「シェルタリング・スカイ」
(原題:The Sheltering Sky)
1990年12月12日公開。
砂漠地帯の風景が印象的な異色ロードムービー。
受賞歴:
- 第48回ゴールデングローブ賞 音楽賞受賞/監督賞ノミネート
- 第44回英国アカデミー賞 撮影賞受賞
- 第46回イタリア映画批評家協会賞 シルバーリボン賞(撮影賞)受賞
- 第16回ロサンゼルス映画批評家協会賞 音楽賞受賞
- 第56回ニューヨーク映画批評家協会賞 撮影賞受賞
原作:ポール・ボウルズ『極地の空』
脚本:ポール・ボウルズ、ベルナルド・ベルトルッチ、マーク・ペプロー
監督: ベルナルド・ベルトルッチ
音楽:坂本龍一
キャスト:
- キット・モレスビー - デブラ・ウィンガー
- ポート・モレスビー - ジョン・マルコヴィッチ
- ジョージ・タナー - キャンベル・スコット
- エリック・ライル - ティモシー・スポール
- エリックの母 - ジル・ベネット
- スマイル - ベン・スマイル
- フランス人女性 - ニコレッタ・ブラスキ
- ナレーター - ポール・ボウルズ
あらすじ:
終戦後まもなくの1947年、北アフリカ。
ニューヨークからやって来た作曲家のポート・モレスビー(ジョン・マルコヴィッチ)とその妻で劇作家のキット(デブラ・ウィンガー)。
彼らの目的は単なる観光ではなく、求めるべき夢さえ失なった彼らの深い喪失感をこの文明と隔絶し、あてどもない拡がりを持った世界で癒すためだった。
その旅の道連れとなったのがポートの友人で上流社会に属するタナー(キャンベル・スコット)。
結婚して10年、夫との心のすれ違いを感じるキットに、かねてより彼女に心を寄せるタナーは接近してゆく。
やがて3人は次の目的地に向かうが、ホテルで同宿したイギリスのトラベル・ライターのライル夫人とその息子で母親から金をせびってばかりいるエリックと同じ車に乗ったポートに対して、キットとタナーは別行動をとった。
そしてそこでついにキットとタナーは一夜を共にする。
だが、アフリカ奥地の風土に嫌気がさしたタナーは別の土地へ向かい、二人きりになったポートとキットは彼らの心の虚無を象徴するかのようなアフリカの蒼穹の下でひととき愛を確認したかにみえたが、それもつかの間、ポートの体はチフスにむしばまれていたのだった。
医者もいない砂漠の果ての町でポートは息絶える。
ついに一人きりになったキットの旅は、しかしまだ続く。
何もない砂漠の荒寥を自らの内面と一体化したかのようにアラブ人の隊商の中に身を埋め、男と体を重ねる彼女の眼はもはや何ものも映し出さないかのようであった。
そんな彼女の行方を探すタナーの手でやっとキットは砂漠からモロッコのタンジールへと連れ戻される。
だが、もはや彼女はもとの自分へと返ることなどできない。
タナーが一瞬目を離すともはや彼女の姿はどこにもなかった。
コメント:
『ラストエンペラー』の監督をつとめたベルナルド・ベルトルッチが再び坂本龍一を音楽担当に迎えた作品。
モロッコ、アルジェリア、ニジェールの北アフリカ3か国でロケを重ねた名作である。
ニューヨークの街中がモノクロ映像で描かれた直後、ある夫婦と友人が何処かに船の長旅でやってくるところから始まる。
夫婦と友人男性はサハラにやって来た。
アフリカである。
夫のポート(ジョン・マルコヴィッチ)とその妻キット(デブラ・ウィンガー)の二人は単なる観光客としてではなく旅人としてやって来た。
夢さえ失った彼らは、文明と切り離された自然で自分達を取り戻す旅にしたかった。
旅の道連れとなったポートの友人タナー(キャンベル・スコット)は、彼らほど長くアフリカに滞在するつもりはなかったが、好意を持っていた友人の妻キットと肉体関係を持つ。
この辺りで、この夫婦は結婚10年であり、愛を見失っている雰囲気が分かる。
なるほど、だから3人でホテルに泊まる時も夫婦なのに別室だったのか…と思う。
アフリカを転々とする彼ら。
やがて、夫ポートが疫病にかかったあたりから物語は急展開を見せてゆく。
こういった物語が、サハラ砂漠やそこを並んで進むラクダとともに描かれ、とりわけ綺麗だったのは「太陽の光」。
妻キットに扮したデブラ・ウィンガーが体当たりのセックス場面を演じていたのはチョット驚き。
この人は、『愛と青春の旅立ち』でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされ、知名度を上げたハリウッド女優。
坂本龍一の音楽が最高。
映像とのマッチングもすばらしい。
見応えのある、なかなかの佳作である。
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これで、イタリア映画特集も200作に達した。
あと10本!