宮尾登美子の映画 「序の舞」 名取裕子の渾身の濡れ場が光る名作! | 人生・嵐も晴れもあり!

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「序の舞」

 

 

「序の舞」 プレビュー

 

1984年1月14日公開。

実在の著名画家をモデルにした宮尾登美子の同名小説の映画化。

名取裕子の出世作となった作品。

 

原作:宮尾登美子「序の舞」

脚本:松田寛夫

監督:中島貞夫

 

キャスト:

島村勢以(せい)
演 - 岡田茉莉子(少女時代:小林綾子)
津也の母。
島村津也(つや)
演 - 名取裕子(少女時代:野口一美)
勢以の次女。
子供の頃から絵を描くことが得意で、16歳ぐらいから“島村松翠(しょうすい)”の名で主に美人画を描き始める。
島村志満(しま)
演 - 水沢アキ(子供時代:高橋美樹、少女時代:杉沢美紀)
勢以の長女。
高木松溪(しょうけい)
演 - 佐藤慶
絵画塾『松溪塾』のあるじ。津也の絵の師匠。
西内太鳳(たいほう)
演 - 風間杜夫
津也が通う小学校の教師。
村上徳二
演 - 三田村邦彦
松溪塾の門下生の1人。
斉藤松洲
演 - 三沢慎吾
橋田雅雪
演 - 野口貴史
滝川恭山
演 - 草薙良一
原在泉
演 - 岩田直二
今尾景年
演 - 徳田興人
菊地芳文
演 - 川浪公次郎
望月玉泉
演 - 白川浩二郎
島村くら
演 - 富永佳代子
川上音二郎
演 - なぎらけんいち
島村甚八
演 - 大坂志郎
光彩堂の主人
演 - 北村英三
慶長堂の主人
演 - 織本順吉
山勘
演 - 成田三樹夫
絵を買う怪しげな業者。
喜代次
演 - 三田佳子
乳児を里子に出す家と養父母になる家との間に入り世話をする仕事をする。
島村麻
演 - 菅井きん
勢以の実母。8人ぐらいの家族だったが貧しいため、9歳の勢以を養女に出す。
ちきりやの内儀
演 - 高峰三枝子
勢以から『母屋のご隠居はん』と呼ばれている。勢以の養父母が生前世話になっていた女性。
ナレーション
演 - 市原悦子
 

小玉大輔 on X: "「序の舞」③初々しい名取裕子見てやっぱり女優は若いうちにヌード有りの文芸映画 で濃い先輩たちに揉まれて芝居の修業をすべきと思うのだった。でも最近はそういう映画は作られないのだが…。  https://t.co/ZQLFiC0Guq" / X

 

あらすじ:

