イタリア映画 「グッドモーニング・バビロン!」 映画製作の喜びを描いたタヴィアーニ兄弟の作品! | 人生・嵐も晴れもあり!

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「グッドモーニング・バビロン!」

(原題:Good Morning, Babylon)

 

Good Morning, Babylon de Vittorio Taviani, Paolo Taviani (1986) - Unifrance

 

「グッドモーニング・バビロン!」 予告編

 

1987年9月17日公開。

タヴィアーニ兄弟監督による映画制作の喜びを描く作品。

 

受賞歴:

第40回カンヌ国際映画祭審査外特別招待作品。

1987年第61回キネマ旬報ベスト・テン外国映画部門第1位・外国映画監督賞。

第12回報知映画賞海外作品賞受賞。

 

監督・脚本:パオロ・タヴィアーニ、 ヴィットリオ・タヴィアーニ 

 

キャスト:

  • ニコラ:ヴィンセント・スパーノ
  • アンドレア:ジョアキム・デ・アルメイダ
  • エドナ:グレタ・スカッキ
  • メイベル:デジレ・ベッケル
  • ボナンノ:オメロ・アントヌッティ
  • D・W・グリフィス:チャールズ・ダンス

 

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あらすじ:

1913年頃のイタリア中北部トスカーナ地方。

ボナンノ・ボナンニ親方(オメロ・アントヌッティ)の合図で幕が外され、中世イタリア・ロマネスク様式の“奇跡の聖堂”の修復が完成し、披露される。

だが、その修復は、ロマネスク大伽藍の建築と修復を家業としてきたボナンノ家の最後の仕事だ。

重なる借金に、決断を7人の息子にまかせて引退を決意するボナンノ。

息子の2人、ニコラ(ヴィンセント・スパーノ)とアンドレア(ジョアキム・デ・アルメイダ)は、家業を続けようと主張し、腕を磨く意味でもアメリカに出稼ぎに行くことを父に懇願し許しを得る。

意気揚々とアメリカに渡った2人だが、それが容易でないことを感じる。

荒野で途方に暮れる2人の前に、パナマ運河開通記念のサンフランシスコ万博でのイタリア館建築に向かう一行が現われる。

なつかしいイタリア語を聞いて、たまらず彼らに同行する2人。

イタリア館とその宝石塔が話題を集めたサンフランシスコ万博で上映するのは、パストローネの「カビリア」。

それを自分ひとりのためにオーケストラを借りきって見るのは「イントレランス」を手がける決意をしたてのD・W・グリフィスだ。

彼は、その大作「イントレランス」で、イタリア館を建てた棟梁たちをスタッフに加えろと指示する。

棟梁になりすましてハリウッドに着くニコラとアンドレア。

華麗な撮影風景に驚嘆した彼らは、そこで美しいエキストラ、エドナ(グレタ・スカッキ)とメイベル(デジレ・ベッケル)と知り合う。

彼女たちは、しかし、エキストラにうんざりし、しきりに踊りをデモンストレーションする。

兄弟は棟梁として認めてもらおうとするが、製作主任のグラース(デイヴィッド・ブランドン)が若すぎるといって追い払う。

落胆する2人は、メイベルとエドナに励まされる。

ニコラはエドナから、アンドレアはメイベルからそれぞれ愛を受け、兄弟は名もない仕事を次々にこなす。

やがて、森の中で彼らは象を作り出す。

 

Good Morning Babylon - Film4

 

 

 

父と仕事をした“奇跡の聖堂”のあのイメージを甦らせる。

グラースの妨害も撮影所の仲間たちの協力でのりこえ、2人の象はグリフィス監督に認められた。

栄華の都バビロンのセットが決まった日は、ニコラとエドナ、アンドレアとメイベルの同時に結婚を祝う日。

その宴席に、はるばるイタリアから父のボナンノがやってきた。

聖堂づくりに出稼ぎにいったのであって、ハリウッドなどで働くためでないといって、グリフィスに敵意をみせるボナンノ。

しかし、かつての聖堂づくりが今の映画づくりではないかと語るグリフィス。

超大作「イントレランス」の完成試写会はアメリカの参戦を求める世論が沸騰する中で行なわれ、試写会場前には、反戦映画の上映に抗議する人々が殺到した。

不穏な空気の中で産気づくメイベル。

同時にエドナも。

男の子が生まれるなら名前はボナンノと同時に言い争うニコラとアンドレア。

子供はそれぞれ生まれたが、エドナは死ぬ。

絶望したニコラは大戦中の故国に戻り北伊戦線でオーストラリア軍と戦う。

戦場で再会する2人は重傷を負って死を待つばかりとなるが、お互いの姿をキャメラに撮り合うのだった。

 

