「殺し」
(原題: La commare secca)
1962年9月19日公開。
ピエル・パオロ・パゾリーニの原案を当時21歳のベルトルッチが初監督した作品。
脚本:ベルナルド・ベルトルッチ、セルジオ・チッティ
監督:ベルナルド・ベルトルッチ
キャスト:
カンティッキア:フランチェスコ・ルイウ
カリッフォ:アルフレード・レッジ
ナタリーノ:レナート・トロイアーニ
ピピート:ロマーノ・ラバーテ
ミリー:ロレンツァ・ベネデッティ
あらすじ:
ローマのテーヴィレ川の土手で起きた中年娼婦殺しの容疑者たちが警察で取調べをうけている。
--19歳の少年カンティッキア(フランチェスコ・ルイウ)は仕事を探していたと証言するが、実はこそ泥仲間とハンドバッグを盗んでいた。
被害者のヒモだったカリッフォ(アルフレード・レッジ)は、若い娘エンニアに恋をしていて、それを知った彼女と派手な喧嘩をしていた。
娼婦が客をとっていた公園のベンチで眠っていた休暇中の兵士テオドーロ(アレン・ミジェット)は、一日中ローマの街で女たちに口説き寄っていたので、疲れきって眠りこんでしまったのだと話す。
ナタリーノ(レナート・トロイアーニ)は事件の夜公園で二人の少年を目撃したと証言し、告発された二人は警察がやって来るのを見て訳も分からず逃げ、ピピート(ロマーノ・ラバーテ)は捕まり、フランコリッキオ(アルヴァロ・デルコーレ)は川に飛び込んだまま溺死してしまう。
二人は事件の当日、ドメーニカ(エミー・ロッチ)とミリー(ロレンツァ・ベネデッティ)という二人の少女と出会うが、食料品を買う金がなく、夜の公園で同性愛の男に近づき、彼のレインコートを奪い逃げたのだった。
そして、その同性愛の男は事件を目撃しており、サンダルを履いた男が犯人だと証言する。
その同性愛男は、木のサンダルを履いてダンスホールで若い娼婦と踊っていたが、その後彼女を殺してしまったのだった。
コメント:
当時21歳のベルトルッチが、ピエル・パオロ・パゾリーニの原案をもとに監督し、彼の処女作となった。
本作はヴェネツィア国際映画祭で高く評価された。
ローマで起きた娼婦殺しの容疑者たちが取り調べを受ける。
その容疑者の回想シーンでストーリーは組み立てられていく。
しかし、全員の証言が食い違っている。
真犯人は最後にようやく確定した。
社会の底辺にうごめく若者達の行動を描く異色作である。
『暗殺のオペラ』や『ラスト・エンペラー』で知られるベルナルト・ベルトリッチの初監督作品。
ストーリー原案はパゾリーニ。
原題は「コマーレの砂州」という意味で、娼婦の絞殺死体が発見された場所のこと。
犯行が行われた時刻に公園に居合わせた男達に、警察は次々と尋問していく。
尋問する刑事は声だけで、容疑者達が答える内容が映像で描かれていくインタビュー映画になっている。
一人目の男が「俺の他にこんな連中がいた」と証言して次の尋問に移る。
なかなかクールでスタイリッシュな映像。
未来の巨匠の片鱗がうかがえる佳作だ。
「全員の証言が食い違っている」といえば、あの黒澤明監督の「羅生門」を思い出す。
1951年8月23日にヴェネツィア国際映画祭でこの名作が高く評価されて金獅子賞を受賞してから、11年後の作品である。
この映画は、YouTubeで全編無料視聴可能。