こし意識が回復しないため、カプセル凍結にされたのだ。
それから200年後、医師たちの介抱で彼は意識をとり戻したのだが、わけのわからぬ世界に面喰らい、やっとの思いで森に逃げ込み、駐車中のバンにもぐり込んだ。
その中におかしな顔をしたロボットが並んでいたので、彼も急いでその真似をした。
幸い警官に気づかれなかったものの、ルナ(ダイアン・キートン)という女の家へと連れて行かれた。
彼女の注文はさっぱり分らず、その上、ルナは彼の頭の形が気に入らないといいだし、家事サービス局に頭のすげ替えを頼むという仕末。
顔面蒼白になった彼はルナに自分の正体を打ち明けたが、ショックが大きかったのか彼女はギャーギャー騒ぎたてるばかり。
仕方なく彼はそのまま車を走らせた。
ところが一軒の家に着いたとき、ルナはすきを見て警察に通報、同時に彼が着ていた水素服のコードを引いた。
彼の体はたちまちゴム風船のようにふくれあがり、地面をバウンドしながら逃げ、そのまま湖の中を滑走。
自分も逮捕される身と知ってルナも彼の上に飛び乗り、どうにか2人は逃げのびた。
彼らは空き家でしばらく暮らしたものの、発見されてしまい、彼はとうとう捕まった。
その後、彼は政府の研究所で洗脳され、未来社会の人間に生まれ変わった。
政府内ではセックス・パートナーまで与えられ“オルガストロマシン”という機械によるセックスを楽しみ、結構満足していた。
一方、ルナはアーノ(ジョン・ベック)という革命家に捕まってその思想にすっかり同化させられてしまう。
彼らは、この国を支配している独裁政権を打倒しようとしていたのだ。
そのためにマイルズを誘惑し、彼はまたもや元の自分に戻された。
独裁者の反体制分子一掃のための“エレイス計画”実行の日、ルナとマイルズは医者に化けて政府の建物にもぐり込み、この計画をつぶすことに見事成功。
味方の意気はあがり、革命はもう眼の前。
しかし、ルナがアーノを愛し始めたことと、自分は利用されたにすぎないことを知ったマイルズはそっと姿を消そうとした。
ところが、意外にもルナが彼を追いかけてきた。
ルナはマイルズを愛していたのだ。
コメント:
200年間眠り続けた男が思いがけなく未来社会で眼をさまし、慣れぬ世界で悪戦苦闘するSFコメディ。
ウディ・アレン監督・主演のSFコメディである。
本人の意思に関わらず冷凍睡眠させられてしまったウディ・アレンが、200年後に目を覚ます。
メガネをかけたまま冷凍されていたのが可笑しい。
目覚めてすぐには身体の自由が効かないので、フラフラした動きで医師を翻弄して笑わせる。
200年後の世界は、建物やその内部はとても無機質なイメージである。
100年前に戦争があったと言っていたので、かなり大規模な破壊から再生したということだろう。
世界全体がどうなっているのか分からないが、この元アメリカの土地は、独裁政権によって支配されているらしい。
人を蘇生させることは、政府の方針に反するようで、医師は捕まりウディも追われることになる。
家から逃走する時に、高い所からはしごを使おうとするのだが、地面に届かないのであたふたするウディが面白い。
追っかけシーンのドタバタは、サイレント映画を思わせて楽しい。
予算の関係もあろうし、戦争があったという設定もあり、発展した未来都市などの描写は望めない。
ただ、車はそれっぽくて、宙に浮いて走っているように見える。
それでもボディは如何にも安っぽいペラペラ感があって、みんな同じ種類で真っ白で画一化されてしまっている。
家事ロボットが大量にいて、家のことは何でもこなしてくれる。
人間が入ってロボットっぽい動きをしている。
ウディが逃亡の為に、このロボットに成り済ますのだが、メガネをかけているし、見え見えなのにバレないのが可笑しい。
この時代の人々は、オーブという銀色の玉を手に取ってラリッている。
未来の麻薬か。オルガストロンという円筒状の機械があり、それに男女が入ると快感を得られる。
みんな不能と不感症ばかりのようで、機械でセックスの代用を済ませられるようだ。
ジャイロスコープという鏡があるのだが、ここに映る姿が、実際の本人と違う動きをして笑わせる。
スイッチを捻ってしまうと、見知らぬ人の映像が映り、何だか訳が分からないのだが、こういうナンセンスな、意味不明だけど面白いというギャグが冴えている。
ウディはダイアン・キートンと出逢い、一緒に逃走することになるのだが、この時着させられる水素服というのも面白い。
膨らんで宙を舞う姿がユニークで楽しい。
穴を開けられるとその勢いで、猛スピードで水上を移動するシーンはなかなか迫力がある。
ウディは体制側に捕まり洗脳されるのだが、ウディの演技に笑わされる。
何でミス・コンテストというシチュエーションなのか。
二人の店員ロボットが喧嘩したり、マクドナルドがまだあったりと、様々な小ネタを散りばめて、映画は進んで行く。
ウディを洗脳から目を覚まさせる為に、1970年代の家庭風景を演じるのも面白い。
更にダイアンが「欲望という名の電車」のマーロン・ブランドのものまねをするのだが、これが特徴を捉えていて、実に巧くて大笑いだ。
手術室でのウディとダイアンの早口の喧嘩が、これまた息が合っていて素晴らしい。
なかなかいいコンビである。
この時代では男女の愛は続かないと科学が証明しているという。
何やら体内の科学物質がお互いの神経を傷つけるのだそうだ。
それでも愛し合わずにいられない男女。
性的な肉体機能が衰えた未来世界でも、愛するという精神性は失われてはいないようだ。
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