イタリア映画 「わらの男」 ピエトロ・ジェルミによる、初老の男の人生の哀感を描いた名作! | 人生・嵐も晴れもあり!

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「わらの男」

(原題: L'uomo di paglia)

 

映画 『 わらの男(L'UOMO DI PAGLIA/ A Man of Straw) 』 original source 1957. -  YouTube

 

「わらの男」 全編

 

1958年公開。

ピエトロ・ジェルミの監督・脚本・主演作品。

 

脚本:ピエトロ・ジェルミ、アルフレード・ジャンネッティ、レオ・ベンヴェヌーティ、ピエロ・デ・ベルナルディ

監督:ピエトロ・ジェルミ

 

キャスト:

  • アンドレア:ピエトロ・ジェルミ
  • ルイザ:ルイザ・デラ・ノーチェ
  • ジュリオ:エドアルド・ネボラ
  • リータ:フランカ・ベットーヤ
  • リータの母:ミリー・モンティ

わらの男 - L'Uomo di Paglia -

 

あらすじ:

ローマに住む中年の機械熟練工アンドレア(ピエトロ・ジェルミ)には、妻のルイザ(ルイザ・デラ・ノーチェ)との間に八歳の一人息子のジュリオがあった。

日曜日に狩りにつれて行って雨に当ったことから、ジュリオが肺炎をおこし、その療養のためにルイザはジュリオをつれて田舎の実家に帰った。

妻と子のいなくなったアパー卜で一人暮すようになったアンドレアの生活は、何か空虚だった。

日曜ごとに海に近い田舎の実家を訪れることで、彼は自分の心をなぐさめた。

そんなある曇った日曜日、実家近くの海岸で、彼はふと何か淋し気な一人の女に出会った。

町に帰るバスの中でも彼女といっしょになって、アンドレアは彼女に話しかけた。

その女、リータ(フランカ・ベットーヤ)は、アンドレアの向いのアパートに住むビジネス・ガールだった。

リータの弟を自分の務める工場に入れるよう計らってやったりして、二人はよく会った。

お互に離れられなくなるのを知りながら。そしてある晩、残業で一人タイプを打つリータのオフィスにアンドレアが訪れた夜、二人は結ばれた。

だが、やがて全快したジュリオと妻が、アパートに帰って来る日がやってきた。

こうなるとは解ってはいたものの、リータはアンドレアと別れ難かった。

なるべく彼女を忘れようとするアンドレアを、リータは郊外のカフェに呼び出したりした。

最後にもう一度会ってくれというリータの電話に、アンドレアは散歩をよそおって出かけた。

その後をジュリオ少年と愛犬が追った。

父親のあとから少年が声をかけて走りだした時、愛犬がトラックの車輪にかけられた。

泣き叫ぶ少年の姿とアンドレアを見て、リータは自分と彼の関係が終わったのを悟った。

クリスマスも近いある晩、リータはアパートのバルコニーから身を投げて死んだ。

苦しみに耐えられず、アンドレアは、リータの死の原因が自分にあることを教会で妻に告白した。

妻はジュリオをつれてアパートを去り、田舎に帰った。

年の瀬を迎えて、アンドレアは酒に酔いしれた。

親友べッペのなぐさめも空しかった。

新年を迎えて町中が花火でさわぐ夜、アンドレアは打ちひしがれたように一人アパートの階段を上った。

アパートの部屋に、妻と子は帰っていた。

三人は抱きあった。

しかし夫と妻は、今や自分たちの間から一番大切なものが失われてしまったことを知るのだった。

 

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コメント:

 

三人家族のある機械熟練工の生活をめぐって、妻子の留守中に起った夫と別の女との関係を中心に、現代イタリア小市民家庭の物語が描かれている作品である。

 

これは、ある中年男の物語である。

アンドレアは、典型的なブルジョワのドラマを経験しようとしている家族の父親である。 

40歳の熟練労働者は、踊り場で出会った近所の人たちに丁寧に挨拶しながら毎日出勤している。

都市の「巣箱」ではよくあることだが、アンドレアは同じ建物に住んでいるにもかかわらず、若い女性リタに会ったことがない。日曜日に妻と息子に会いに海辺に行くときに時々出会う。

二人はほとんど言葉を交わさないが、それは抑えられない情熱の始まりだった。

最初は不信感を抱いていたものの、実際にはリタもその男性に惹かれ、自由で完全な愛を求める彼女自身の願望が見え、最終的には我を失った。

しかし、アンドレアは若い女性を愛してはいるが、同時に家族への愛情から完全に離れることができない。

鍋の火は明るく燃えていたが、今は完全に消えていたのだ。

しかし、リタはその男なしでは生きていくことができず、自殺してしまうのだった。

 

原題の「 L'uomo di paglia」とは、「わらの男」という意味で、日本語タイトルと同じ。

「わら」は、植物の「藁」である。

このタイトルの意味するところは「取るに足らない男」ということらしい。

 

つまり、妻の留守中に出会って深い仲になった女性を愛し続けることも出来ず、きっぱり手を切ることもせずに、その女性を死に追いやった「クズのような男」という意味なのだ。

 

まあ、妻の留守に、ちょっとした浮気心から不倫に走ってしまった男の悲劇を描いたものなのだが。

 

ピエトロ・ジェルミが、「鉄道員」の主人公とは真逆の、いい加減なイタリアの中年男になりきって、良い味を出している。

 

こういういい加減な不良中年がイタリアには昔も今もわんさかいるのだろうと思わせてくれる。

いや、日本にもたくさんいるのかも。

 

とにかく、イタリア人の庶民の世界を自然体で描き続けたピエトロ・ジェルミの名作のひとつであることは確かだ。

 

この映画は、YouTubeで全編無料視聴可能。