「偽りの晩餐」
(原題:Lunga Vita Alla Signora!)
1987年公開。
子供のシェフたちの奮闘と大人の夜の世界を描く異色作。
受賞歴:
第44回ヴェネツィア国際映画祭
銀獅子賞
国際映画批評家連盟賞
心理学会賞
監督・脚本:エルマンノ・オルミ
キャスト:
ジョヴァンナ・ヴィドット:主賓の老婦人
マルコ・エスポジト:リベンツィオ
シモーナ・ブランダリーゼ:コリンナ
アンナ:ステファニア・ブサレロ
シモーネ・ダラ・ローザ:マオ
ロレンツォ・パオリーニ:チッチョ
タルシシオ・トシ:ピジ
マリサ・アバーテ:ミス
あらすじ:
ある老婦人が政界、財界の名士を招いて開く豪華な晩餐会の給仕としてホテルにやってきた6人の少年少女たちは、早速支配人から指示をうけ宴会の準備にとりかかった。
やがて着飾った列席者たちが姿を見せ始め、そして主賓の老婦人(ジョヴァンナ・ヴィドット)が現れた。
ワイン調達を命じられた給仕の一人リベンツィオ (マルコ・エスポジト)は、倉庫で外に通じる戸口を発見する。
そして彼は休憩時間にやってきた父と少しの間だけ話をした。
宴もたけなわになると、列席者の中にいた美しい少女が、なぜか連れの紳士と一緒に席を立って出て行く。
さらに、最初から傍若無人な態度の紳士は、隣の席の婦人に気があるようで、とうとう彼女と踊りだす。
やがて、主賓の老婦人が退場して晩餐会は終わった。
その夜、リベンツィオはある夫人の部屋に酒を運んでいったが、危うく誘惑されそうになった。
眠れないリベンツォは、倉庫の戸口から外に出て、ホテルからの脱走を試みるが、番犬に見つかり追いかけられてしまう。
しかし犬は何もせず、つまづいたリベンツォのそばに横たわるだけだった。
コメント:
『木靴の樹』のエルマンノ・オルミの監督作品である。
ヴェネチア国際映画祭銀獅子賞授賞作品。
原題の「Lunga Vita Alla Signora!」とは、「レディ、万歳」という意味のようだが、女性を讃嘆することがこの映画の主題ではないことは明白だ。
どうやら「子供の目から見た貴婦人たちは、変だ」というのがテーマになっているようだ。
「偽りの晩餐」という日本語タイトルの方が的を得ている。
ある古城で老婦人の誕生日を祝う晩餐会が開催され、そこに政財界の大物らしき人物が集まる。
6人の少年少女達は支配人の指示を受けて準備に取りかかるが・・・。
映画のほとんどが晩餐会の準備とその開催が占めている。
台詞は少なく、そしてたんたんとしており、カットを挟んで人物の視線で表現しようとしている。
晩餐会は幾分皮肉が入っているような描かれ方が、強調した感じでは描かれていない。
説明が少ないため、細かい要素に注意して見る必要がありそう。
そして考察も人によって様々になりそうな作品。
主役の少年リベンツォの何とも言えない顔つきは好感を持てる。
そして彼の心情に興味を持てる。
この映画は、子供の目から見た大人の世界の醜怪さが強調されているコメディ作品のようだ。
晩さん会の参加者は戯画化されており、イタリア映画の伝統であるネオレアリズモは無くなっている。
この頃になると、子供から見た大人の世界をテーマにした作品が多くなっているようだ。
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