「鐘の鳴る丘 㐧二篇 修吉の巻」
1949年(昭和24年)1月25日公開。
「鐘の鳴る丘」三部作の第2篇。
原作:菊田一夫
脚本:斎藤良輔
監督:佐々木啓祐
キャスト:
- 加賀見修平:佐田啓二
- 加賀見修吉:本尾正幸
- 加賀見勘造:井上正夫
- 加賀見かね:英百合子
- 秦野由利枝:高杉妙子
- 秦野豊:菅井一郎
- 秦野芳枝:平野郁子
- 泉沢万次:山口勇
- 隆太:野坂頼明
- 俊二:前田正二
- 留男:芝田幸雄、松岡正憲
- 謙一:小野寺薫
- みどり:伊藤和子
- 桂一:鈴木豊明
- 俊春:徳大寺伸
- 源吉:山路義人
- しの:飯田蝶子
- 昌夫:江原達怡
- まき子:大塚富子
- ガンちゃん:辻正太郎
- 山の龍太:深沢博夫
- クロ:小田金薫
- とき子:渡辺孟代子
- よし坊:山本清子
- 山田親分:小堀誠
あらすじ:
東京へ残したみどり(伊藤和子)達を探しに来た修平(佐田啓二)。
修平は浮浪児たちが寝場所としていた芝浦の倉庫街へ行くが、誰もいなかった。
都電に乗ると、スリを働いて大人たちから騒がれている子供がいた。
なんとそれは留男(柴田幸雄)で、彼は修平の迎えを待っていたのにと泣く。
今はスリの親分(小堀誠)の家でみどりと一緒にいるという。
子供を連れ帰るために一万円払えと言われた修平は、信州に電報を打つ。
隆太は一万円を送金しようと現金を持って町の郵便局へ行くために馬車に乗る。
途中で修平の伯父と息子の昌夫(江原達怡)と姉が乗ってくる。
昌夫は、隆太が居眠りしているのを幸い、一万円を包んだ風呂敷包みを盗む。
そんなことを知らない隆太はあとで風呂敷包みを持っていないことに気づくが、伯父一家は知らないという。
食い下がる隆太だが、汽車に間に合わなくなると伯父は馬車の男を急かし行ってしまう。
留男とみどりを引き取って信州へ行こうと親分の家へ直談判にいった修平だが、子分の俊春(徳大寺伸)にのされてしまう。
外へ投げ出される修平。
その後助け出された修平の元に、俊春が自分の弟・ガンちゃん(辻正太郎)を連れてきて、一緒に信州に連れて行って欲しいと頼む。
聞けば彼も不幸な身の上で、せめて弟だけはまともに暮らして欲しいというのだ。
俊春は親分に内緒で子供たちが信州へ行く手助けをすることになり、ようやく修平は子供たちを連れて信州に旅立った。
その後、昌夫が急にものを買うようになる。
隆太から盗んだ一万円を使っていたのだ。
それを庭の片隅に埋めて隠し、掘り返しているところを隆太が目撃し、昌夫を追いかける。
そこへ30年も手伝いをしているしの(飯田蝶子)が通りがかり、風呂敷包みをみてビックリしているところへ、主人の伯父夫婦がやってきて泥棒したろうと問い詰められる。
山奥へ逃げ込んだ昌夫を追う隆太。
そこへ信州へ桂一を連れてやってきた修吉が通りがかり、昌夫を追い詰める。
子供3人で「昌夫を谷へ突き落せ!殺せ!」と叫ぶ。
だが、昌夫は修吉を振り払うと、なんと修吉が谷へ落ちてしまう。
慌てて大人を呼ぶ。
ロープが届かない。
兄の修平も駆けつける。
矢も楯もたまらず隆太は短いロープで途中で倒れている修吉の元へ。
修平も自分が持ってきた長いロープでその場所へ行くが、もう上には上がれない。
隆太は修平に修吉と3人でここで死のうと言う。
「自分は浮浪児だし、修吉はびっこだし、修平は修吉の兄だからもう3人でここで死のう」と言うのだ。
修平はそんな隆太を諭し、修吉を隆太に背負わせて3人死ぬより、2人生き残ったほうが良いと隆太を修吉をあがらせる。
そこへ知らせをきいた助っ人がきて修平は谷から引き上げられた。
クリスマスイブ。
丘の少年の家ではクリスマスを祝っている。
そこへ、外に立っていたという昌夫をやってくる。
子供たちは昌夫をにらみつけるが、修平は仲間にいれてやろうと提案。
最初に隆太、そして昌夫にビッコにされた修吉も許し、みんなが合唱する。
外には父(井上正夫)が「自分たちの教育が間違っていたのだろうか」と言いつつ、雪道を下っていくのであった。
コメント:
この第2篇も話題満載である。
主人公・修平(佐田啓二)は、東京に残っている子供たちを信州に引き取ろうと上京するが、相変わらずそこは犯罪が横行する都会だった。
スリが現れ、スリの親分の家というのが出現し、そこにみどりたちがかくまわれていることがわかる。
スリの親分の手下にコテンパンにのされた修平だったが、何とか助けれられる。
子供たちを引き取るには1万円払えと言われる。
信州にいる隆太は、1万円を送金するつもりで現金を持って郵便局に向かったが、途中で現金が入った包みを盗まれてしまう。
その後、その犯人が昌夫だったことが判明し、修吉を筆頭とする子供たちは昌夫を谷が迫る崖に追い詰める。
だが、誤って修吉が谷に落ちてしまう。
そこに隆太、修平がやってきて修吉を助けようとするがロープが届かず。
「3人で死のう」というところまで追いつめられるが、助っ人が来て助けられる。
ドラマチックな舞台劇を作り続けた菊田一夫ならではの、どたばたシーン、ハラハラシーンがあって、面白い作品になっている。
最後は、ようやく主人公と子供たち全員がそろって、楽しく信州の鐘の鳴る丘の少年の家でクリスマスを祝う。
この映画は、第1篇でも変なところがあったが、本作も変てこりんな部分が散見される。
当時の1万円(現在の1千万円以上か)もの大金を子供に持たせて一人で銀行に行かせるのはあり得ない。
その子が銀行に送金に行くらしいことを馬車の中で修平の伯父一家に平気で話してしまうのもおかしい。
大切な現金を持っているのに、居眠りをしてしまい、その包みを別の子どもがネコババするというのもあり得ない。
また、その子が盗んだ現金を家の裏庭の土の中に隠していて、時々土の中から現金の包みを掘り出すシーンも変だ。
その子を谷の近くに追い詰めるが、追い詰めた方が谷に落とされてしまうというのもあり得ない。
ヘンな所がたくさんあるのだ。
だが、全体としては主人公と子供たちがが結束して信州で一緒に生きて行こうとする姿がけなげで、好感が持てる作品ではある。
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