イタリア映画 「真実の瞬間(1965)」 スペインの闘牛士の栄光と惨めな最期! | 人生・嵐も晴れもあり!

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「真実の瞬間(1965)」

(原題:Il Momento Della Verita

 

The Moment of Truth (1965) - IMDb

 

「真実の瞬間(1965)」 プレビュー

 

1965年公開。

スペインの闘牛士を描く社会派ドラマ。

 

監督・脚本:フランチェスコ・ロージ

 

キャスト:

ミゲル:M・M・ミゲラン

ペドルーチョ:P・B・ペドルーチョ

ドン・ホセ:J・G・セビラーノ

 

IL MOMENTO DELLA VERITA - 1965Dir: FRANCESCO ROSSICast: ANGELO  RUZZOLIMIGUEL MATEO MIGUELINITALIAFB. 18 x 26 INCHES. 46 x 67 CM.PLEASE  CHECK THE PICTURE FOR CONDITION: (1965)  Art / Print / Poster | ORIGINAL LOBBY CARD

 

あらすじ:

復活祭を数日後に控えた聖週間の行事にスペインの町々は浮かれ立っていた。

大寺院のまわりは群衆でうずまり、通りに面した家々の戸口は花で飾られ、ベランダには人が鈴なりであった。

三月末に行われるこの行事は、闘牛シーズンの始まりを告げる祭りでもあった。

真紅なけしの花とわずかな緑の樹木以外はすべて黄褐色という南部農村地帯は大地主が権力をふるい、農民の生活はみじめだった。

貧農の息子たちはそんな生活を嫌って職と夢を求めて北部の都市に出ていった。

ミゲル(M・M・ミゲラン)もその一人で、バルセロナに出て来たものの、フランコ独裁政権下の都市労働者の生活は想像以上に悪く、絶えず失業の恐怖におびやかされていた。

だから彼はてっとりばやく金が儲かる仕事の闘牛士になろうと決心し、養成所の門をたたいた。

老闘牛士ペドルーチョ(P・B・ペドルーチョ)はミゲルの才能を認め熱心に稽古をつけた。

彼はめきめき腕を上げ、ついにマドリッドの闘牛場でその腕前を見せる時が来た。

スペイン一の興行師ドン・ホセ(J・G・セビラーノ)も観客の中にいた。

ミゲルは余裕を持って猛り狂う黒牛を倒した。そして夢にまで見た正式の闘牛士として認められたのだった。

それからのミゲルの生活は華美をきわめた。

しかし強行スケジュールによる体の疲労がひどく、ある雨の日の試合で初めて敗北を喫した。

恐怖に襲われた彼はついに引退を考えたが、興行師はミゲルの傷より契約の破棄を心配し、彼に試合を強行させた。

また旅が始まった。

しかし自分の意志通りに行かない闘牛士生活に堪えがたい重味を感じはじめていた彼は、ある日、彼の技倆をもってすれば当然さけられるはずの牛の一撃で、その短かい一生を終えたのだった。

 

LE MOMENT DE VÉRITÉ (IL MOMENTO DELLA VERITA)" EL MOMENTO DE LA VERDAD /  Réalisé par Francesco ROSI en 1965 avec Miguel MATEO "MIGUELIN" / Affiche  originale espagnole entoilée / Offset JANO /

 

コメント:

 

スペインの闘牛士の若き人生の末路を描く社会派ドラマ。

ネオレアリズモの継承者・フランチェスコ・ロージ監督の作品である。

闘牛士の栄光と悲劇を、それを取り巻く人間たちも含め、エモ-ショナルな要素を廃しドキュメント風に醒めた目で追っている。

 

青年になるまでスペインの片田舎で育ったミゲルは、父のように老いるまで農業をしながらこの土地で暮らすことに耐えられず、一人バルセロナに行って職を探す。

しかし、自分が思ったとおりの仕事などあるわけはなく、日雇い労働者となって毎日をしのぐ。
ある時、闘牛士になって人気が出ると途方もないカネが稼げることを知ったミゲルは、町の闘牛士教室に通い始める。

そこで思いもかけずミゲルは闘牛士としての才覚を現わす。

デビューしたミゲルはその華麗なムレータ(赤い布)や剣のさばきによって牛を倒し、またたくまに人気闘牛士にのし上がる。

大物プロデューサーのドン・ホセはミゲルと契約を交わし、次々と過密なスケジュールを入れていく。

ミゲルは多くの闘技をこなすうちに、夜寝ている時などにふっと力が抜けて恐怖心が自分を襲うようになる。

それでもドン・ホセに急き立てられようにして試合をこなし続ける。

だがついに、闘技の最中にバランスを失い牛に胴を付き上げられ、病院に担ぎ込まれるがやがて息を引き取る。

ストーリーは闘牛士ミゲルに焦点を当てて単線的に進んでいく。

しかし、もう片方には、町の復活祭で通りを練り歩く人々や闘牛場の大観衆の熱狂、熱気などのマスを配し、孤独な闘牛士の若者との対比を巧みに表現している。

 

闘牛の迫真的な場面には圧倒される。

あれだけ闘牛をエキサイティングにしかもリアルで残酷に活写した映画は珍しい。

 

 

「真実の瞬間」とは、闘牛士が最後の止めを刺すために剣を牛に向かって構えるその一瞬である。

闘牛士の心技体が凝縮するその瞬間だからこそ、こういう言い方がふさわしいのだろう。

 

闘牛の名士となって幸福の絶頂を極めた若者のみじめな最期が悲しい。

貧しい農村と華やかな闘牛の世界を対比させた、社会派監督・フランチェスコ・ロージの傑作である。

 

この映画は、K-PLUSでレンタル可能: