イタリア映画 「セブンビューティーズ」 ナポリのチンピラと7人の妹たちの激しい生き様を描く! | 人生・嵐も晴れもあり!

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「セブンビューティーズ」

(原題:Pasqualino Settebellezze

 

Seven Beauties | Austin Film Society

 

「セブンビューティーズ」 プレビュー

 

1975年5月4日公開。

女流監督・リナ・ウェルトミューラーの代表作。

 

監督・脚本:リナ・ウェルトミューラー

 

キャスト:

パスカリーノ:ジャンカルロ・ジャンニーニ

老人:フェルナンド・レイ

女所長:シャーリー・ストーラー

フランチェスコ:P・ディ・オリオ

清純な娘:F・マルチアーノ

 

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あらすじ:

第二次大戦勃発直前のナポリ。

家内工業主であるパスカリーノ(ジャンカルロ・ジャンニーニ)は、一方で、ポマードで髪をテカテカに光らせて街をカッポするチンピラやくざ同然の男だ。

彼は、場末の劇場でストリップまがいのダンスを踊る醜い容姿の妹を見て愕然となった。

39歳にもなって恥ずかしげもなく舞台に栖すとは……。

彼には、この妹をはじめとする7人の姉妹がおり、母親を含めた家族の面倒を見ることが一つの義務のようになっていた。

ところが、ある日、淫売宿へ女を買いに行き、そこで口紅を真っ赤につけた長女を発見。

問つめると、彼女は「愛する婚約者のため」だと白状した。

しかし、妹がその婚約者とやらに騙されていることを知ったパスカリーノは、その夜、カッとなってその男を殺し、その死体をバラバラに切り刻んで捨ててしまった。

彼は捕らえられ、裁判の結果、肉親を思うあまりの狂気の犯行と見なされ、精神病院に送られた。

病院では模範囚。

院内の出歩きも自由だったが、つい自制心を失って、色情狂の女の誘惑にのってしまい、刑務所に逆戻りするハメになった。

戦争の嵐がヨーロッパ全土をゆるがせ始めた頃で、囚人は兵役を望めば刑期が取り消されることになった。

当然のことのようにパスカリーノは兵役を克服し、前線行きとなった。

軍隊は刑務所よりひどかった。

輸送列車からスキを見て脱走した彼は、ひょんなことから、ナチスの強制収容所へと連れていかれる。

そこでは、毎日数百人もの人が、殺されていた。

しかしパスカリーノは、何としても生きのびたかった。

「愛する家族のために」-。

幸い、その収容所長は女だった。

女性に関しては自信のあるパスカリーノは、何とか誘惑して脱出しようと試みる。

しかし、そこの女所長(シャーリー・ストーラー)は、まるでブタのような醜い女で、パスカリーノがいくら愛嬌をふりまいても反応がない。

やっと彼女の部屋に招かれるまでは自分を印象づけることに成功した彼は、彼女の部屋に入り、必死で誘惑しようとする。

遂に服をぬがせることに成功するが、女所長は、そんなパスカリーノをすっかり軽蔑していた。

やがて、収容所の中のカポに取りたてられることになったパスカリーノは、初仕事として、親友のフランチェスコ(P・ディ・オリオ)を含む6人の仲間を処刑することを強いられる。

同房の老人(フェルナンド・レイ)もその中に入っていた。

殺さなければ殺されると思った彼は、目をつぶって彼らを殺す。

老人は、屈辱のうちに死ぬよりは人間として死にたいと、自殺してしまう。

悪夢の時がやがて過ぎ終戦がやってきた。

生き残ったパスカリーノは、やっとの思いで故郷に戻って来た。

彼を迎える7人の妹たちは、いずれも進駐軍相手のパンパンになっていた。

かつて心を寄せた清純な娘(F・マルチアーノ)までが娼婦になっていた……。

だが、彼はためらわずに、彼女にプロポーズした。

いつしか白くなった髪にポマードをつけるパスカリーノの姿があった。

 

Seven Beauties - La Cinémathèque québécoise

 

コメント:

 

「流されて・・・」(1974)を監督した女流監督・リナ・ウェルトミューラーの代表作である。

 

この映画の原題「Pasqualino Settebellezze」とは、「パスカリーノの7人の美女たち」という意味。

日本語タイトルの「セブンビューティーズ」とは、主人公・パスカリーノの妹たち7人のことなのだ。

7人の妹たちは、彼を迎えた時、全員が進駐軍相手のパンパンになっていたことを表している。

笑わせるネーミングだ。

 

家内工業を営む家族思いのナポリのチンピラやくざが第二次大戦の狂気の渦にまき込まれ、やがて故郷に帰ってゆくまでの生きざまを描く。

 

 

 

 

いささか不謹慎ともいえる内容だが、収容所での強烈な表現やそれに対応していく様子はかなりインパクトが強いものとなっている。

収容所所長の部屋での所長とのやり取りなどは、かなりの緊張感と戦争の異常性が表現されていて、戦争の愚かさを訴えている。

 

パスカリーノの行為を非人道的なものと貶め、自ら命を絶つ行為を称賛するのはたやすいが、パスカリーノの行為を責めることはできないだろう。

見る者の心に楔を打ち込むような映画だ。

出演者では、やはり主役を演じたジャンカルロ・ジャンニーニと、豚のような女所長を演じたシャーリー・ストーラーが、存在感抜群だ。

微妙な表情も含め、この物語の残酷性がよく表現している。

 

とにかく、女の監督がこういう作品を作ると、男以上に徹底して男女のもつれを描く傾向がある。

本作もぶっ飛んでいる。