ハリウッド・コメディ映画 第77位「パームビーチ・ストーリー」傑作スクリューボールコメディ! | 人生・嵐も晴れもあり!

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「パームビーチ・ストーリー」

(原題・The Palm Beach Story

 

The Palm Beach Story (1942) - IMDb

 

「パームビーチ・ストーリー」 全編

 

1942年12月10日公開。

フロリダのパームビーチを舞台にしたスクリューボール・コメディ。

「レディ・イヴ」のスタージェス監督作品。

興行収入:1.7百万米ドル。

 

監督・脚本:プレストン・スタージェス

 

キャスト:

  • ジェリー・ジェファーズ:クローデット・コルベール
  • トム・ジェファーズ:ジョエル・マクリー
  • センティミリア公爵夫人:メアリー・アスター
  • J・D・ハッケンサッカー3世:ルディ・ヴァリー

 

The Palm Beach Story (1942) | MUBI

 

あらすじ:

ジェリー(クローデット・コルベール)は発明家のトム・ジェファーズ(ジョエル・マクリー)と結婚して5年になる。

もちろん夫婦は飽きも飽かれるかもしない仲であるが、トムの発明が一向に金を作らないのが悩みの種だ。

トムのすばらしい発明『空中エア・ボート』も出資する資本家が見つからないので、宝の持ち腐れである。

5年目の結婚記念日、さてお祝いどころか家賃を払うにも、ジェファーズの財布には10セントもない。

そこでジェリーはトムを助けるためには彼女が彼の妻であるよりも妹であった方が好都合と考え、フロリダへ行ってとりあえず離婚しようと決心する。

彼女はビタ一文も持たずに、パーム・ビーチ行き特急に乗り込む。

目ざとい彼女は最後部の客車がタダゴトでないのを見抜いて、行ってみると果たせるかなそれは貸切車であった。

お客は陽気なお年寄りばかりで、聞くとエイル・アンド・クェイル・クラブ総動員で、フロリダへ年例大会をしに出かけるところであった。

うるさい山の神は御免だが、美しい年増女の笑顔なら、枯木に花の風情じゃと、ジェリーはクラブのマスコットに採用される。

有難いといったんは喜んだが、年寄達のハメのはずし方が度をすぎている上にしつこいので彼女も辟易して席をはずす。

隣の寝台車に乗り移ると上段の寝台が一つ空いている。

無断ですべり込んでひと眠りしようとしたはずみに下段の客の顔をふみつけてしまった。

その顔の持ち主はなんと、J・D・ハッケンサッカー3世と言う世界一の金持独身者であった。

氏はこの椿事をはなはだ喜び、ジェリーに親切をつくす。

そうこうしているうちに、例の老年クラブの車両は、余りに騒々しすぎるというので、ジェリーのトランクともどもある駅で切り離されてしまった。

そこでジャクスンヴィルに停車中、ハッケンサッカー氏はジェリーを伴って、彼女に衣類を5万6千ドルばかり買って進呈した。

その間に列車は出てしまったので、氏は自家用ヨットに彼女を招待して海路のどかにパーム・ビーチに向うことにした。

波止場に着くと夫のトム・ジェファーズが容易ならぬ面持ちで待っている。

気まぐれな金持ち爺さんが発明家に寄付金をくれたので、トムは飛行機で先着していたのだ。

ジェリーは機転をきかせて、ハッケン氏に『これは兄です』と紹介したので、トムは怒るに怒れない。

するとハッケン氏の姉で、結婚離婚数レコード保持者の公爵夫人センティミラが大喜びでトムと結婚したがる。

それはまだ我慢するが、ハッケン氏が彼の『妹』にじゃれつくのがたまらない。

一騒動もち上がるところにトムの双子の兄とジェリーの双子の妹が現われ、一切円満に片付いたというお話。

 

The Palm Beach Story' as antic as ever – Orange County Register

 

コメント:

 

オープニングから超特急のように進んで行きアッと驚くラストで終わる凄まじいスクリューボールコメディの傑作。

 

ドレスの背中にあるファスナーやホックに手が届かずに、近くにいる親しい男性に開け閉めを手伝って貰う女性の姿は、その男女ふたりの関係性をそれとなく示すのにあまたの映画にてよく使われる点景ではある。

ただ、本作の様にこの描写をこれほどあからさまにカップルの熱愛ぶりを高めるキッカケとしている例はあまり見た事がない。

 

The Palm Beach Story (1942) | The Blonde at the Film


プレストン・スタージェスのコメディの面白さは、そのギャグのざっくばらんな「あからさま」の濃度の高さによるのかも知れない。

ヒューマニズムの甘さを絶妙にコーティングするキャップラや知的に洗練された諧謔さを武器にするルビッチに対して、同じスクリューボールコメディでもスタージェスにはその場の状況をもあっけらかんと突き破る過激な笑いの爆発がある。


離婚の手続きはパームビーチが簡便だと聞いたらその場ですぐフロリダに旅立つには居られないヒロイン。

走る列車の中で無茶苦茶な傍若無人ぶりをエスカレートさせる猟友会団体のオヤジ達。

誰かに惚れるや何時でも異常なハイテンションを保ち続けられずに居られない大富豪の姉弟。

その登場人物達の「常軌を逸した変わり者」ぶりの過激さに込められる皮肉にニヤニヤしていると、ラストでお話をハッピーエンドへと持ってゆく無理繰り算段的な締め方にア然とさせられる。


このつくり手の無垢とさえ云える映画表現への奔放さがスクリューボールコメディというジャンルを極める一品と成したことは間違いないだろう。
 

この映画は、YouTubeで全編無料視聴可能: