イタリア映画 「木靴の樹」 神と共に生きる農民の姿を描く名作! カンヌ映画祭パルムドール受賞作! | 人生・嵐も晴れもあり!

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「木靴の樹」

(原題:L'Albero degli zoccoli

 

L'ALBERO DEGLI ZOCCOLI - Pianura da Scoprire

 

「木靴の樹」 全編

 

1978年5月公開。

カンヌ国際映画祭パルムドール受賞。

セザール賞最優秀外国映画賞受賞。

 

監督・脚本:エルマンノ・オルミ

 

キャスト:

  • ルイジ・オルナーギ:バティスティ
  • バティスタ・トレヴァイニ:フィナール
  • ルチア・ペツォーリ:マッダレーナ
  • フランコ・ピレンガ:ステファノ
  • オマール・ブリニョッリ:ミネク

L'albero degli zoccoli (The Tree of Wooden Clogs). 1978. Directed, written  and photographed by Ermanno Olmi | MoMA

 

あらすじ:

19世紀末の北イタリア、ベルガモ。

農村は貧しく、バティスティ(ルイジ・オルナーギ)の一家は、他の数家族と一緒に小作人として住み込んでいたが、この農場の土地、住居、畜舎、道具そして樹木の一本までが地主の所有に属していた。

フィナール(バティスタ・トレヴァイニ)はけちで知られており、収穫を小石でごまかしていた。

ルンク未亡人(テレーザ・ブレッシャニーニ)は夫に死なれた後、洗たく女をして6人の子どもたちを養っていた。

ブレナ一家の娘マッダレーナ(ルチア・ペツォーリ)は美しい娘で、勤めている紡績工場のステファノ青年(フランコ・ピレンガ)と交際していた。

バティスティ家に男の子が生まれた。

学校から帰ったミネク(オマール・ブリニョッリ)は新しい弟のために、河のほとりに並ぶポプラの樹の一本を伐ってきて、一足しかない木靴をつくってやった。

マッダレーナとステファノの結婚式が済み、ミラノへ新婚旅行に行った2人は、マッダレーナの伯母が修道院長であるサンタ・カテリナ修道院を訪ねた。

そこで捨て子の赤児をひきとることにする。

ある朝、ポプラが一本伐られていることが地主の目にとまり犯人追求の手がのびた。

ミネクの仕業だとわかり、農場を追われることになったバティスティ一家が荷車をまとめていた。

この光景を見る者は誰もいなかった。

そして、人々は荷車が去ったあとを見守るのだった。

 

L Albero Degli Zoccoli Year 1978 Director Ermanno Olmi Palme d or of the  Cannes Film Festival of 1978 Stock Photo - Alamy

 

コメント:

 

北イタリアでの分益小作農場に暮らす4家族に起こるできごとを中心に、土に生きる人々の生に対する素朴な感情を描いた作品。

19世紀末の農夫の生活を題材としている。

 

イタリア・ネオレアリズモ(新写実主義)の流れをひいて貧しいものの暮らしに焦点を当て、いろいろな場面で本物の農夫や素人を起用した。

カンヌ国際映画祭のパルムドールやセザール賞の最優秀外国映画賞をはじめ14の賞を受賞した。

原作は東ロンバルディア方言を使用している。

 

どの家族も子沢山だ。

もうじき生まれてくる子どももいれば、婚礼を控えた美しい娘もいる。

幼い子どもたちは、皆とても愛らしい。

村人たちは、日々、何度も祈る。

厳しい自然の中で、土を耕し、家畜を育てて生きていくには、神の憐れみにすがらずにはいられない。 

倹しい暮らしの中心にいつも神がおられる。

「 貧しい者は幸いです。神の国はあなたがたのものだからです。」というキリストの言葉の通りだ。

しかし、善男善女の禁欲的な暮らしぶりを見せられるわけではなく、時に酔っ払い、時に激しく息子を罵る父親がいたりと、とても人間らしい。

4家族が一つの家族のように、親密でありながら、男たちはそれぞれ秘密を抱えていたりするのも面白い。

神の御心に従おうとしたがために、招いたかに思える結末は、あまりにも不条理で辛く感じる。

しかし、去り行く家族は、他の家族が自分たちのために心を痛めて祈りを捧げていることを、きっとわかっている。

そして、皆に祈られているということが、村を去らねばならない家族にとって、大きな慰めであり、励ましとなるだろう。

神と共に歩もうと懸命に生きる人々に注ぐ、エルマンノ・オルミ監督の温かな眼差しを感じる作品だ

 

農村の小作人たちの営みを静かに追ったドラマ。変革の波を感じながらも、一本の樹さえ自由にならない境遇を訴えている。

信仰心の厚い映画でもあり、絶えず流れる鐘の音とバッハの音楽が雄弁である。

 

3時間余に及ぶ長編の田園風景の映像は、既視感があって、懐かしい感じがする。

 

本作の監督をつとめたエルマンノ・オルミは、1931年7月24日、イタリア・ロンバルディア州ベルガモ県トレヴィーリオに生まれる。

1953年、22歳で映画監督としてデビューし、5年間でドキュメンタリーや短編を20本以上製作した。

1959年、初の長編『Il tempo si è fermato』を発表。

1961年、長編2作目の『定職』が同年のヴェネツィア国際映画祭でイタリア批評家賞など3つの賞を受賞。

英国映画協会サザーランド杯も受賞し、翌1962年のダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞では監督賞を受賞した。

1963年に発表した長編3作目の『婚約者たち』は、第16回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品され、国際カトリック映画事務局賞を受賞。

同作はフランスの同世代の映画監督ジャン=リュック・ゴダールが映画批評誌「カイエ・デュ・シネマ」誌上に発表した1964年のベストテンで、アルフレッド・ヒッチコックやハワード・ホークスの新作を抑えて第1位に推した。1965年には2年前に死去したローマ教皇ヨハネ23世の自伝を映画化した『E venne un uomo』を発表した。

 

1978年、ベルガモ地方の農民たちの生活をドキュメンタリー風に描いた本作『木靴の樹』を発表。

同年の第31回カンヌ国際映画祭でパルム・ドールとエキュメニカル審査員賞を受賞し、翌1979年にもセザール賞の外国映画賞、ナストロ・ダルジェント賞の最優秀作品監督賞、原作賞、脚本賞、撮影賞の4賞を受賞した。

同作は1979年に日本でも劇場公開され、伊丹十三をはじめ多くのファンを獲得した。

 

 

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