宮本輝の映画 「螢川」 芥川賞受賞作品を映画化! 北陸・富山に生きる人々を描く傑作! | 人生・嵐も晴れもあり!

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「螢川」

 

 

「螢川」 全編

 

1987年2月21日公開。

北陸・富山を舞台にしたファミリードラマ。

身勝手な男の後妻になった女を十朱幸代が熱演。

 

原作:宮本輝

脚本:中岡京平、須川栄三

監督:須川栄三

 

キャスト:

  • 水島重竜:三國連太郎
  • 水島千代:十朱幸代
  • 水島竜夫:坂詰貴之
  • 辻沢英子:沢田玉恵
  • 関根:川谷拓三
  • 春枝:奈良岡朋子
  • 大森亀太郎:大滝秀治
  • 辰己喜三郎:河原崎長一郎
  • 松崎先生:寺泉憲
  • 銀蔵:殿山泰司

 

 

あらすじ:

昭和三十七年、真冬の富山。水島竜夫(坂詰貴之)はクラスのマドンナで幼馴染の辻沢英子(沢田玉恵)への恋の悩みと、高校受験をひかえて悶々とする毎日を送っていた。

その頃、竜夫の家には借金取りが押しかけていた。

傾いた玄関から男たちを乱暴に押し出す父・水島重竜(三國連太郎)。

童竜は終戦後、手広く事業をやり、町の人から仁王竜と呼ばれるほど羽振りをきかせていた。

だが、豪放な性格ゆえに失敗し、今はその頃の威勢は既になく借金取りに追われる日々である。

妻の千代(十朱幸代)はかつて売れッ子の芸者で、重竜がまだ羽振りのいい頃結ばれ、竜夫を身篭もった。

初めて自分の子を待った重竜は何の罪もない女房の春枝(奈良岡朋子)を棄て、千代と結婚したのだった。

その一粒種の竜夫はもう14歳だった。

幼い頃、竜夫と英子はそんな重竜から聞かされたホタルの伝承をよく覚えていた。

それは、4月に大雪の降った年は川の上流で信じられないようなホタルの大群が発生し、その光景を一緒に見た男女は結婚しなければならない運命にあるという話であった。

重竜が脳出血で倒れた。

父の入院による新たなる借金、看病、そしてつのってくる英子への思い。

竜夫は少しずつ大人の世界へ足を踏み入れつつあるのを感じる。

4月に大雪が降り、春がやってくる。

満開の桜が咲き散る頃、竜夫はふたつの死と遭遇しなければならなかった。

英子に思いを寄せていた圭太という友達が川で水死し、竜夫の父も病床で死んだ。

さらに、一人息子を失った圭太の父(川谷拓三)は気が狂い、入院した。

そして大阪に住む千代の兄(河原崎長一郎)は、上阪して自分の事業を手伝うように執拗に勧めた。

重竜の葬儀には先妻の春枝もやってきて、竜夫への助力を申し出た。

やがて初夏、竜夫は父の遺言に従って、父の旧友だった大森亀太郎を訪ね、何の効力もない手形を割ってもらった。

初夏は蛍の季節でもある。

重竜の知り合いの銀蔵は今年こそ蛍の大群が見られると張り切り、竜夫、英子、千代を連れて、川の上流に向かった。

夕暮れ、目的の土地に辿り着くと、信じられないような数百万匹のホタルが、川を埋めつくしていた。

そのホタルの光の中で、竜夫と英子はいつまでもはしゃぎ続けるのだった。

 

螢川 - 映画情報・レビュー・評価・あらすじ | Filmarks映画

 

コメント:

 

『螢川』(ほたるがわ)は、宮本輝の小説。

1978年に第78回芥川賞を受賞した作品である。

『文芸展望』1977年10月号初出、『泥の河』を併録して1978年に筑摩書房より刊行された。

『泥の河』、『道頓堀川』とともに宮本輝の「川三部作」をなす作品である。

富山県を舞台にしている。

 

 

本作は、蛍の飛び交う場面を大規模な特殊撮影で表現し、それまでの抑制のきいた演出から一転、大量の螢が舞うクライマックスシーンを描いて、高い評価を受けた。

ちなみにそのクライマックスシーンで特殊効果を担当したのが、円谷英二の最後の弟子で光学合成の匠、川北紘一である。

 

昭和30年代の富山。

4月に遅い雪が降った春にだけ川に乱舞するという蛍の大群。

原作をとても大切に映像化したことが伝わってくる。

主人公の中学生の演技、乱舞する蛍の表現は、とても日本的な作品になっていて、古き良き時代を思い出させるような郷愁ともいえる感覚を想起させる。

 

 

やりたい放題に生きて、家族を残して死ぬ、豪放ながらも自分勝手な父親を三國連太郎が熱演している。

毎晩のように、幼い息子を連れてお座敷遊びに熱中するとんでもない男のぶっ飛んだ夜のご乱行の姿は、さすが三國連太郎だと感心せざるを得ない。

昔の男の身勝手さが際立つシーンだ。

 

 

こんな勝手気ままな男の犠牲になった、先妻を奈良岡朋子が、後妻を十朱幸代が好演している。

男女差別がまだ深く残っていた昭和30年代は、女性が耐え忍ぶ時代だった。

雪深い富山を舞台にしているだけに、その苦労がしみじみと伝わってくる作品である。

 

主人公の中学生・竜夫を演じた坂詰貴之は、本作以前にはテレビドラマ「あばれはっちゃく」などに出演していたが、本作後は、洋画の吹き替えやアニメの声優を主として活躍している。

ミッションインポッシブルⅢなどでも活躍しているようだ。

 

富山県のいたち川には当時ホタルの大群が見られることがあったようだが、最近はほとんど見られなくなったようだ。

全国的にも、ホタルが見れるところが激減しているらしい。

残念だ。

 

 

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