「細雪(1959)」
1959年1月14日公開。
名作映画・細雪の第2作目。
原作:谷崎潤一郎「細雪」
脚本:八住利雄
監督:島耕二
キャスト:
- 鶴子:轟夕起子
- 幸子:京マチ子
- 雪子:山本富士子
- 妙子:叶順子
- 辰雄:信欣三
- 貞之助:山茶花究
- 奥畑:川崎敬三
- 板倉:根上淳
- 橋本:菅原謙二
- 野村:船越英二
- 奥畑のばあや:浦辺粂子
- 玉置校長:三宅邦子
- 三好:北原義郎
- 陣場氏:春本富士夫
- 陣場夫人:村田知英子
- おさく:瀧花久子
- 光子:川上康子
- お春:藤田佳子
- チャイカのマダム:穂高のり子
あらすじ:
藤岡家は大阪の船場の旧家だった。
鶴子(轟夕起子)・幸子(京マチ子)・雪子(山本富士子)・妙子(叶順子)の四女があった。
鶴子の婿養子・銀行員の辰雄(信欣三)が家督をゆずられたのち、父は死んだ。
借金が残っていた。
家はその跡埋めに他人の手に渡った。
--次女の幸子は婿養子に計理士の貞之助(山茶花究)を迎え、芦屋に分家している。
三女の雪子はそろそろ婚期を逸しかけていて、本家と芦屋の姉の家を行ったり来たりして暮している。
おとなしそうだが、芯は強い。
心にきめた相手を事故で失った傷手がまだいえぬようだ。
末娘の妙子は雪子と正反対の行動的な近代娘だ。
二十歳の頃、船場の宝石商のぼんぼん・奥畑(川崎敬三)と駈け落ちした。
幸子の看視でアパートに住む。
近頃、姉の目をかすめて奥畑と会っている。
彼は店の品物を持ち出して、彼女に貢いでいる。
--鶴子が夫の転任で東京へ移ることになった。
妙子が人形展覧会を開き、奥畑が板倉(根上淳)というカメラマンを連れてきた。
彼はアメリカで苦労して写真を勉強した男だ。
雪子に、関西電車の社長の従弟・野村(船越英二)との縁談が起きた。
見合いはしたが、雪子は断り、東京の兄の家へ去った。
妙子は板倉の裸一貫から叩きあげた魅力にひかれていった。
奥畑が嫉妬し、板倉愛用のカメラを叩きこわしたが、板倉は昔の主人にさからわなかった。
妙子は板倉と結ばれて本家の預っている父の残した婚礼支度金を、洋裁店を開く資金にしたかった。
しかし、一方では、奥畑をなだめ、指輪をせしめたりする。
それを板倉からさとされ、彼にすがって女の本当の幸せをつかもうと決意した。
支度金について本家から返事は来なかった。
台風の夜、上京した妙子は雪子に結婚の決意を打ち明け、励まされた。
板倉危篤の報せがきた。
即刻、妙子は帰阪した。
病人は急性中耳炎から脱疽になった。
手術後の少康も束の間、板倉は死んだ。
--雪子は製薬会社の重役・橋寺とまた見合いした。
彼が断ってきた。
理由は妙子のことだ。
板倉が死んでから生活が乱れ、柄のわるい所へ出入りしていたのだ。
奥畑が勘当されると、妙子は彼を見限った。
彼の母が息子の貢物を取りかえしにきた。
妙子にはバーテンの三好(北原義郎)という男がいた。
彼の子をみごもった。
妙子は死産した。
雪子が東京から来て、徹夜で看病した。
雪子は妙子の寝顔を見ているうち彼女のしたことを何でも許せる気になった。
雪子はまた京都の旧家の息子と見合いする。
今度は雪子が気に入り、縁がきまった。
妙子は誠実な三好と結婚し一緒に苦労して行くことを、姉たち全部に祝福された。
本家の鶴子までが東京の生活で、家柄も財産も藤岡家にないことを悟ったのだ。
妙子は姉たちにひき会わせるため三好を呼びに駅へ向かった。
その肩にささめ雪が降りかかった。
コメント:
「細雪」の第2作目である。
大映で製作・公開され、島耕二が監督を務めた。
脚本の八住利雄と鶴子役の轟夕起子、婆や役の浦辺粂子は第1作の東宝製作の1950年版に引き続いての参加(轟は幸子役からシフト)である。
公開時のキャッチコピーは、「三大文芸賞に輝く文豪谷崎の不朽の名作を、最高最適の配役で描く文芸巨篇!」である。
東宝作品は嵐山がメインだが、本作は阪急神戸線がメインになっている。
東宝が作った第1作に負けないものを作るぞという大映の気合が感じられるキャスティングになっている。
京マチ子、山本富士子、三宅邦子、叶順子という女優陣、信欣三、山茶花究、川崎敬三、根上淳、菅原謙二、船越英二という男優陣は、なかなかの顔ぶれである。
中でも、京マチ子と山本富士子の華やかさにうっとり。
着物も仕草も何もかも美しく、雅な感じ。
終盤の雪子と妙子が部屋で話すシーンの緑と赤のコントラストにもしびれる。
日本映画の良さがしっかりと迫ってくる、相当レベルの高い作品になっている。
この映画は、レンタルも動画配信も見当たらない。
DVDが販売されている: