「警視の告白」
(原題:Confessione di un commissario di polizia al procuratore della repubblica)
1971年11月11日公開。
イタリアの権力組織に伸びるマフィアの恐怖を描いたスリラー。
映画公開後、モデルとなった検事と検事補が暗殺される!
脚本:ダミアーノ・ダミアーニ、 サルバトーレ・ラウリーニ
監督:ダミアーノ・ダミアーニ
キャスト:
警察署長ジャコモ・ボナビア:マーティン・バルサム
妹セレナ:M・トーロ
親友リツォ:G・プレート
マフィアの大物フェルジナンド・ロムンノ:アルトゥーロ・ドミニーチ
殺し屋リ・プーマ:L・ロルカス
長官マルタ:C・ゴーラ
若い検事補トレイニ:フランコ・ネロ
あらすじ:
マフィアの大物フェルジナンド・ロムンノ(A・ドミニーチ)は政財界の要人に深く食い入り、これを意のままに操っていた。
警察署長ジャコモ・ボナビア(M・バルサム)は、親友リツォ(G・プレート)をロムンノに惨殺された過去をもち、以来、復讐を誓ったボナビアは、警官になると数回にわたりロムンノを逮捕したが、強力な組織をたのむロムンノは、いささかの傷手も負わなかった。執念のかたまりとなってロムンノを追うボナビアは、妹セレナ(M・トーロ)を凌辱された怨みをもち、いまでは精神に錯乱をきたしている殺し屋リ・プーマ(L・ロルカス)の犯罪者心理につけいり、ロムンノ殺害のための傀儡に仕たてあげ、収容所から解き放した。あやつられるが如くロムンノの事務所におどりこんだプーマは、三人の殺し屋の銃弾を浴びて倒れた。既にロムンノは姿を消していたのである。長官マルタ(C・ゴーラ)が差し向けた若い検事補トレイニ(F・ネロ)は、正義感をたぎらせて捜査に踏み入った。ベテラン警察署長と若き検事補がお互いに深い信頼感を抱き始めた頃、ロムンノはボナビア失墜を狙って策をめぐらした。トレイニは、このロムンノの画策にひっかかり、ボナビアの仕組まれた犯罪証拠を信じこみ、ボナビアに逮捕状をつきつけた。解雇されたボナビアは、檻から解き放たれた獣のように猛り狂い、街はずれの船着場でロムンノを発見するや、積もり積った怨念を打ち払おうとするように無数の弾丸を全身にぶち込んだ。凄まじい執念のこもった敢行を目にして、トレイニは、再びボナビアへの信頼を取り戻した。開廷されたボナビアの裁判に、重要参考人として召喚されたセレナが絞殺死体となって発見された。獄中のボナビアを訪れたトレイニは、話が進むうち、驚くべき事実につきあたった。セレナ殺害の夜セレナからトレイニに電話があった時、最初に電話を受けたのはマルタ長官だったのだ。熱気したトレイニはマルタ長官と対峙した。しかし自信に満ちたマルタ長官は、いささかの動揺も示さなかった。トレイニに冷笑を浴びせてマルタ長官は裕々と引きあげた。ちょうどその頃獄中のボナビアに、同房の二人の囚人の異様な目がそそがれ、廊下を移動しようとしたボナビアは突然、鋭い刃物で腹をえぐられた。
コメント:
マフィア幹部の摘発を狙う警視が、逆に彼らの策謀に引っかかり、警察を解雇される。
事件に疑問を抱いた検事捕は、調査をしていくうち、当局の上層部にまで食い込むマフィアの支配力をまざまざと見せつけられる。
イタリアの権力組織に伸びるマフィアの恐怖を描いたスリラー。
本作の公開後、フランコ・ネロが演じた検事補のモデルとされるシチリアの首席検事と検事補が暗殺されるという事件が勃発し、大きな論議を呼んだという。
この頃のイタリアは怖い国だった。