安政五年、洛北・大宮村の貧しい農家の娘・勢以は、京都の葉茶屋ちきりやに養女に出された。

彼女が二十歳の年に、養父母・島村夫婦が相次いで世を去った。

明治三年、勢以は婿養子をとったが、五年後には夫に先立たれ、二十六歳という女盛りで二児をかかえた後家になった。

それからの勢以は、長女・志満と次女・津也を女手ひとつで育て、生計を支えるために、自ら女を捨てようとする。

やがて時は流れ、絵に熱中しはじめた津也は、図画の西内先生のすすめもあって、小学校を卒業すると京でも有数の松溪画塾へ通うことになった。

明治二十三年、第三回内国観業博覧会に津也が出品した「四季美人図」が一等褒状を射とめた。

すでに師・松溪から「松翠」の雅号を授かっている津也は、早くも天才少女と騒がれる身となっており、勢以も津也の絵の情熱と才能を認めざるを得なくなった。

その頃、西内先生がヨーロッパへ留学することになり、津也にとって大きな悲しみとなる。

また、村上徳二という青年が松溪塾に入塾し、彼は津也に好意を抱くようになった。

松溪の千枚描きに立会った日の夜、津也は師の誘いのままに、料亭へ出向き、抱かれる。

徳二に片想いをしていた志満は、本家ちきりやのお内儀のすすめで西陣へ嫁いで行った。

津也は絵に打込み、次々と賞をかち取っていったが、画塾内では松溪と津也の仲を言いたてるものもいた。

月日が流れ、津也は妊娠した。

それに気づいた勢以は、娘を激しく責め、相手が松溪と知り、津也に絵を禁じた。

そして勢以は、津也の子を里子に出すことに決め、祇園で芸者をしていた喜代次を頼る。

その喜代次の手引で、見知らぬ土地の農家で女児を出産した津也は、京には帰らず、東京にいる徳二を頼って行った。

徳二との暮しの中でも、津也の中の絵への想いは捨てきれず、偶然、新聞で見かけた“西内太鳳ヨーロッパ帰朝展”の報に、津也は出かけて行く。

そして、徳二に置手紙を残し、西内の滞在する長浜の昌徳寺に走った。

西内は弟子にしてほしいと頼む津也のひたむきさに心動かされ、京に戻ると彼女に一軒の家を与えて絵の修業を続けさせた。

明治二十九年、津也の「人生の春」が第五回日本美術院展の第一等に輝いた。

光彩堂の招きでとある割烹に出向いた津也は、その席で松溪と再会する。

かたくなな態度をとっていた津也も、老いた旧師が涙を流すのを見て、再び彼の腕の中に沈んで行った。

津也はまた妊娠し、そのことを松溪に告げる。

すると思いのほか“誰の子か”と冷たく突き放された。

松溪は津也が太鳳の世話になっていることが面白くなく、ある展覧会の審査院として彼と顔を合わせた際、暴言を吐きちらした。

津也と松溪の関係が続いていたことを知って激怒した太鳳は、津也に破門を言い渡す。

津也は福井の高浜へ出かけ、おろし薬を飲んだ。

漁師の電報で勢以は、すべてを許し、津也はちきりやで男の子を産んだが、父なし子を生んだことで世間の風当りはひどかった。

三ヵ月後、津也は破門を許されて画壇に復帰した。

大正七年、第一回文展の会場で、松翠の「母子」が注目を集めていた。そして、その前に立ちつくす松溪の姿があった。

 

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コメント:

 

宮尾登美子の原作『序の舞』の映画化。

名取裕子の出世作となった作品である。

明治、大正という女性の地位が確立される以前の困難な時代に画家としての道を歩むことを決した女の生涯を描いている。
 

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原作は主人公津也の母親が里親に出されるところから説きおこされるという大河小説風な趣のあるもの。

映画はその母・勢以(岡田茉莉子)の苦難から始まりやがて次女の話へと軸足が動いてゆくが、姉(水沢アキ)や祖母(菅井きん)さらに同僚の画家(三田村邦彦)らのエピソードなどもある。
 

女が画家として世に出るなど夢のまた夢だったという時代。

師匠(佐藤慶)の色浴にも逆らうこともできないまま身を任せ子まで孕むが、一方画家としては着実に地位を上げていく津也(名取裕子)。

しかし男に翻弄され、なおかつ世間体を第一に考える母にも冷たくあしらわれ、もう一人の師匠(風間杜夫)からも破門されて、行き場がなくなるという辛酸をなめる。
 

写真]伝説となった激しい絡み、義母との関係に苦しみ…名取裕子65歳、独身を貫く“女優魂” | 文春オンライン

 

主人公・島村津也を演じた名取裕子。
美しいヌードでの濡れ場を思い切って演じ切っていて、この作品に賭ける名取裕子の本気度がはっきり見て取れる凄い作品になっている。
 
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おそらく彼女の生涯の作品中、最も情熱を持って挑んだ最高の作品だ。

佐藤慶が師匠役として登場してきた時点で何か起こるだろうなと予感させるくらい、この役者さんには独特の色があるし、またうまい。

彼のダメさ加減が主人公の悲惨を倍加させもするし、最後の母娘の和解をも大きく受け止めさせることに繋がる。
 

最後に津也の描いた絵の前にひれ伏すかのように呆然と佇む佐藤慶を見ていると結局翻弄されたのは彼の方であったのではないか。

それほど津也(松園)の絵は犯すことができないほど超然としている。

 

東映は、1982年の『鬼龍院花子の生涯』の大ヒットで、“女性文芸大作路線”の手応えを掴んだことから、1983年の『陽暉楼』に続き、宮尾登美子原作ものとして企画が挙がった。

