「サテリコン」
(原題:Fellini Satyricon)
1969年9月3日公開。
イタリア・フランス合作映画。
古代ローマの爛熟と退廃を描いた、かなりの異色作。
脚本:フェデリコ・フェリーニ、ベルナルディーノ・ザッポーニ、ブルネッロ・ロンディ
監督:フェデリコ・フェリーニ
音楽:ニーノ・ロータ
キャスト:
エンコルピオ:マーチン・ポター
アシルト:ハイラム・ケラー
ジトン:マックス・ボーン
トリマルキオ:マリオ・ロマニョーリ
フォルチュナタ:M・ノエル
フォルチュナタ:M・ノエル
リーカ:A・キュニー
若き皇帝:T・ロバート
トリファエナ:キャプシーヌ
あらすじ:
紀元前のローマ。
世は頽廃の極に達し、人々はただ快楽を求め、快楽に溺れていた。
学生のエンコルピオ(M・ポター)とアシルト(H・ケラー)も、獣のように快楽を求め、冒険に身を投げ出していた。
二人は友人であり、美少年ジトン(M・ボーン)をめぐっての恋仇でもあった。
そして、アシルトにジトンを奪われ絶望したエンコルピオは、成金の解放奴隷トリマルキオ(M・ロマニョーリ)が催す酒池肉林の宴会にでかけた。
そこには、このローマ市民の頽廃の代表的な光景が、ぶかっこうに展開され、トリマルキオの淫蕩な妻フォルチュナタ(M・ノエル)も、女友達と戯れていた。
その狂乱の中からエンコルピオは、老詩人フォルチュナタ(M・ノエル)を救い、二人は知人となった。
翌朝、エンコルピオは、アシルトやジトンとともに、少年狩りにひっかかり、貴族リーカ(A・キュニー)の軍船に運ばれた。
リーカはエンコルピオを愛し、彼と結婚の儀式をあげた。
この頃、若き皇帝(T・ロバート)が暗殺され、粛清軍隊が貴族を襲い、リーカも殺された。
それを彼の寵姫トリファエナ(キャプシーヌ)は、冷然とみていた。
エンコルピオとアシルトはやがて釈放された。
爛熟したローマは、ようやくその崩壊のきしみをはじめたが、二人の学生には関係なかった。
彼等は、色情狂の夫人を慰め、金儲けの為、生神様を誘拐したりした。
そうした時、エンコルピオは突然闘技に狩り出され、命は助かったものの、精魂つきた彼は性的不能に陥ってしまった。
彼を侮蔑の淵から救い出したのは、アシルトと、今は富を握ったエモルポであった。
女魔術師エノテアによって、エンコルピオは回復したが、その時には、アシルトは盗賊に襲われ、殺されていた。
エジブトへ船出するというエモルポをエンコルピオが訪れると彼もまた死んでしまい、遺書には「財産相続を願うものは、我が屍肉を食え」と書いてあった。
若い船長と共に船出しながら、人間が人間の肉をくらう異様な光景を見ていたエンコルピオは、静かに笑い出し、やがてそれは、すべてを否と諾の呪縛から解き放つような、壮大な笑いに変わっていった。
コメント:
暴君ネロの寵臣ペトロニウスが描いた爛熟、頽廃のローマを、現代との酷似状況としてとらえた壮大な風刺劇。
古代ローマの紀元1世紀ごろの政治家で詩人でもあったペトロニウスの著した『サテュリコン』というピカレスク小説がある。
これを、フェデリコ・フェリーニが翻案して映画化した作品である。
原題の「Fellini Satyricon」とは、「フェリーニのサテュリコン」という意味。
ペトロニウスの小説『サテュリコン』を原作として、フェリーニ風に翻案し、古代ローマの退廃した人々を描いた作品であることを表している。
日本語タイトルの「サテリコン」では、発音も違うし、意味が全然伝わらない。
映画の内容は、古代ローマが衰退して行く様子を、性愛の異常さを通して描くというストーリーになっている。
パゾリーニの変態映画に並ぶような、同性愛や少年愛や人肉食などが描かれている、かなりぶっ飛んだ作品である。
皇帝ネロ統治時代の古代ローマを舞台としていることから、専門家の間ではそれなりに評価されたようだ。
第43回アカデミー賞で監督賞に、第27回ゴールデングローブ賞で外国語映画賞にそれぞれノミネートされた。
第30回ヴェネツィア国際映画祭では最優秀イタリア映画賞を受賞している。
この映画に出て来る「解放奴隷のトリマルキオ」とはどんな人間なのか。
この人物は古代ローマ時代に実在したとされている。
古代ローマにおいては、奴隷が「正当かつ合法的な解放」によってローマ市民となることができたという。
おなじく多くの奴隷が存在した古代ギリシアのアテネでは、解放された奴隷は在留外人となるだけで、市民権は認められなかったから、ローマの市民社会の最大の特徴と言うことができる。
帝政成立後、100年ほど経った頃から、解放奴隷の中にも富裕な財産をもつものが現れた。
解放奴隷に対してはもとの奴隷主が解放後も一定の保護権を持っていたが、富裕な財産をもつ解放奴隷は旧奴隷主の保護から離れて、中には傍若無人に振る舞うものも現れ、元老院議員たちを憤慨させることがあった。
帝政ローマ時代にペトロニウスという人が書いたと言われている『サテュリコン』は、そのような富裕な解放奴隷が登場する一種の悪漢(ピカレスク)小説で、帝政初期のローマの風俗が描かれており、その中の一つに年老いた解放奴隷トリマルキオの語る成功談がある。
解放奴隷は元老院議員や騎士身分にはなれず、せいぜい下級官吏止まりだったから、もっぱら商売や投資で財産を殖やしたようだ。
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