「あの橋の畔で 完結篇」
1963年7月27日公開。
シリーズ完結篇(第4部)。
原作:菊田一夫
脚本:野村芳太郎、山田洋次
監督:野村芳太郎
出演者:
桑野みゆき
園井啓介
穂積隆信
沢村貞子
浅茅しのぶ
左幸子
山内明
千之赫子
神山繁
あらすじ:
不倫を口実に五百万円の慰謝料を請求された葉子(桑野みゆき)のために、光晴(園井啓介)はかねてから頼まれていた北海道での仕事を引き受けて金を借りた。
それで示談に出来ると聞いて彼は任地へ発っていったのだが、離婚を条件にと聞いた信介(穂積隆信)は行方をくらませてしまった。
光晴からチカ坊の祖父が函館にいるとの知らせで、葉子は北海道に旅立った。
ある日葉子は街でタクシーの運転手をしている信介と出逢った。
札幌で会った女・時子(左幸子)と一緒になり真面目に暮しているという信介から聞いている最中に、葉子は激しい頭痛に襲われ病院にかつぎこまれた。
病名は脳腫瘍。
信介は入院した葉子に離婚届を手渡し、二人の幸せをことづけていった。
容態が悪化した葉子は東京の大学病院で手術を受けたが、生命はあと二年位と担当の沖教授に宣言され、光晴は呆然とした。
だが葉子には打ち明けず、残された時間だけでも二人で暮らそうと光晴は結婚を決意した。
やがて葉子と光晴の結婚式が挙げられ、幸せな毎日は夢のように流れていった。
だがその中にも真実を話し合えぬ光晴は日夜苦しんだ。
結婚一年半、精密検査を受けた葉子は全快を告げられた。
光晴は天にも登る気持であったが、これは神経的に参っている彼をいたわる沖教授(神山繁)のいつわりの証言であった。
結婚二周年を迎えた春、美しく装った葉子を中心にみんなを招待したパーティが開かれた。
ピアノをひく葉子。
その体に変化が起こりつつあることなど、見守る一同には全く知り得なかった。
それから数日後、光晴の職場に葉子から電話が入る。
頭が痛く、手も痺れてきたという。
慌てて帰る光晴だったが、まもなく葉子は死んでしまう。
一人になった光晴は、葉子の面影を日々思い出し、隣の奥さんが心配で立ち寄った時も、雨の中で幻を追っていた。
葉子の田舎に骨を埋めに行ったが、そこで葉子がすでに自分の余命を知っていたことを知る。
葉子が覚悟して光晴に接していたさまざまを思い出して映画は終わる。
コメント:
完結篇も、またまた菊田一夫の思い付きストーリーであり得ないシーン満載だ。
ずる賢い嘘つきで金持ちだったヒロインの夫・信介が、なんと北海道でタクシーの運転手をしているのだ。
たとえ離婚の示談の話がするのが嫌で雲隠れしたとしても、わざわざ北海道まで行ってタクシーの運転手をすることは絶対あり得ない。
雲隠れしている人間は人目に付くタクシー運転手などするわけがない。
そして、ヒロインが病気だと知ると主人公に押し付け、二人の幸せを祈るとことづけるという。
そういう言葉が最悪の夫だったこの男の口から出ることなどあり得ないだろう。
さらに、医者が診断したところ、余命2年の脳腫瘍という診断結果が出る。
それを承知で二人は結婚し、結婚一年半後に、精密検査を受けた葉子は全快を告げられる。
光晴は天にも登る気持であったが、これは神経的に参っている彼をいたわる沖教授のいつわりの証言であったという。
大学病院の教授たる人が患者の夫をいたわる気持ちで、こんな偽りの証言をするはずがない。
日本の医学界の常識を全然知らない、所詮は浅草喜劇の台本作家でしかなかった菊田一夫にしかこういう発想は出来ないだろう。
もう最後までバカバカしいあり得ないメロドラマだ。
菊田一夫の「メロドラマ」は、実は支離滅裂な「メロメロドラマ」であった。
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