イタリアの社会に巣食うマフィアの底知れぬ恐ろしさ。
司法当局や警察までもマフィアに操られるイタリアの社会機構に深く切り込んだ作品である。
マフィアの大物、ロムンノ(アルトゥーロ・ドミニーチ)。
ロムソンに親友を惨殺され復讐を誓う警察署長、ボナビア(マーティン・バルサム)。
正義感あふれる若き検事補、トレイニ(フランコ・ネロ)。
精神病棟の長い廊下を、職員を引き連れて歩く警察署長ボナビア。たどり着いた檻の中には、精神に錯乱をきたした殺し屋リ・プーマ(L・ロルカス)が収容されている。
リ・プーマは妹セレナ(マリル・トーロ)をロムンノに犯された怨みを持っていた。
ボナビア署長はリ・プーマを収容所から出すよう、強引に職員に命令する。
2日後、出所したリ・プーマは、マシンガンを持ってロムンノのオフィスを襲う。
しかし、そこにロムンノの姿はなく、待ち伏せしていた3人の男たちと撃ち合って、リ・プーマを含む全員が死亡してしまう。
ロムンノは、リ・プーマ出所の情報をいち早くつかみ、別の場所に隠れていた。
トレイニ検事補(フランコ・ネロ)は、ロムンノに会い事情を聴くが、巨大な権力を味方につけているロムンノに怖いものはなかった。
トレイニは、ボナビアがロムンノに復讐するため、意図的にリ・プーマを出所させたと疑い、ボナビアを追求する。
ボナビアは親友を惨殺したロムンノを3度逮捕したが、3度とも権力に守られたロムンノは釈放されていた。
人里離れた山の上にそれぞれの車で乗り付け、お互いのやり方を非難し合い、弱点を指摘しながら“正義”についての議論を闘わせるボナビア(マーティン・バルサム)とトレイニ(フランコ・ネロ)。
凝ったカメラワークと相まって、緊迫感あふれる見事なシーンだ。
最後は、とうとう警察署長のボナビアは法を破って、自らロムンノに復讐の手を下す。
刑務所に投獄されたら、自分の命が危ないこともわかっていた。
マフィアは刑務所の中にまで殺し屋を送り込み、ボナビアはナイフで刺し殺される。
ボナビアの暗殺に打ちのめされたトライーニは、上司である検察庁長官までもマフィアに懐柔されていることを知る。
権力の底なしの腐敗を容赦なく叩きつけてくる作品だ。
しかし、トライーニが、検察庁長官に闘いを挑むラストシーンには一筋の光が感じられる。
何と言っても、ボナビア署長役のマーティン・バルサムの演技が圧倒的!
若手検事補のフランコ・ネロは、『鉄人長官』のジェンマのような風体で、マーティン・バルサムを向こうに回してなかなかの熱演!
フランコ・ネロは、マカロニ・ウェスタンで有名になった男優。
北イタリアのサン・プロスペロ出身。
父親は警察官で、ミラノの大学で経済学を勉強しているときに、写真のモデルとしてスカウトされた。
1964年に映画デビューし、マカロニ・ウェスタンなど多くの作品で活躍した。
本名のフランチェスコ・スパラネロではアメリカ圏で発音しにくいという理由から短くしてフランコ・ネロと芸名を名乗るようになったという。
主な作品は以下の通り:
『続・荒野の用心棒』
『殺しのテクニック』
『ガンマン無頼』
『天地創造』
『キャメロット』
『マフィア』
『豹/ジャガー』
『ネレトバの戦い』
『哀しみのトリスターナ』
『ガンマン大連合』
『ヒッチハイク』
『ナバロンの嵐』
『燃えよNINJA』
『ダイ・ハード2』
『ジャンゴ 繋がれざる者』
音楽も重厚でありながらテンポ感と躍動感があり、堂々とした作品。
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