五社英雄監督の高知ものは、東映の得意とするやくざや女郎の世界だったが、本作は全然色が違う。

最初は主演・佐久間良子、監督は蔵原惟繕を予定していたようだ。

蔵原は悪条件の中、「青春の門二部作」を東映で撮ってもらったことからの抜擢だったが、蔵原に『南極物語』の海外キャンペーンや映画祭などで忙しいと断られた。

そこで、1983年8月に中島貞夫が監督に抜擢され、1984年の正月映画で大作一本立て興行になることが決まった。

初めて女性映画を演出する中島は「場違いという感じもするが、女性を描きたくて映画界に入ったので、この映画と心中するつもりでがんばりたい」と意欲を燃やしていた。

 

本作のモデルとなった上村松園の子・上村松篁が製作当時、京都画壇の中心的存在で、松篁自身は映画化に反対でなかったとされるが、松園の孫から映画化を反対されたようだ。

宮尾登美子の原作でも実名を使っておらず、あくまでモデルであるため、東映としては朝日新聞に連載された原作権を元に映画を作ると突っぱねた。

訴訟問題が起きたとしても仕方ないと考えていたが、映画の中で上村松園の絵を使わなくてはリアリティが出ず、実際の絵はライトを当てると痛むため、模写になるが、あまりいい加減な絵は使えないから著作権の問題もあり、どうしても遺族から許可を取らなければならない必要があった。

東映での映画化に警戒心も抱かれ、交渉は膠着状態になり、新たな交渉相手として松園の孫娘の亭主で、当時の国税庁長官・福田幸弘が現れた。

さらに堅そうな肩書の人物が出て来て、難航が予想されたが、福田が折紙つきの映画狂で融通が利き、映画化が成ったという。

 

キャスティングについても紆余曲折があった。

1983年のNHK朝ドラ『おしん』の少女時代の熱演で、大人気となった小林綾子を巡り、映画各社が異常な争奪戦を繰り広げたが、運よく小林が東映所属の女優であることから、初CM出演と同様、本作の出演が難なく決定し、島村勢以の少女時代役を演じることになった。

また、上村松園をモデルとするヒロイン・島村津也役には、最初に『おしん』でおしんの成年期を演じた田中裕子に出演交渉し、『おしん』人気をそっくり頂こうと目論んだが、田中から「スケジュールが無理」と断られた。

田中は1982年に幻燈社と東映で製作した『ザ・レイプ』には出演したが、松竹と優先本数契約を結んでいて、続けての東映出演はダメだった。

それならばと、同じ裕子の名取裕子でいくことになったいう。

 

名取は芸能界デビューと同時に東宝と三年解約を交わしていたものの、テレビ中心で映画では役に恵まれず。

良家のお嬢さんや学校の先生役などを難なくこなしてきたが、同じコンテスト出身の古手川祐子や田中裕子と同じ"ユーコ"の名を持つ女優に人気と実績で水を開けられていた。

1982年のNHK「土曜ドラマ」『けものみち』の悪女役を好演し、脚光を浴びたが、まだおキャンな女子大生のイメージが残っていた。

本格的な初主演映画である本作は、遅れてきた"ユーコ"の女優開眼の好機となったのだ。

 

この映画の原作のモデルは実在の女性である。

氏名は、上村 松園(うえむら しょうえん、1875年〈明治8年〉4月23日 - 1949年〈昭和24年〉8月27日)

彼女は、気品あふれる美人画を得意とした画家。

1948年に女性として初めての文化勲章を受章。

 

キタキターーッ!日本画家・上村松園の代表作「序の舞」が修復完了しいよいよ一般公開へ | アート 日本画・浮世絵 - Japaaan

 

上村の代表作の一つが、「序の舞」。

重要文化財(平成12年(2000年)指定)) … 1936年(昭和11年)絹本着彩 233cm×141.3cm。

「なにものにも犯されない、女性のうちにひそむ強い意志」を、静かなうちに凛として気品のある仕舞「序の舞」を通して描いているとされる。

絵のモデルは上村松篁の妻(上村淳之の母)の未婚時代の姿である。

 

 

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