Good Morning Babilonia de Vittorio Taviani, Paolo Taviani (1986) - Unifrance

 

コメント:

 

映画草創期のハリウッドにのりこんで、D・W・グリフィスの超大作映画『イントレランス』のセット建設に参加したイタリア人兄弟の物語。

 

「映画愛」にあふれたこの映画は、タヴィアーニ兄弟による感動作である。
この映画で印象深いシーンは、『イントレランス』撮影中のセット風景である「象のシーン」が壮大に再現されるところや、ラストに戦場で再会した兄弟が二人の姿を映しながら死んでいくところだ。

このイタリア人の兄弟は、イタリアで一緒に職人をしていて、アメリカへ一緒に行き、ハリウッドでグリフィスの仕事を一緒に目の当たりにし、二人ほぼ同時に女性とそれぞれ一緒になるが、運命の分かれ道は、二人のそれぞれ愛した女性がほぼ同時に出産するときに片方は母子ともに健康、片方は子供は生まれるが母親死亡という一方だけ不幸になる点である。
運命というものは残酷なものだと認識させられる。

 

グリフィス監督の映画『イントレランス』とは、実際に1916年に公開されたアメリカ映画で、いつの時代にも存在する不寛容(イントレランス)を描いた大作である。

4つの不寛容のエピソードが挿入されている。

その4つのエピソードとは、製作当時のアメリカを舞台に青年が無実の罪で死刑宣告を受ける「アメリカ篇」(『母と法律』のストーリーにあたる部分)、ファリサイ派の迫害によるキリストの受難を描く「ユダヤ篇」、異なる神の信仰を嫌うベル教神官の裏切りでペルシャに滅ぼされるバビロンを描く「バビロン篇」、フランスのユグノー迫害政策によるサン・バルテルミの虐殺を描く「フランス篇」で、この4つの物語を並列的に描くという斬新な手法を用いている。

 

アメリカに渡った2人は、言葉の通じない国で苦労を重ねたのちに、1915年にサンフランシスコで開催された「パナマ・太平洋博」で、宝石塔を建設するイタリア人チームのスタッフに加わることになる。
実際に宝石塔の見事さは当時話題を呼び、建設したイタリア人建築職人が「イントレランス」の美術スタッフとして招かれたという実話に着想を得て、本作は作られたという。

ハリウッドの製作プロデューサーがタヴィアーニ兄弟に本作の監督を依頼しに行ったとき、タヴィアーニ兄弟は「ハリウッドのやり方と自分たちのやり方は違うから」と断ったそうだが、製作プロデューサーは引かず、これはイタリア人の物語だといってタヴィアーニ兄弟を説得したという。

本作では、「イントレランス」の巨大な撮影セットと撮影風景が再現され、イタリア映画「カビリア」に衝撃を受けたグリフィスが「イントレランス」にバビロン編を追加するなどの映画エピソードが描かれていたりと、映画ファンにはワクワクのバックステージものでもあるのだ。


また、黎明期のハリウッドで、生まれたばかりの映画に大きな夢と希望をそそぎ人生を賭けるグリフィスの、映画への愛と情熱に満ちた姿が魅力的に描き出されている。
だが、本作の主役はあくまでもニコラとアンドレという名もなきイタリア人職人なのだ。

そして彼らを取り巻くエキストラや撮影スタッフなど若い仲間たちの姿も丁寧に描かれている。
映画とはそうした大勢の名もなき職人やスタッフの力の結晶であり、夢の結晶であると、作中のグリフィスは語っている。

 

この映画は、残念ながら、日本においては、現時点でアマゾンで日本語字幕版DVDを購入するしかないようだ。

レンタルも動画配信もない。