谷崎潤一郎の映画 「細雪」 市川崑監督による大ヒット文芸映画! 邦画界トップ女優の共演! | 人生・嵐も晴れもあり!

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細雪」

 

 


細雪 予告編

 

細雪 家族会議のシーン

 

細雪 佐久間良子と吉永小百合のシーン

 

1983年5月21日公開。

谷崎潤一郎の同名長編小説の映画化。

配給収入:9.5億円。

 

受賞歴:

1983年キネマ旬報ベストテン日本映画2位、助演男優賞(伊丹十三)。

アジア太平洋映画祭グランプリ受賞、同・監督賞受賞。
 

見どころ:

 

1936年(昭和11年)秋から1941年(昭和16年)春までの大阪の旧家を舞台に、四姉妹の日常生活の悲喜こもごもを綴った作品。

 

「細雪」は、何度も映画化、ドラマ化、舞台化されているが、市川崑の監督による本作が、最も格調高く、トップ女優を起用しており、最高傑作と言われている。

 

当時のトップ女優たちが格調高い上質な関西名家の家族の会話を交わす名作である。

 

脚本:日高真也、市川崑

監督:市川崑
出演者:

佐久間良子、吉永小百合、岸惠子、古手川祐子、伊丹十三、石坂浩二、三宅邦子、浜村純、頭師孝雄、三條美紀、小坂一也、細川俊之、江本孟紀、岸部一徳、常田富士男

 

 

あらすじ:

 

昭和十三年の春、京都嵯峨の料亭、蒔岡家の四姉妹と幸子の夫・貞之助(石坂浩二)が花見に来ている。

幸子は今度の雪子(吉永小百合)の縁談を本家の長姉鶴子(岸惠子)から、家系に問題があるとの理由で断わるように言われ苛立っていた。

五年前、末娘の妙子(古手川祐子)が、船場の貴金属商・奥畑の息子啓ぼんと駆け落し、その事件が新聞ダネになり、しかも雪子と間違って書かれ、本家の辰雄(伊丹十三)が奔走して取消し記事を出させたら、妙子の名をより大きく出す結果になったことがあった。

妙子も雪子も本家の不手際から分家の幸子(佐久間良子)の家に居つくようになってしまったのである。

人形作りに励む妙子は、啓ぼんとの仲も冷め、奥畑家にもと奉公していて、現在は写真家で立とうとしている板倉と親密な間柄になっていたが、板倉は中耳炎をこじらせて急逝してしまう。

雪子は、鶴子が夫の筋から持ってきた銀行員、幸子の女学校時代の友人・陣場夫人の紹介の水産技官野村、幸子の行きつけの美容院のマダム井谷が持ってきた製薬会社の副社長橋寺と見合いするが、いずれも雪子が気にいらなかったりとうまくいかなかった。

そんな折り、本家では辰雄が会社からもって帰ってきた東京赴任の知らせに、鶴子は気が動転していた。

井谷がまた雪子に見合い話を持ってきた。

相手は華族の東谷子爵の孫(江本孟紀)である。

板倉が死んでから酒場通いを続けていた妙子は、その酒場のバーテンダー・三好のところに押しかけ同棲してしまうが、貞之助が会いに行くと、三好はしっかりした青年で、妙子も地道な生活設計を立てているようで心配はなかった。

鶴子は悩んだ末に東京へ行くことを決心し、雪子も東谷との縁談がまとまる。

そして、冬の大阪駅、雪子や貞之助らが見送るなか、鶴子たちを乗せた汽車は出発した。
 

 
 

 

コメント:

 

岸惠子が長女の鶴子、佐久間良子が次女の幸子、吉永小百合が三女の雪子、古手川祐子が四女の妙子をそれぞれ演じている。

そして、次女・幸子の夫である貞之助を石坂浩二が演じている。

この5人が京都の嵯峨野で花見をするシーンは、市川崑監督の数ある映画の中で最も美しいと言われている。

美男美女の登場人物と、嵯峨野の桜の美しさがマッチしていてこれ以上の映像は見当たらない。

 

 

物語の中心にいるのが吉永小百合扮する三女の雪子。

何度も見合いをするがまとまらず、周囲をやきもきさせる。

また、古手川祐子が演じる四女の妙子は、現代っ子で旧家のしきたりにとらわれない自由な生き方を追求する。

法事のあとの家族会議の場でも、叔母から言われたことに妙子は立腹し、その場で家から飛び出してしまう。

 

 

しかし、この映画全体をしっかりとまとめ上げているのは、長女の鶴子を演じる岸恵子と、次女の幸子を演じる佐久間良子である。

この二人によって大阪・船場の旧家の家族が美しく華やかに映し出されているのだ。

特に、佐久間良子は雪子の見合いの都度、相手と交渉したり、雪子の気持ちを確かめたりと親代わりの世話を焼いている。

その語り口やしぐさは、もう完全に船場の名家の女性だ。

 

 

 

本作は、谷崎潤一郎の三度目の妻 旧姓・森田松子の四姉妹をモデルにした物語といわれている。
四姉妹同士の着物の選び合いと着付け合いで姉妹の絆の強さがよくわかる。
"衣食住"の"衣"による表現世界になっている。

 

各キャラクターに合わせた柄、アイテム、配色が素晴らしい。
わかりやすいのが法事の場面。
長女の岸恵子は、喪主の伊丹十三に合わせて黒喪服。
次女、三女、四女は紫の色無地に喪の帯を合わせて喪の準礼装にしている。
三人の色無地の紫色は微妙に違い、年齢が若くなる程明るい紫色になっている。
キメの細かい衣装表現が素晴らしいのだ。

 

「細雪のきもの」という写真集がある。


 

市川崑監督による「細雪」の映画化にあたって、主人公の蒔岡家の四姉妹が着る着物をわざわざ一から作成したという。

その数なんと百二十着あまり。

その中から選ばれた衣装がカラー写真で掲載されているようだ。

 

数々ある谷崎潤一郎の映画の中で、最も上品な「耽美主義」を描いているのがこの作品だろう。

 

日本の美、日本女性の美をしっかり見せている。

 

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