「ニノチカ」
1939年11月9日米国公開。
ソ連を風刺したコメディ作品。
人気女優グレタ・ガルボの代表作のひとつ。
興行収入:$2,279,000。
脚本:メルヒオル・レンジェル、チャールズ・ブラケット、ビリー・ワイルダー、ワルター・ライシュ
監督:エルンスト・ルビッチ
キャスト:
- ニノチカ: グレタ・ガルボ
- レオン・ダルグー伯爵: メルヴィン・ダグラス
- スワナ大公女: アイナ・クレア
- アイラノフ: シグ・ルーマン
- ブリヤノフ: フェリックス・ブレサート
- コパルスキー: アレクサンダー・グラナック
- ラジーニン長官: ベラ・ルゴシ
あらすじ:
第何次かの5ヵ年計画進行中のソヴィエト連邦商務局から、3人の使節・ラツイニン、イラノフ、ブルジアノフがパリへ派遣された。
彼らは、初めて見るブルジョア国の贅沢さに肝を潰したが、ソ連が帝政貴族連から没収した貴金属類売却の使命を果たしに取り掛かった。こ
れを知ったのがホテルボーイになっている、かつてのスヴァナ伯爵夫人の侍僕だったラコーニンである。
彼の注進で宝石奪還を謀る伯爵夫人は、愛人のレオン(メルヴィン・ダグラス)に一切を任せた。
レオンは3使節をまるめ込み、軟化させてしまった。
この状報にソ連本国では、特別全権使節を派遣した。
これが赤ん坊の時から共産主義をたたき込まれた模倣党員ニノチカ女史(グレタ・ガルボ)である。
早速軟化した3使節をしめあげ、宝石の処分に掛かった。
その夜、レオンは妙な美人に街頭でトンチンカンな質問を受け、笑いを忘れた、にこりともしないこの女性に興味を持った。
エッフェル塔に案内すると、彼女は2百13段の階段を一気に上って涼しい顔をしているのでいよいよ興味を持ち、彼女を自分のアパートに伴い、女たらしの天才を発揮して、名も知らぬこの美人とキッスを交わした。
そのラブシーンの最中、ブルジアノフから電話が掛かり、彼は初めて女がニノチカであることを知った。
使命は重大だが、資本主義国のブルジョア生活の楽しさ、レオンとのキッスをニノチカは忘れかねた。
レオンも、宝石争奪戦の敵ではあるが、一女性としてのニノチカを熱愛するに至った。
それを知った伯爵夫人は、ニノチカがパーティで泥酔した夜、ラコーニンに宝石を盗ませた上、翌朝ニノチカを訪ね、レオンから手を引けば宝石を返すと申し出た。
使命に覚めたニノチカは、その申し出を受諾し、急ぎ宝石を処分して、同志3名を伴いモスクワへ帰った。
ニノチカはパリと恋の思い出に眠れぬ夜もあったが、続5ヵ年計画の遂行に献身した。
ある日ニノチカは商務長官に呼ばれ、かつて彼女と共にパリへ行った3人を、毛皮売りにイスタンプールへ派遣したが、またもや任務を怠っているから監督に行けと任命された彼女がイスタンプールに着くと正装した3人が待っていた。
3人共ソ連を亡命してこの地に料理店を開いているのである。
唖然としているニノチカの前にレオンが現れた。
あなたが僕のものにならないなら、あなたが僕のものになるまで、世界中のソ連商務館を料理店にしてしまうつもりだとレオンは言った。
それを聞くと、ついにニノチカはレオンの胸に抱かれたのであった。
コメント:
1939年に米国公開のロマンティック・コメディ。
戦争の影響で、日本ではなんと10年も後の1949年に公開されている。
パリを舞台にして、ロシアの宝石の所有権を巡る争いと男女恋愛ドラマが描かれるルビッチ監督ならではの「お洒落で粋な映画」。
冒頭、フランスでソビエト3人組が高級ホテルを次々と見ては出て行くシーンからして、微笑ましい。
この3人はソビエトの食糧危機に備えて、ソ連が以前個人資産を没収した時の宝石を売却するためにパリにやってきたのだった。
しかし、公爵夫人は「不当にソ連が没収したものなので返還を要求する裁判」を起こす。
