「新・悪名」
1962年6月3日公開。
悪名シリーズ第3作。
朝吉の新たな乾分・清次が登場。
原作:今東光
脚本：依田義賢
監督：森一生
出演者：
勝新太郎 、 田宮二郎 、 中村玉緒 、 浜田ゆう子 、 藤原礼子 、 万里昌代 、 須賀不二男 、 沢村宗之助 、 武智豊子
あらすじ：
復員してきた朝吉（勝新太郎）は一変した日本の姿に呆然となった。
河内では彼は戦死したことになっていて、女房のお絹（中村玉緒）は再婚していた。
がっかりの朝吉は、死んだモートルの貞（田宮二郎）の女房お照（藤原礼子）を訪ねた。
お照は大阪の闇市で大福餅を売っていた。
自分の身代りとなった貞を思って、朝吉は四国に貞の生家を訪れ、うらぶれはてた老母ふく（武智豊子）を伴って家へ帰って来た。
貞に代って孝行しようというのである。
或る夜、村で朝吉の歓迎宴が開かれた。
それに参加した月枝（浜田ゆう子）は進駐軍に暴行され姿を消した。
月枝は朝吉の幼友達・弥吉の妹で、弥吉は戦死していた。
朝吉は月枝を探しに大阪へおふくを伴って出かけた。
月枝は釜ケ崎でパンパンになっていた。
その元締は、清次（田宮二郎）という男で、情婦お雪（万里昌代）が采配を振っていた。
この清次は死んだ貞の弟であったが、そのガメツさかげんに朝吉も手を焼いた。
朝吉はしかたなく、昔のヤクザ気質をまるだしに月枝を清次の手から取り返した。
月枝は忽ち朝吉に惚れてしまった。
清次は外国人のボス・金子（沢村宗之助）から、闇市の土地の権利を買いとろうと金を貯めていた。
だが、金子は大淀組の勝（須賀不二男）と組んで闇市を乗っ取ろうとしていて、清次のことなど眼中になかった。
勝と金子はヤクザを使って闇市の強制立ち退きを図りはじめた。
だまされたと知った清次は、二連銃をもって殴り込むが、逆に監禁されてしまった。
これを知った朝吉は大淀組へ単身のりこんだ。
手榴弾をとり出す朝吉をみて、勝と金子は青くなった。
話はついた。
闇市は保障され、清次は朝吉によって救い出された。
清次は朝吉の乾分となったが、それは亡くなった貞そっくりの姿だった。
コメント：
前作でモートルの貞が殺され、朝吉が戦争に行ってしまい、一応シリーズが終了した形になっていた「悪名」だが、本作は新シリーズとなる。
本作では、戦争に行っていた朝吉が復員してくるが、既に戦死公報が届いていて、恋女房のお絹は別の男の女房となり子供までいる。
一から出直しの朝吉は、闇市で雑炊屋を始める。
朝吉の相棒として、貞の弟の清次が登場、これまた田宮二郎が粋に演じる。
闇市のオープンセットが見事だ。
その闇市の立ち退きを迫るやくざと、市場の住民（朝鮮人もいる）の味方となる朝吉との対決が最大のみどころ。
朝吉と清次の関係が最初は敵対、そして協力という風に変わり、物語もテンポよく進む。
最後には、朝吉と清次が兄弟分となって、次回作で大活躍することになる。
抑制は効いているが、どっしりとした森一生監督の演出は見事。
これまでの三作の中では一番面白い。
本作からモートルの貞の実弟、清次で再び田宮二郎が出演している。
これ以降、本シリーズは朝吉と清次の二人がコンビの「悪名」となっていく。
本作が制作されたのは１９６２年、日本映画界の一番のピークはこのあたりで、映画は庶民の最大の娯楽だった。
映画館は２本立て、２週間単位の興行でいわゆるプログラムピクチャーの最盛期。
本シリーズも今観ると、一応一話完結のようになってはいるが、まるで連続ＴＶドラマのような作りになっている。
朝吉に惚れるオカマのお銀（茶川一郎）が本作で初登場する。
これ以降も準レギュラーとしてたびたび登場するが、出てくるたびに嬉しくなってくるいいキャラだ。
この俳優は、テレビでも1960年代から長年に渡りさまざまなドラマに出演して人気を得た、オカマ俳優の草分け的存在だった。
序盤の故郷のシーンで歌われる河内音頭は、1961年に「鉄砲節河内音頭」で100万枚の大ヒットを記録した鉄砲光三郎（1929－2002）が出演して歌っている。
河内音頭は、大阪府の河内地域を発祥とする伝統的な河内地方の民謡で、大阪では河内地域以外でも盛んに盆踊りなどで踊られる。
その音頭をアレンジさせて、全国的に知られるようになったという。
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