山崎豊子という文豪がいます。
これまでの女流作家の中で最も多くのベストセラーを記録している作家であり、かつ映像化作品も大ヒットしています。
紫式部以外で最も知名度が高く、文学的にも高く評価されているのは、間違いなく山崎豊子でしょう。
まずは、この人の出自と経歴をたどります。
大阪府大阪市南区(現:中央区)船場出身。
実家は老舗昆布屋の小倉屋山本。
1936年(昭和11年)、旧制大阪市芦池尋常小学校(現:大阪市立南小学校)卒業。
1941年(昭和16年)、旧制相愛高等女学校(現:相愛中学校・高等学校)卒業。
1944年(昭和19年)、旧制京都女子専門学校(現:京都女子大学)国文学科卒業。
毎日新聞社に入社した。
毎日新聞大阪本社調査部を経て1945年(昭和20年)学芸部に勤務し、当時学芸副部長だった作家井上靖のもとで記者としての訓練を受けた。
勤務のかたわら小説を書きはじめ、1957年(昭和32年)に生家の昆布屋をモデルに、親子二代の船場商人を主人公とした『暖簾』を刊行して作家デビュー。
出版後すぐに映画・ドラマ化され、人気を博した。
翌年吉本興業を創業した吉本せいをモデルに大阪人の知恵と才覚を描いた『花のれん』を上梓。
同作により第39回直木賞受賞。新聞社を退職して作家生活に入った。
初期は船場など大阪の風俗に密着した小説作品が多い。
その頂点が足袋問屋の息子の放蕩・成長を通して商魂たくましく生き抜く大阪商人の典型を描いた『ぼんち』であり、市川雷蔵主演により映画化された。
1961年(昭和36年)『女の勲章』取材中に元同僚と結婚。
1963年(昭和38年)より連載を始めた『白い巨塔』は大学病院の現実を描いた鋭い社会性で話題を呼び、田宮二郎主演で映画化されたほか、数回に亘りテレビドラマ化された。
これも大阪大学医学部がモデルとなっており、大阪の風俗が作品への味付けとなっている。
神戸銀行(現:三井住友銀行)をモデルとした経済小説、『華麗なる一族』も佐分利信の主演で映画化され、さらに3度に亘りテレビドラマ化された。
中年期以降は、テーマ設定を大阪から離れ、戦争の非人間性など社会問題一般に広げていった。
『不毛地帯』、『二つの祖国』、『大地の子』の戦争3部作の後、日本航空社内の腐敗や日本航空123便墜落事故を扱った『沈まぬ太陽』を発表した。
1991年(平成3年)、菊池寛賞受賞。
1993年(平成5年)大地の子などの印税を基に「山崎豊子文化財団」を設立し、日本に帰国した中国残留孤児の子供の学資を援助した。
『大地の子』で引退を考えたが、「芸能人には引退があるが、芸術家にはない、書きながら柩に入るのが作家だ」と新潮社の斎藤十一に言われ、執筆活動を継続した。
21世紀に入ってからは、『文藝春秋』2005年(平成17年)1月号から2009年(平成21年)2月号まで西山事件をモデルとした『運命の人』を連載した。また2005年秋に『山崎豊子全集』(新潮社 全23巻)刊行が完結。
2009年(平成21年)『運命の人』で毎日出版文化賞特別賞受賞。
2013年8月より週刊新潮にて新作「約束の海」の連載を開始。
第1部(20話)を書き上げた後に体調不良となり堺市内の病院に緊急入院する。
2013年9月29日に呼吸不全のため死去。
89歳没。葬儀は10月1日、堺市内の自宅で営まれた。
故人の遺志により密葬形式が取られ、親族と出版社の関係者ら約40人が参列。
著名人の姿はなかった。
戒名は「松壽院慈簾翠豊大姉」。
出版した作品数は、計全452作品といわれている。
主な人気作の映像化の有無は、以下の通り:
書名 | 出版年 | 出版社 | 映画化 | ドラマ化 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
暖簾 | 1957年 | 東京創元社 | ○ | ○ | NHKドラマ「横堀川」の原作。「ぼんち」 は、映像化の他に舞台化もされている。 |
花のれん | 1958年 | 中央公論社 | |||
ぼんち | 1959年 | 新潮社 | |||
しぶちん (短編集) |
中央公論社 | × | |||
女の勲章 | 1961年 | ○ | |||
女系家族 | 1963年 | 文藝春秋新社 | |||
花紋 | 1964年 | 中央公論社 | × | ||
白い巨塔 | 1965年-1969年 | 新潮社 | ○ | ||
仮装集団 | 1967年 | 文藝春秋 | × | × | |
花宴 | 1967年-1968年 | 中央公論社 | 盗作により雑誌連載のみで、絶版。 | ||
華麗なる一族 | 1973年 | 新潮社 | ○ | ○ | |
不毛地帯 | 1976年-1978年 | ||||
二つの祖国 | 1983年 | × | NHK大河ドラマ「山河燃ゆ」の原作 | ||
大地の子 | 1991年 | 文藝春秋 | NHKドラマスペシャル「大地の子」[18]の原作 | ||
ムッシュ・クラタ (中・短編集) |
1993年 | 新潮社 | × | ||
沈まぬ太陽 | 1999年 | ○ | ○ | ||
運命の人 | 2009年 | 文藝春秋 | × | ||
約束の海 | 2014年 | 新潮社 | × | 絶筆作品。遺作 |
これから山崎豊子の映像化作品をできる限り多くレビューして行きます。
お楽しみに!