「長く熱い週末」
(原題:THE LONG GOOD FRIDAY)
1980年11月3日公開。 |
イギリスのネオ・ノワールを代表する犯罪ドラマ。
脚本:バリー・キーフ
監督:ジョン・マッケンジー
出演者:
ボブ・ホスキンス、ヘレン・ミレン、エディ・コンスタンティーヌ
あらすじ:
ロンドンの裏社会を仕切るギャングのハロルドは、アメリカのマフィアと取引し海外進出しようとする。
しかし手下が相次いで殺され、ハロルド自身も命を狙われる。
ハロルドの愛人ヴィクトリアは、トラブルに見舞われる彼に代わり取引を引き延ばそうとする。
一連の事件の背後には、ある強大な組織がそびえていた。
コメント:
日本未公開作品。
製作された英国ではネオ・ノワールの傑作と評されている作品。
英国の映画の中では、堂々19位にランクインしている作品であることは確か。
まあ、ネオ・ノワールというのは、フィルム・ノワールの次に出てきたノワール映画で、米国が中心だということなのだが。
こういう面白い映画でも、英国映画だとまたしても無視している日本映画界に腹が立つ。
一風変わった犯罪映画と言えよう。
ただ一攫千金の土地開発に乗り出したギャングのボス、ハロルド(ボブ・ホスキンス)が何故何者かに邪魔されることになったのかがわかりにくい。
冒頭にちょっとした銃撃シーンとか女に唾吐きされるシーンが唐突に描かれていて、それがあとあと伏線であったことに気づかせるような作りだ。
「強いイギリス」、「ロンドンこそがヨーロッパ合衆国の首都になる」、と意気込むハロルド。
その後のEC、EU、そしてそこからの離脱という英国の歴史を知ったあとで見ると、この国が彷徨うことになる要因を見せているような意味深な作品だ。
そんな彼が部下の不手際によってのっぴきならぬ方向へと堕ちていく。
大事業の利権を得ようとする他のギャングの仕業と思い込み彼らを締め上げる。
食肉工場で吊るし上げるシーンにこの男の残虐性が浮き上がる。
でも観客はこんな男に感情移入させられ、見えない敵に追い詰められていく様子を主人公とともに体験することになる。
なかなか面白い。
見えない敵がIRAであったというくだりがちょっとわかりづらいが、これが冒頭の意味ありげなシーンと繋がっているというわけ。
組織の金を盗んだ部下の不手際に巻き込まれるボス。
さしものギャングのボスもIRA(アイルランド共和国軍)には敵わないという結末だ。
別に政治的な意味合いなど本作には無縁だと思うが、見ようによっては強い政治を全面に押し出しはじめた政府への皮肉とも取れる内容でもある。
しかも力を借りる相手が米国(ここではマフィア)というところまで。
主演をつとめたボブ・ホスキンスが、渋いが、儲け話に躍起になる男を好演している。
主人公のギャングの親玉(ボブ・ホスキンス)を叱咤している強い女は、彼の愛人ヴィクトリア。
ヘレン・ミレン(当時30代半ば)が演じている。
若い頃の可愛い感じは全くなく、ギャングの女になりきっている。
イギリスで制作されたネオ・ノワール映画というのは、日本できちんと解説しているサイトが皆無のようだ。
だが、海外のサイトを見ると、けっこう紹介されている。
英国製ネオ・ノワールは、53作もあるという。
この映画は、TSUTAYAでレンタル可能: