「花の降る午後」
1989年10月7日公開。
神戸でフランス料理レストランを切り盛りする美人女性を巡るラブ・サスペンス映画。
配給収入:3億円。
原作:宮本輝「花の降る午後」
監督・脚本:大森一樹
主題歌:カルロス・トシキ&オメガトライブ「花の降る午後」
キャスト:
- 甲斐典子 - 古手川祐子
- 高見雅道 - 髙嶋政宏
- 荒木幸夫 - 夏夕介
- 黄芳梅 - 室井滋
- 工藤健一 - 円広志
- 葉山直衛 - 小林昭二
- 加賀ヨシエ - 赤座美代子
- 黄健明 - 高品格
- 沼田美加 - 田村英里子
- 松木かず子 - 明日香尚
- 松木精兵衛 - 黒部進
- 甲斐義直 - 古尾谷雅人
- 加賀勝郎 - 梅宮辰夫
- 荒木実紗 - 桜田淳子
あらすじ:
甲斐典子(古手川祐子)は夫を亡くして4年間、神戸にあるフランス料理店の老舗・アヴィニヨンを一人で切り盛りしてきた。
ある日、青年画家の高見(髙嶋政宏)が訪れ、自分の個展を開くので絵を貸してほしいと申し出た。
ところがこの絵の裏から典子の亡き夫・義直の手紙が見つかりそこには隠し子の存在が記されていた。
その頃アヴィニヨンのスキャンダルをめぐってウェイターの秋津、水野、支配人の葉山(小林昭二)が突然店を辞めていった。
典子が知り合いの中国人・黄健明(高品格)に相談したところ、荒木幸雄(夏夕介)、美沙(桜田淳子)の賭博やダイヤの密輸で賭ける札つきの夫婦がアヴィニヨンを乗っ取ろうとしていることがわかった。
典子は義直の親友で私立探偵の工藤(円広志)に荒木夫婦の調査を依頼したが、その矢先に運転手の小柴とシェフの加賀が襲われて怪我をした。
アヴィニヨンは一時閉店に追い込まれたが、高見の励ましや加賀の努力で再開する。
しかし、美沙は隣人リードの娘ジルを人質に取り、土地を奪おうと企んだが、大胆にも典子は荒木夫婦のクルーザでのパーティに潜り込みジルを助け出した。美沙は義直の隠し子の美加(田村英里子)にまで手を出そうとするが、典子は美沙と対決する。
彼女を説得するとともにその悲しい性を知るのだった。
そんな時美加が突然アヴィニヨンを訪ね、典子はその姿を暖かく見守っていたのだった。
コメント:
原作は、宮本輝の同名長編小説。
1985年から1986年まで地方紙、『南日本新聞』、『新潟日報』、『徳島新聞』、『北日本新聞』に連載され、単行本は1988年に角川書店から刊行された。
1991年に角川文庫版、1995年に講談社文庫版が刊行された。
煌びやかな神戸をバックに、フランス料理店を営む美しき未亡人と絵描きの卵の男性との愛欲を交えた、宮本輝らしからぬエロチックでミステリアスな展開が印象に残る名作である。
全く古さを感じさせない表現で素晴らしい作品に仕上がっている。
映画は、神戸を舞台にフランス料理店の女主人と乗っ取りを企む謎の女との闘いという形式に翻案されているが、ヒロインを古手川祐子、敵役の女性を桜田淳子が演じたことで、さらにファッショナブルな色彩が強調されたようだ。
昭和から平成に時代が変わった頃、神戸市制100周年ということで何故か角川映画なのだ。
当然、神戸の震災の起こる前だし、東北の震災や新型コロナなど遙か未来の出来事で、むしろバブリーな時代だったのだということを思い出させられる。
しかし、原作と比べてみると、サスペンスもエロさも無く、切れ味が不足しているといえる。
角川映画というのは大ヒットか大コケのどっちかなのだが、本作は「大コケ」の部類だろう。
若き未亡人が切り盛りする老舗フレンチレストランを巡るトラブルに未亡人の恋愛を絡めたストーリーなのだが、クライマックスと言えるような盛り上がりもなく、ところどころに小さく盛り上がるエピソードがあるだけで、ラストを迎えている。
原作ではヒロイン(古手川祐子)とその愛人の絵描き(髙嶋政宏)との激しい愛欲シーンが何度も出てくるのだが、そこを全てオブラートに包んでしまっているので、エロさを期待していた人はがっかりしただろう。
いかにもバブリーな人たちが登場するかと思えば、老舗レストランの雰囲気が画面いっぱいに描かれたり、日本に長く住むイギリス人が登場したり、香港マフィアのような怪しげな曰く話があったり、原作を読んでいないと戸惑うような雰囲気が出てくるので驚いた方もいるようだ。
だが、原作にはもっとすごい場面が描かれているのだ。
戦前から住み着いた中国華僑や欧米の金持ちとの交流や、ヤクザまがいの神戸の悪徳商人との暗闘など。
さらには色情狂の日本人・中国人・アメリカ人の乱交シーンとか。
とにかく、肝心な部分を全部切り捨てているからこの作品にはこれといった迫るものがないのだ。
現在、この映画の動画はネット上には全く見当たらない。
なぜかこの映画の主題歌になった曲だけがYouTubeにアップされている。
(映画の映像はゼロ)
桜田淳子のスナップがYouTubeにアップされていて、その中にこの映画の画像もある:
監督・脚本が大森一樹では、この程度かも知れないが。
実に残念だ!
是非とも、もっと激しい愛欲とバトルを極めた作品にリメイクして欲しい。
深作欣二か、神代辰巳に作ってほしい!
まだ生きていたら。
この映画は、TSUTAYAでレンタル可能: