日本の文芸映画 太宰治 「奇巌城の冒険」 太宰治の「走れメロス」が原案! | 人生・嵐も晴れもあり!

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「奇巌城の冒険」

 

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「奇巌城の冒険」 予告編

 

1966年4月28日公開。

「走れメロス」を原案とした活劇映画。

 

原案: 太宰治「走れメロス」

脚本:馬淵薫

監督:谷口千吉

 

キャスト:

  • 三船敏郎:大角
  • 中丸忠雄:円済
  • 有島一郎:酔仙道人
  • 三橋達也:王
  • 白川由美:王妃イザート
  • 佐藤允:ゴルジャガ(盗賊団団長)
  • 平田昭彦:宰相
  • 若林映子:スプリヤ(宰相の娘)
  • 大木正司:スンダラ
  • 天本英世:不知火のおばば
  • 田崎潤:隊商宿亭主
  • 浜美枝:クレーヤ(隊商宿亭主の娘)
  • 黒沢年男:大角の弟
  • 高田稔:コータンの老王
  • 堺左千夫:キャラバンの案内人
  • 黒部進:武官長
  • 春日章良:宦官長
  • 石田茂樹:司祭長
  • 長谷川弘:衛兵長
  • 桜井浩子:侍女
  • 沢村いき雄:奴隷商人

 

奇巌城の冒険(桜井浩子) : 犬猿ぶろぐ

 

あらすじ:

漢人、蒙古人、ペルシャ人、印度人と国際色豊かな敦煌の都で、日本人・大角(三船敏郎)と、僧侶・円済(中丸忠雄)は日本に仏教を広め、文化の都を奈良に造るため仏舎利を求めてシルクロードへ旅立った。

途中砂漠でえたいの知れない悪霊に苦しめられながら、大角は奥地へ入っていった。

しかし、悪霊の出現に不蕃を抱いた大角は何か悪い人の企みがあることに気づいたが、遂に隊は黒盗賊に襲われ、静かなオアシスの街へ迷い込んだ。

そこで地中に埋もれた窟寺を見つけた大角と円済は、そこで仏舎利を手にして小躍りした。

だがその間に隊の者たちは王(三橋達也)の命令でつかまってしまっていた。

隊商宿の亭主(田崎潤)と娘・クレーヤ(浜美枝)から、早く逃げるようすすめられた大角であったが、正義感の強い大角は城にしのび込んで皆を助けようとした。

城の中で大角は一癖ありそうな家臣の中に、砂漠の中で出くわした黒盗賊の主領・ゴルジャカ(佐藤允)を見つけた。

だが大角も捕われの身となり、即刻火あぶりの刑を言い渡された。

 

2020年08月の記事 | 十 和 堂

 

しかし大角は仏舎利を日本に送るまでの手続きをするために、十日間の余裕をくれと訴え、その代わりに円済の身を十日間拘置するよう訴えた。

王の同意を得た大角は仏舎利を手にすぐ飛び出した。

けれどもゴルジャカの企みで、大角は執に追われ危機に遭遇した。

ようやく仏舎利を託して、馬をとばして道を引き返した大角は、砂漠でゴルジャカの率いる黒盗賊に馬を討たれ、走る途中、谷に落されたりして、ひん死の状態で十日目の昼ちかく帰って来た。

姿を見て驚いたゴルジャカは、王に目の前で殺すよう計った。

一方ペシルの人々は口々に大角の正しい勇気をほめたたえ、皆の力で守ろうとした。

王様も大角により初めて人を信ずる尊さを知り、大角を許した。

ペシルの都には明るい笑声がよみがえり、大角と円済は一層仲良くなった。

 

奇巌城の冒険のTwitterイラスト検索結果。

 

コメント:

 

1963年に公開された『大盗賊』の路線を受け継いだ冒険映画。

主要なスタッフ・キャストも『大盗賊』と共通している。

ストーリーの原案は太宰治の『走れメロス』。

 

走れメロス (新潮文庫) 太宰治 | Book Summary(本要約サイト)

 

『走れメロス』は。太宰治の初期の傑作と言われている短編小説である。

『新潮』1940年5月号に掲載され、のちに短編小説集『女の決闘』(河出書房、1940年6月15日)に所収された。

処刑されるのを承知の上で友情を守ったメロスが、人の心を信じられない王に信頼することの尊さを悟らせる物語だ。

 

久しぶりにこの原作を読んでみたが、素晴らしい内容で感激した。

おそらく初めてこの小説を読んだ人の多くは涙したであろう。

 

青空文庫に収まっている:

 

 

 

こんな素晴らしい若者と、だらしない太宰治の人生とは、全く正反対であることに納得が行かない。

 

調べて見ると、なんとこの小説は、昔の中東の物語を書き写したものであることが分かった。

たしかに、『走れメロス』の最後に「古伝説とシルレルの詩から」と記述されている。

 

古代ギリシアの伝承と、ドイツの「シルレル」すなわちフリードリヒ・フォン・シラーの詩を基に創作したことが明らかにされているのだ。

 

さらに、この物語は、なんと日本でも、太宰以前に、明治初期に幕末を舞台にした翻案(シラーの詩を直接的にか間接的にか参照したと思われるもの)があり、この伝承は青少年の道徳心を育てる目的で学校教育に採用され、広く読まれていたという。

太宰が使った高等小学校1年生の国語の教科書にも「真の知己」のタイトルで所収されているらしい。

 

『走れメロス』は、主題の美しさと文体の力強さを維持したままテンポよく読み終えられるため、短編ながら太宰の代表作の一つとして現在でも高い評価を受けている。

だが、その反面、一部の声に学校教材独特の徳目を褒め称えることへの「白々しさ」や、寺山修司の「歩け、メロス」(1975年/昭和50年)のように、メロスを「無神経な自己中心性・自己陶酔の象徴」と考える否定的意見もあるようだ。

 

やはり、太宰治という人間は、使えるものなら何でも使うという、ずうずうしい商売根性が若い頃からあったのだ。

うさんくさい小説家・太宰治という当方の第六感は、またしても的中したのだ。

 

しかしながら、この「奇巌城の冒険」という映画は別だ。

三船敏郎を筆頭に多くの名優たちが熱演している名作であり、面白い。

太宰治もこの映画を観たら少しは反省するかも知れない。

 

この映画は、桜ヶ丘に1万5千平方メートルの大オープンセットを建て、タクラマカン砂漠にロケーションを敢行して製作された。

 

不毛の砂漠を貫くアスファルトの道|空と大地|多胡光純 | SANYO CHEMICAL MAGAZINE

 

昔々、仏舎利を求め西へと旅する僧侶(中丸忠雄)は奴隷として売られていた日本人(三船敏郎)を救い共に旅をすることに。
過酷な旅、盗賊の登場などの苦難にあいながらついに仏舎利を手に入れ、あとは帰るだけなのだが、立ち寄ったとある国で王の不信が極まっており、スパイだと疑われて捕まってしまう。

奇巌城の冒険 1966 <古城と怪奇映画など

後半の展開はまんま「走れメロス」だ。
用事を済ませていざ戻ろうとする三船敏郎に次々に襲いかかる妨害。
盗賊(佐藤允)だけでなく奇怪な魔法を使う魔女(天本英世)まで出てくる。
それに対抗して善役の仙人(有島一郎)の手助けを借りて何とか駆けつけ王の不信を解き、めでたしめでたし。

かと思ったら、王の座を狙う宰相(平田昭彦)らの謀反で反乱が起きてもう一波乱。
最後は今までのうっぷんを晴らすかのように三船敏郎が暴れての一件落着といった流れ。

奇巌城の冒険 1966 <古城と怪奇映画など

つまり登場人物はほぼ異国の人という設定だ。
確かに佐藤允なんかは日本人ばなれしてるし、天本英世に至っては男女の壁を超えてさらに人外的な扱い。
でもみんなちゃんと言葉は通じてるという娯楽冒険活劇になっている。

設定だけなら安っぽい子供向けの映画的な感じが、意外とそれなりに楽しめる。
物語の深さだとか純粋な面白さを期待するというよりも、その奇抜さ、ある意味ネタとして、設定の乱暴さは百も承知な上で楽しむ作品。

 

海外ロケは物語の雰囲気をだすために行ったものだろうが、そういった意味では日本に場所を移しての脚本の書き直しよりは異国情緒が出ている。

 

2020年08月の記事 | 十 和 堂


中丸忠雄が僧侶役で、三船敏郎の動に対して静の部分を受け持ち、いいバランスだ。
女優は浜美枝、白川由美、若林映子とでていたが、色恋があるわけではない。

 

この映画は、Amazon Primeで動画配信中:

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