イタリア映画 「父の名において」日本未公開のベロッキオ監督による異色作! | 人生・嵐も晴れもあり!

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「父の名において」

(原題:Nel nome del padre)

 

Nel nome del padre (Film 1972): trama, cast, foto, news - Movieplayer.it

 

 

「父の名において」 予告編

 

 

1972年イタリア公開。

日本未公開。

教会の寄宿学校を舞台にした独裁的学生を描く異色作。

『ポケットの中の握り拳』で世に出た鬼才・ベロッキオ監督の作品。

 

監督・脚本:マルコ・ベロッキオ

 

キャスト:

イヴ・ベネトン:アンジェロ・トランセウンティ 

レナート・スカルパ:コラッツァ神父、副学長 

ラウラ・ベッティ:フランコの母親 

ルー・カステル:サルヴァトーレ 

ピエロ・ヴィダ:ベスティアス

 

Nel nome del padre (film 1972) - Wikipedia

 

あらすじ:

1958年、ピウス12世の死の年。

アンジェロ・トランセウンティは大学に入学した。

彼はハンサムで型破りで、スーパーマンの理論家だ。

彼は当初から、副学長のコラッツァ神父に反して、研究所の古い規則に嫌悪感を示していた。

若い反逆者のカリスマ性が仲間たちを魅了し、そのグループとともに、信仰と神への畏れを嘲笑する冒涜的でグロテスクなショーを企画する。

その後、参加者たち――キリスト教の慈善活動を装った極度の搾取に苦しむ疎外された人々――のうちの一人が絶望的な自殺をした後、彼らは反乱を起こした。

反乱の知らせを聞いた学生たちも反乱を決意する。

しかし、使用人たちと同盟を結ぼうとすると、少年たちは自分たちの社会的地位に嫉妬し、参加を拒否する。

一方、使用人たちのストライキも終わり、反逆者のリーダーであるサルヴァトーレは解雇される。

フィナーレでは、アンジェロと狂気の用務員ディノが霊的放浪の対象となっている「奇跡の梨の木」に近づき、「反科学的なものはすべて排除しなければならない」と言ってその木を切り倒す。

 

Nel nome del padre: la recensione del film di Marco Bellocchio | iO Donna

 

コメント:

 

タイトルの「父の名において」は、キリスト教でよく使われる「父と子と聖霊の(み)名において」の出だしの部分。

英語で言うと「in the name of the Father, and of the Son, and of the Holy Spirit」になる。

 

ブルジョワの師弟が集められた教会経営の寄宿学校を舞台に、一人の独裁者的な学生の悪魔的な言動と反抗を描いた寓話的作品である。

 

反動的な法王として知られるピオ12世が死去した1958年が物語の背景にある。

60年代後半の学生運動の高まりが、作品に投影されている。

 

とにかく、鬼才・ベロッキオ監督の凄まじいまでの反体制派的な作風が本作でも観る者を驚かせる。

ベロッキオは、この後もどんどん傑作を生みだして行くのだ。

この人は、1939年11月9日、北イタリアのピアチェンツァ県ボッビオで生まれた。

ミラノで哲学を学んでいたが、映画に転向。

1959年からローマ国立映画実験センターで映画製作を学んだ。

1965年、『ポケットの中の握り拳』で映画監督として鮮烈デビュー。

1967年の『中国は近い』は第28回ヴェネツィア国際映画祭で審査員特別賞と国際映画批評家連盟賞を受賞した。

1968年にはイタリア共産党に入党している。

その後、精神科医のマッシモ・ファジョーリと知り合い、作風を精神分析的なものへと変貌させる。

マルーシュカ・デートメルスを起用してレイモン・ラディゲの同名小説を大胆な解釈で映画化した『肉体の悪魔』(1986年)やベアトリス・ダルが自身を魔女と称す女性を演じた『サバス』(1988年)、日常的な会話を止め、舞台言語だけを話す男を描いた『蝶の夢』(1994年)がその代表作である。

また、1991年には『La Condanna』が第41回ベルリン国際映画祭で審査員グランプリを受賞している。

2000年代からは作風を再び社会的・政治的なものに戻し、1978年に赤い旅団が起こしたアルド・モーロ元首相の誘拐殺人事件を扱った『夜よ、こんにちは』(2003年)やベニート・ムッソリーニの最初の妻イーダ・ダルセルを描いた『愛の勝利を ムッソリーニを愛した女』(2009年)といった作品を発表し、いずれも高い評価を得ている。

2011年、第68回ヴェネツィア国際映画祭で栄誉金獅子賞を受賞。

2012年、尊厳死について扱った『眠れる美女』を発表。

同作は第69回ヴェネツィア国際映画祭や第25回東京国際映画祭で上映された。

2015年、『私の血に流れる血』を発表し、同年、第68回ロカルノ国際映画祭にて名誉豹賞を受賞した。

2016年、ジャーナリストのマッシモ・グラメッリーニによる自伝的小説を原作とする『甘き人生』を発表。

同作は第69回カンヌ国際映画祭監督週間のオープニング作品として上映される。

2019年、実在のマフィアであるトンマーゾ・ブシェッタの生涯を描く『シチリアーノ 裏切りの美学』が第72回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品される。

2022年、再びアルド・モーロ誘拐殺人事件を題材とした『夜のロケーション』を発表。同作は6つのエピソードからなるミニシリーズとして製作されたが、イタリアでは前後編からなる長編映画として劇場でも公開された。

2023年、ユダヤ人の両親のもとに生まれながら6歳で異端審問所警察によって連れ去られ、カトリック教徒として育てられて長じて司祭となったエドガルド・モルターラの生涯を題材とした『エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命』を発表。同作は第76回カンヌ国際映画祭コンペティションに出品される。

さらに第36回東京国際映画祭でも上映された。

 

ベロッキオ監督は、現在84歳だが、いまだ現役の映画監督である。

 

本作は、日本未公開で、日本語の映画解説サイトにも全く記載されていない。

ソフト化もされていないので、日本で観ることは不可能だと思われる。

イタリアのウェブサイトでDVDが販売されている: