宮本輝の映画 「私たちが好きだったこと」男女四人の出会いと別れを描く! | 人生・嵐も晴れもあり!

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「私たちが好きだったこと」

 

私たちが好きだったこと [DVD]

 

1997年9月6日公開。

男女四人の愛と友情を描いたほろ苦いラブ・ストーリー。

原作の良さが生かせず、不発に終わった映画。

 

原作:宮本輝「私たちが好きだったこと」

監督:松岡錠司

脚本:野沢尚

 

キャスト:

北尾 与志
演 - 岸谷五朗
工業デザイナー、お人よし。
佐竹 専一
演 - 寺脇康文
写真家で北尾 与志の大学時代からの親友。
柴田 愛子
演 - 夏川結衣
持病(不安神経症)持ちの才女。速読が得意。
荻野 曜子
演 - 鷲尾いさ子
姉御肌の美容師。愛子の親友。
鈴木
演 - 田口トモロヲ
曜子の不倫相手
演 - 四方堂亘
愛子の母
演 - 藤田弓子
愛子の母の愛人
演 - 趙方豪
曜子の美容院のオーナー
演 - 津川雅彦

 

私たちが好きだったこと : 象のロケット≪映画DVD総合ナビゲーター≫

 

あらすじ:

競争率76倍の公団マンションを当てた照明デザイナーの北尾与志(岸谷五朗)は、大学時代からの友人であるカメラマンの“ロバ”こと佐竹専一(寺脇康文)と共同生活を始めることにした。

新生活を祝うために入ったバーで、ふたりはたまたま同席した女性たちと新居の話で盛り上がる。

翌朝、酔っ払って眠っていた与志とロバのもとに、昨夜の女、柴田愛子(夏川結衣)と荻野曜子(鷲尾いさ子)が引っ越し荷物を抱えて現れた。

彼女たちは住んでいたマンションが火事に遭い、住むところを探していたという。

約束した覚えのない与志は、4人の住み分けの間取り図まで用意してさっさと荷物を運び込む曜子に戸惑うが、呑気なロバはウキウキしている様子だった。

その晩、愛子のすすり泣く声に目が覚めた与志とロバは、彼女が不安神経症で時々強い発作に襲われるのだと曜子から聞かされる。

翌日から、与志が愛子を職場まで送っていくことになり、ふたりは次第に心を通わせていった。

そうこうするうち、ロバも曜子の部屋で寝るようになる。

医学部に現役でパスしながら家庭の事情で入学できなかったという愛子の話を聞いた与志は、今から勉強し直して大学に行けばいいと彼女に提案した。

ロバも曜子もこれに賛成し、愛子は仕事を辞めて予備校に通い始める。

3人の仕事も順調で、お互いを思いやることで共同生活はうまくいっていた。

やがて春になり、愛子は見事私立の医学部に合格するが、出会って一年が過ぎてから、4人の歯車は次第にかみ合わなくなっていった。

愛子は大学で何かと面倒を見てくれる助教授の鈴木(田口トモロヲ)からプロポーズされ、心が揺れ動く。

曜子はかつての不倫相手と別れられずに彼の子供を宿してしまい、その子を堕ろしたとロバに告げた。

写真を撮るためネパールに行っていたロバは、マンションに戻ってきて曜子とヨリを戻すが、愛子と鈴木が一緒にバーにいるところを見てしまった与志は、彼女の本当の気持ちを知って別れることを決意する。

ロバと曜子が一緒にマンションを出て行ったあとで、愛子も与志の前から去った。

5年後、独立して事務所を開いた与志の祝いの席で4人は再会する。

それぞれ幸せをつかんだ4人は、ともに暮らした日々を懐かしく思い起こしていた。

 

コメント:

 

原作は、宮本輝の同名小説。

『小説新潮』1992年9月号から1995年8月号まで隔月連載され、1995年11月に新潮社より刊行された。

 

私たちが好きだったこと (新潮文庫)

 

岸谷五朗がこの小説の映画化を企画し、主役を務めた、1997年9月6日公開の作品。

監督は、トイレの花子さん(1995年)や「東京タワー 〜オカンとボクと、時々、オトン〜」(2007年)の松岡錠司。

 

映画では、4人が知り合った貧乏な男女を支援する話や、ロバが海外で撮影をしていた時に大けがをする話などをカットして、4人の恋愛事情にスポットを当てた内容になっている。

 

原作にはけっこうエロいシーンがあったり、貧乏な人たちを助ける泣かせるシーンがあるが、映画はエロさを省いた恋愛ドラマになっていて、全然深みが無い。

主人公の北尾与志が初めて愛子と深い仲になる場面では、体位の指導をしたり、彼女が名器の持ち主だと絶賛するシーンがあり、けっこうエロくて笑える。

 

こういう作品のキモになるような部分をしっかりクローズアップしないと、結果として大コケになるのだ。

夏川結衣のヌードありだが、肝心な部分を映像化しないとつまらない。

まあ、この頃の夏川結衣には美しさと可愛さがあるが、やはりミスキャスティングだと言わざるを得ない。

 

ヒロイン・愛子には、もっと神経質で傷つきやすい雰囲気と、女性の性を感じさせる女優を抜擢すべきだろう。

たとえば、永作博美とか、竹内結子とか。

 

小説には、主人公が持つ人へのやさしさがあふれていて、感動する場面が何度も登場し、けっこう泣ける。

この作品が映画化されるとなんでこんなにつまらないものになるのか全然理解できない。

 

タイトルの「私たちが好きだったこと」とは、なんだろう。

 

彼ら4人が好きだったことは、4人の恋愛ゲームではない!

 

彼らが好んだものは、それぞれの苦悩と闘う4人の同志たちの友情と助け合いであり、愛を求める若者としての性愛であり、世の中の弱者の救済の手助けだったはずだ。

 

 

絶対に名監督の手でリメイクすべし!

 

この映画は、DVDが販売されている。