…ここで、裁判シーンになるかと思えば、そこは裁判など描かずに物語を進めるルビッチ。
そうして、裁判になるので、ソ連から特別全権大使がやって来るのだが、やって来た全権大使は女性。
名前はヤクショーバ・ニノチカ。
彼女を演じるのがグレタ・ガルボ。
当初、ニノチカはやたらと科学的に分析する大使であり、絶対に笑顔を見せない。
ニノチカに惚れてしまったレオン(メルヴィン・ダグラス)は、ニノチカをエッフェル塔に案内するが、事務的な会話が多い。
エッフェル塔の構造、階段の数は829段+254段、など。
労働者向けレストランにニノチカが行くのを知ったレオンも、そのレストランに行く。
そして「Smile!」(笑って)と言われるが仏頂面のままのニノチカ。
レオンは彼女を笑わせようと面白い話を次々としようとする。
「2人のスコットランド人が道で会った…」、「月には5億人が住んでいる。それじゃあ、半月の時は混み合うね(笑)」など。
ニノチカは笑わないが、映画を観ているこちらが笑ってしまう…(笑)
そしてレオンが椅子からコケたのを見て爆笑するニノチカ。
これ以降、仕事中にも笑い出すニノチカ。
顔に柔らかさが出て来て、最初の仏頂面との微笑ましい顔との対比を上手く演じているグレタ・ガルボ。
さすがである。
そして、フランスに到着した時には貶していた帽子をかぶるニノチカは、レオンと恋に落ちてから変わった。
レオンの部屋で、抱擁とキスをする二人。
ニノチカが部屋に来るので女性の写真を机にしまったレオンだったが、ニノチカはそれに気づいて「私の写真を欲しいと言わないでね。机の中にしまわれるのは堪らないから…」とこれまたナイスなセリフ。
そして、宝石の裁判が終わる木曜日にはパリからソ連に帰らなければならないニノチカに向かって、レオンは言う。
「木曜日に終わるのは裁判だけだ。私たちに木曜日はやってこない」…これまたお洒落なセリフ。
レオンとニノチカはレストランに行くが、綺麗なドレスを着たグレタ・ガルボは本当に美しい!
大人気女優のグレタ・ガルボが初めて出演したコメディ作品である。
それまでシリアスな役どころが多く「笑わない女優」と呼ばれていたガルボが大笑いするシーンがあることから、公開当時は「Garbo laughs!」(ガルボ笑う)というキャッチコピーが使われたという。
これは、ガルボが最初に出演したトーキー映画『アンナ・クリスティ』のキャッチ・コピー「Garbo talks!」(ガルボ話す)をもじったものである。
ヒロイン・ニノチカを演じたグレタ・ガルボは、スウェーデン・ストックホルム出身のハリウッドの名女優。
アメリカン・フィルム・インスティチュートが1999年に選定した映画スターベスト100の女優部門では、キャサリン・ヘプバーン、ベティ・デイヴィス、オードリー・ヘプバーン、イングリッド・バーグマンに続く第5位にランクされた。
代表作は、『肉体と悪魔』(1926年)、『アンナ・クリスティ』(1930年)、『グランド・ホテル』(1932年)、『クリスチナ女王』(1933年)、『アンナ・カレニナ』(1935年)、『椿姫』(1936年)、『ニノチカ』(1939年)。
ガルボは1941年に引退したが、まだ35歳だった。
その後もガルボのもとには多くの映画出演依頼が舞い込んできたが、ガルボが映画界に復帰することはなかった。
やはり、この当時からソ連(今のロシア)は文化もお金も無いつまらない国だと、他の国から思われていて、そんな時代で制作されたソ連風刺映画なのだ。
本当は美人もいるし、その美人も恋に落ちたら他の国の女性と同じチャーミングな存在に変わるのだ。
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