2018年、「TANIZAKI TRIBUTE 3作品」と銘打って、近代日本文学を代表する文豪・谷崎潤一郎の短編小説を基に、気鋭の監督3人が実写化に挑んだ映画が3作公開された。
「神と人との間」「富美子の足」「悪魔」の3作品である。
まずは、第1作から:
「神と人との間」
2018年1月27日公開。
「細君譲渡事件」を題材にした同名小説の映画化。
原作:谷崎潤一郎『神と人との間』
監督・脚本:内田英治
キャスト:
- 渋川清彦:穂積
- 戸次重幸:添田
- 内田慈:朝子
あらすじ:
ともに熱帯魚屋で働く朝子(内田慈)に思いを寄せる町医者の穂積(渋川清彦)とその親友の漫画家・添田(戸次重幸)。
穂積は添田に朝子を譲るが、結婚した途端に添田は愛人を作り朝子を虐待、さらに穂積と朝子が不倫をするようけしかける。
サディスト化した添田に挑発されながらも朝子を思い続ける穂積。
そんな純愛も、ある事件をきっかけに憎悪に変わっていく……。
コメント:
原作は、谷崎潤一郎の自身の体験「細君譲渡事件」を題材にした同名長編小説。
細君譲渡事件とは、谷崎が最初の妻・千代を佐藤春夫に譲った出来事をいう。
初出は『婦人公論』で、1923年(大正12年)1月号から1924年(大正13年)12月号に連載された。
単行本は1925年(大正14年)の1月に新潮社より刊行された。
自己犠牲に酔う心の内にあるマゾヒズムと、そういう形でしか愛情を表現できない男を描くことで、人間が持つ業をあぶり出す。
いかにも、谷崎潤一郎らしいテーマである。
そして、谷崎潤一郎にとっての『人間失格』とも言える作品なのかもしれない。
医者の穂積は親友の添田も、熱帯魚屋で働く朝子を愛していることに気づく。
穂積は自ら身を引き、添田と朝子は結婚して上京する。
数ヶ月後に、東京に来た穂積は二人に再会する。
添田の女癖の悪さに、朝子は身も心も疲れ果てていた。
穂積は朝子を連れ出そうとするが、もう一度やり直したいと言う添田と朝子の言葉に、また身を引く。
数年が経ち、三人の歪んだ関係を赤裸々に描いた漫画で、穂積は一躍有名作家になっていた。
そして、また添田と朝子に再会することになる。
理解しがたい三人の人間を描くにあたり、内田英治監督はリアリズムを排除した演出に徹している。
心では愛しているのに、逆のセリフを発するシーンがある。
愛を抱きながら、真逆のセリフを言うのではない。
単にセリフを機械的に言わせることで、その人物が抱える哀しみや苦しみを浮き彫りにする。
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原作の小説の朗読がYouTubeにアップされている: