「夢見通りの人々」
1989年8月5日公開。
大阪の商店街を舞台にそこに生きる人々の生活を描く人情喜劇。
原作:宮本輝 「夢見通りの人々」
脚本:梶浦政男
監督:森崎東
出演者:
小倉久寛、南果歩、大地康雄、西川弘志、笑福亭仁鶴、すまけい、原田芳雄
あらすじ:
大阪の夢見通り商店街に春太は住んでいた。詩人志望で教材のセールスをしているが性格はお人好し。頭が大きくずんぐりむっくりで容姿に自信はなかったが、向かいの美容院で働く美人の光子に恋していた。ある日タバコ屋が地上げに絡んで暴走族に壊され、一人暮らしのトミ婆さんがショックで入院した。付き添って看病してくれた春太に息子の面影をみた婆さんは、財産を春太に譲るという遺言を残して死んだが、その紙切れは人目につかず掃除婦のおばさんに捨てられてしまった。中華料理店を営む広瀬家では夫婦喧嘩が絶えず、いつも春太が仲裁していた。また、パチンコ屋の娘・理恵が妊娠し、相手の質屋の息子・哲太と駆け落ちしたときも、二人がまだ高校生だったので、よき理解者として相談にのってやった。しかし、自分のこととなると駄目で、なかなか光子に気持ちを打ち明けられない。ようやく光子に故郷を連想させる波の音の入ったテープを贈るが、その頃には元ヤクザだった肉屋の竜一も光子にアタックしていた。しかも刺青を取ったら結婚してもいいとほのめかされていたのだ。春太は光子と竜一の仲を知らず刺青のことを医者に相談してやった。だが竜一が波の音のテープを持っているのを不信に思い、「刺青を取ると死ぬかもしれない」と嘘をついた。しかし、光子は二人を残して突然故郷へ帰ってしまった。春太と竜一はやがて失恋者同志打ちとけた。春太が光子にふられたのはカメラマンの森とホモ仲だったからという噂が流れた。確かに森はホモだったが、芸術を愛するいい人だった。春太は夢見通り商店街を出ていこうとも考えたが、残る決心をしたのだった。
コメント:
原作は、宮本輝 の「夢見通りの人々」。
新潮社より1989年4月7日に出版されている。
タイトルとはうらはらに、夢見通りの住人たちは、ひと癖もふた癖もある。
ホモと噂されているカメラ屋の若い主人。美男のバーテンしか雇わないスナックのママ。性欲を持て余している肉屋の兄弟……。そんな彼らに詩人志望の春太と彼が思いを寄せる美容師の光子を配し、めいめいの秘められた情熱と、彼らがふと垣間見せる愛と孤独の表情を描いて忘れがたい印象を残すオムニバス長編である。
映画は、「時代屋の女房」などで知られる森崎東が監督をつとめた。
とにかくエネルギッシュな大阪の裏町の人々を描いたおもろい映画になっている。
商店街という時代性を反映したコミュニティにおける人間ドラマに文字通り泣いたり笑ったり。
この時代の日本は元気があった。
人々の生活の中にこそドラマがあるのだと改めて思わされる。
冒頭からアクセル全開で、浦安鉄筋家族もこれぐらいやってほしいと思える熱量だし、キッチリうちは喧嘩禁止の店やで!とオチるのがいかにも関西っぽい。
悲と喜の切り替えがめちゃくちゃうまいし。
届かない遺書、波音のテープなどこの人たちならではの小道具の使い方が最高だし。
小倉久寛の一世一代の殴り込みに胸が熱くなり、そこから里見と兄貴が心通わすシーンでぶつかってたまたま揺れる照明→切り返して現れる兎。
震えた。
関西人のアンセム上田正樹の「悲しい色やね」もめちゃくちゃ効いてる。
日本版「雨に唄えば」的なラストシーン。
とにかく小倉久寛のキャスティングが最強。
ほんまにおもろい。
大阪の河、街、庶民を描き続けた宮本輝の巧みなストーリーとギャグをしっかり映画化している名作である。
この映画は、TSUTAYAでレンタル可能: