「美男お小姓 人斬り彦斎」
1955年1月2日公開。
今東光原作の戦後初の映画。
幕末の志士・人斬り彦斎を描いた時代劇。
原作:今東光「人斬り彦斎」
脚本:八住利雄
監督:佐伯清
キャスト:
中村扇雀: | 河上彦斎 |
山根寿子: | 小雪 |
夏川静江: | 彦斎の母 |
龍崎一郎: | 佐々淳之助 |
南寿美子: | 淳之助の妹昌子 |
山形勲: | 前田伊右衛門 |
牧真介: | 南治郎 |
深水吉衛: | 河田佐久馬 |
植村進: | 潤間半六 |
名知宏: | 中井範五郎 |
高田稔: | 佐久間象山 |
北原隆: | 佐久間象山の息子・慶之助 |
山村聡: | 近藤勇 |
天草四郎: | 土方歳三 |
増田順二: | 沖田総司 |
あらすじ:
文久年間、細川藩の若侍・河上彦斎(中村扇雀)は人斬り彦斎として幕府側に恐れられる刺客であった。
祇園の芸者・小雪(山根寿子)は彼の許婚・昌子(南寿美子)に似ていたが、彦斎は人を斬った苦しみを小雪への愛情で慰めようとした。
彼は以前から佐久間象山(高田稔)を尊敬していたが、象山が公武合体論の立役者と目されるに至ると、先輩前田(山形勲)や小雪の制止も聞かず象山を斬った。
それ以来彼は悪夢に苦悩する身となった。
象山の息子・慶之助(北原隆)は仇討のため新選組に入隊したが、芸者・菊栄になじみ、仇討を忘れていた。
彦斎は長州の奇兵隊に加わって闘ったが、次第に自分の行為に悩み、象山の墓前にひれふし慶之助に斬られようとしたが、慶之助の不甲斐なさから斬られる事もなく、再び小雪との愛欲に溺れる。
ある日、彦斎は昌子の兄・佐々(龍崎一郎)と同行で三条大橋を通る時、新選組の近藤(山村聡)と土方(天草四郎)、沖田(増田順二)の三人に出会った。
凄じい殺気。
だがさすがの新選組も手が出ず、黙ってすれ違った。
然し新選組に狙われ、そのため小雪の体が危くなることを恐れ、彼は旅に出ようとした。
暁の加茂河原で、彦斎の鋭い居合い抜きの声が聞えた。そ
れは人斬り彦斎と恐れられた彼自身を斬りすてる声だった。
刀を河中に投げすてた彼の頬に涙が光っていた。
やがて徳川幕府は倒れ、勤王の志士に凱歌は上ったが、ひとり彦斎は誰にも知られず何処かへ姿を消した。
コメント:
原作は、今東光の『人斬り彦斎』(東京創元社)。
これは、実在した幕末の剣士・河上彦斎を描いた幕末の時代劇小説である。
河上彦斎(かわかみ げんさい)は、幕末から明治時代初期にかけての尊皇攘夷派の熊本藩士。
諱は玄明(はるあきら)。幕末の四大人斬りの一人とされる。
実際には、殺した大物は佐久間象山一人だったようだ。
だが、明治維新後も攘夷を強固に主張しつづけたため、藩と新政府に危険視され、38歳(満37歳)で斬首された。
興味深いのは、この映画の主人公である細川藩の若侍・河上彦斎が今も映画界では活躍しているということだ。
あの「るろうに剣心」の主人公、緋村剣心のモチーフモデルだという!
YouTubeに解説記事が掲載されている:
1955年公開のこの映画は、残念ながら動画が全く見つからない。
数年前に衛星劇場で上映されたようだが、その後は見当たらない。
「るろうに剣心」には、勝てないと思われたのかも。