山崎豊子のドラマ 「山河燃ゆ」 NHK大河ドラマ第22作! 主人公のモデルは実在の在米日本人! | 人生・嵐も晴れもあり!

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「山河燃ゆ」

 

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「山河燃ゆ」 プレビュー

 

NHK大河ドラマ。

原作は山崎豊子の『二つの祖国』。

全51回。

平均視聴率は21.1%、最高視聴率は30.5%。

 

原作:山崎豊子『二つの祖国』

脚本:市川森一 他

監督:村上佑二 他

 

原作『二つの祖国』のあらすじ:

アメリカのロスアンゼルスに生まれた天羽賢治は、大学を日本で過ごした後、ロスアンゼルスの日本語新聞「加州新報」で日米両国の文化を理解した新聞記者として手腕を発揮する。

新聞記者として脂が乗ってきた最中に日米開戦となる。

日系人であるがゆえに家族全員がマンザナール強制収容所に入れられ、大きな屈辱を味わう。

日本人として生きるべきか、それともアメリカ人としてアメリカに忠誠を尽くすべきか悩んだ末、語学兵に志願し、太平洋戦線へ向かう。

一方、賢治の両親はアメリカへの忠誠テストに背き、マンザナール強制収容所からツールレイク強制収容所に入れられる。

日本が敗戦した後、賢治は進駐米軍の言語モニターとして極東軍事裁判に臨む。

 

原作と本ドラマとの相違:

登場人物、出来事など原作と基本的に同じで日系アメリカ人が経験した戦争中の苦難が主体だが、以下の部分が異なる。

  • 原作は1941年以降の日系人の強制収容、アメリカ軍の語学兵としての戦場、東京裁判が三つの柱だが、ドラマでは1941年以前の日本の様子が書き加えられ、1936年の二・二六事件以降東京裁判までの日本の情勢が二世の視点で描かれている。
  • 主人公天羽賢治が最後に自殺するのは同じだが理由が異なる。原作では妻・エミーとの関係は完全に決裂し、結婚を約束した梛子の死のショック、除隊後も日系人は良い職業につけない、米陸軍対敵諜報部隊(CIC)から厳しい査問を受け依然としてアメリカ人として認められていない等の事情から自殺を選んでいる。一方ドラマでは妻との仲は保たれており、除隊後については触れられておらず、賢治自身が加担した戦争の責任を感じての自殺となっている。
  • 主要な人物の経緯や性格がいくつかの点で異なる。原作では勇はアメリカ陸軍442部隊で戦死、万里子は原爆でケロイドを負い実家から出られなくなる。賢治とチャーリーの結婚時期は逆転している。忠は二世でも中立の賢治を非国民と糾弾したり自ら進んでアメリカ国籍を捨てる日本の熱心な愛国者である。
  • 原作では東京裁判の扱いが大きく証人とのやりとりなどを通じ、その不公正・不公平さが強く訴えられる。ドラマでは大幅に簡略にされ広田弘毅と東郷茂徳を「平和に努力した者」と位置づけ要点のみを描いている。
  • 原作では賢治とエミーの間には、アーサーとベティという二人の子供が登場するが、ドラマでは二人の間の子はアーサーのみとなっている。
  • チャーリー田宮は、ドラマでは最終回で暴漢に刺殺されるが、原作ではその描写はない。
  • 戦前、戦中の日本を描いた中で登場する主要人物で川辺庄平、荒木義勝、張美齢、楠田、白浜、百蘭、久永大尉らはドラマオリジナルの登場人物で原作には登場しない。

 

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主な出演者:

九代目松本幸四郎、西田敏行、三船敏郎、沢田研二、島田陽子、渥美國泰、池部良、泉ピン子、大原麗子、岡田奈々、柏原芳恵、かとうかずこ、川谷拓三、金田明夫、ケント・ギルバート、ヒロコ・グレース、児玉清、塩沢とき、篠田三郎、柴田恭兵、多岐川裕美、アグネス・チャン、鶴田浩二、手塚理美、村井国夫、柳生博、矢崎滋、山田吾一、渡辺謙、綿引勝彦

 

主要人物:

  • 天羽賢治(あもう けんじ):松本幸四郎
主人公、日系2世。アメリカ出身だが、幼少期から大学まで日本で教育を受けたいわゆる「帰米」。恋人もいたが、移民として差別を受けた上アメリカへ強制送還されてしまった。帰国後は新聞社に勤務するが、執筆内容を元にFBIに逮捕される憂き目に遭う。日系人収容所では中立的立場をとるが通訳として軍に志願し、陸軍少尉としてフィリピン戦線において弟の忠と対峙する。戦後は占領軍の一員として来日。東京裁判の通訳モニター引受け、が戦勝国が敗戦国を断罪する不公平な裁判のあり方に疑問を抱き、日米双方の架け橋になろうとして苦しんだ末拳銃自殺した。
三島典子、エミー、梛子から思いを寄せられる二枚目の設定となっている。原作とかなり異なり、中立的で「アメリカ人だが心の中は日本人だ」と繰り返し話し合いを希望するがかなえられない。軍に志願する時は日本人と銃を構えることは強く拒否する。平和を訴える制作側の代弁者になっている。
  • 天羽忠:西田敏行
賢治の次弟、日系2世。アメリカで生まれ教育を受けたが、日本に強い親近感を持つ。柔道四段で浪曲や日本舞踊を嗜み、一般の日本人以上に「日本=祖国」の意識が高い。全日本柔道選手権大会にロサンゼルス代表として参加するため来日したが、大会の数日前に湯河原温泉の旅館で二・二六事件に巻き込まれて足を負傷したため大会には参加できなかった。後日、大会で対戦する予定だった選手との試合を申し込みに「田島道場」を訪れたが、代わりに相手をした格下の門弟(二段)にまったく歯が立たなかった。このまま帰国することを潔しとせず、賢治の反対を押し切り日本に残る。
三島典子の賢治への思いを知り、当時日本国民の渡航が禁止されていたアメリカの賢治のもとへ典子を連れて行くため彼女と偽装結婚。ともにアメリカ行きの客船竜田丸に乗船するも、航海の途中に太平洋戦争が勃発したため、政府の命令により船は横浜港に引き返した。その後鹿児島連隊区から「現役兵證書」(配属先は歩兵第45連隊)を受け取り、迷わず米国籍を棄てる。戦場で兄・賢治と対峙し、負傷。そのために一時賢治を憎悪するが、梛子に諭され仲直りする。
戦後は 戦友だった伊佐新吉と共に「天羽商會」を起こし、チャーリーの勧めで米軍の横流し品を売って大成功を収める。
  • 天羽乙七:三船敏郎
賢治の父、日系1世。鹿児島県の郷士の7男だったが移民として渡米。カリフォルニア州インペリアル・ヴァーレィの農場で働いた後、リトル・トーキョーに「天羽ハンドクリーニング店」を出店する。家族揃っての帰国を一度は考えるも、息子の賢治が日本から強制退去させられていたことを知って激怒し、帰国を取り止める。大統領令9066号により店を失いサンタアニタパーク競馬場の仮収容所を経てマンザナール収容所に送られ、自らの意思で死亡した収容者の遺体処理の仕事に就く。米国に忠誠を誓うか否かの質問に対して「No(否)」と答え、ツールレイク収容所に送られる。戦後、クリーニング店を再建。
  • チャーリー田宮:沢田研二
賢治の友人、日系2世だがアメリカ人として生きる人物。賢治とはエミーや梛子を巡って恋敵でもある。開戦前は放送局に勤め、日本の貧しさと不潔さを嫌う。梛子と結婚後、収容所では米側の手先となり、日系人の管理をし、FBIのスパイとなる。米国政府に不満を言う日系人から「バナナ」(外見は黄色人種だが、中身は白人であるという意味)と揶揄され殺されそうになるが逃れ、その後陸軍少尉となる。ふとついた嘘をきっかけに梛子と離婚する。戦後はGHQの将校として白人を指揮する立場に立ち、日本人から白い目で見られながらも天皇に拝謁した途端、掌返しで英雄視され、日本の華族の娘との再婚話が持ち上がる。その相手を迎えに行く道すがら、軍服を着ていなかったため日本人だと思った暴漢に刺され、賢治とは逆に「心はアメリカ人だが外見を見繕わない限り自分は日本人にしか見られない」と悟りながら死んだ。
  • 井本→田宮梛子(いもと→たみや なぎこ):島田陽子
賢治の幼友達、日系2世。ハイスクールの教員。賢治に恋心を告白したが、賢治から別の人(典子)がアメリカに来るのを待っていると言われて失恋。収容所収監前にチャーリーと結婚し、ミネアポリスに引っ越す。チャーリーの考え・行動に不信を抱き、離婚。その後、父と共に戦時交換船で日本へ送られ、父の故郷広島に住む。昭和20年8月6日広島駅で原爆父と共に被爆したが、父より一足先に地下道に入っていたため生き残った。賢治と共に上京して帝國ホテルに勤めたが白血病を発症し、広島の日赤病院で死んだ。
  • 三島典子:大原麗子
賢治の日本時代の恋人。二・二六事件で偶然賢治と知り合い愛し合う。賢治を日系二世であるが故に差別する内務官僚の父に反対され、さらに陸軍大尉久永との結婚を強いられ、家出する。その後、賢治と結婚の約束を交わし、忠と入籍してアメリカまで追いかけようとするものの、航海途上太平洋戦争が勃発し果たせなかった。戦後は身を持ち崩し、米兵のオンリーとして賢治と再会。最終回で本物の夫婦になろうとした忠と離婚。賢治の死後、忠とともに市ヶ谷の軍事法廷跡(旧陸軍省)を訪れた。

 

 

山河燃ゆ | TV Time

 

コメント:

 

1984年(昭和59年)1月8日から12月23日まで放送されたNHK大河ドラマ第22作。

大河ドラマとして初めて第二次世界大戦を扱った作品であり、翌年の『春の波涛』、翌々年の『いのち』へと続く「近代大河3部作」の第1作である。

 

日系人への誤解を生むことを懸念した全米日系市民協会(旧・日系アメリカ人市民同盟)とNHKが協議し、タイトルは原作の「二つの祖国」でなく、現行のものに改められた。ただし、アメリカでは1984年に本作が放映されると日系社会から猛抗議が起こり、放映中止に追い込まれた。

タイトル文字は従前の作品とは異なり、墨で揮毫したものではなくレタリング系のものとなった(同様の事例は後年の『北条時宗』でも見られた。)。

オープニングのクレジットタイトルも縦書き表記ではなく、初めて横書き表記を使った。

放送期間中の存命人物が登場人物として描かれた大河ドラマは、この作品が初めてである。

作中の人物では西春彦、鈴木貞一、岸信介、昭和天皇などが該当。

 

原作者の山崎豊子は、これまでほとんどの小説を執筆する前に、モデルとなる実在の人物を決めて、徹底的な取材をしていたことで有名だ。

 

本作も、主人公の天羽賢治」を描くために、実在の在米日本人であった伊丹明という人物について詳細な取材をしたようだ。

大まかな経歴はかなり一致するという。

伊丹明は、アメリカ合衆国カリフォルニア州オークランド生まれ。3歳より、鹿児島県加治木町の叔母のところに預けられ、そこで少年期を過ごす。鹿児島県加治木中学校を卒業後、1928年より大東文化学院に入学し、漢籍やインド哲学を研究する。

1931年にアメリカに戻ると、1935年に日本国籍を離脱。

カリフォルニア大学に入学し、日本語新聞の『加州毎日』の記者となる。

1941年12月に勃発した太平洋戦争により、収容所生活を強いられるが、アメリカ陸軍情報部に勤務することとなる。任務は日本軍の軍事暗号を解読することであった。1943年に、ドイツから日本へ寄贈される2隻の潜水艦のうちの1隻、U-511には軍事代表委員の野村直邦中将が便乗することとなっていたが、そのやり取りに、薩隅方言(主に鹿児島県で話されている方言)が使われていた。アメリカ海軍情報局は盗聴しつつも、この会話を解読出来なかったが、伊丹によって内容が明らかにされた。

1946年4月に始まった極東国際軍事裁判で、伊丹は通訳モニター、すなわち日本側の通訳についてチェックする役割を担った。

後に小説化された『二つの祖国』や、ドラマ化された『山河燃ゆ』において、戦争責任をめぐる裁判に関する業務において、アメリカ合衆国と日本との間での、仕事の上での重圧が耐え難いものだったことが、推測されている。

1950年に、ピストル自殺を遂げる。享年39。

1984年にはNHKにて、大河ドラマ『山河燃ゆ』が放送されたことで、主要登場人物のモデルとして注目されることとなった。

 

 

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