「橋ものがたり 小ぬか雨」
2017年12月13日公開。
時代劇専門チャンネルのオリジナル作品。
原作:藤沢周平「小ぬか雨」
脚本:中村努
監督:井上昭
制作:時代劇専門チャンネル/スカパー!/松竹
キャスト:
北乃きい:おすみ
永山絢斗:新七
本田博太郎:安五郎
あらすじ:
早くに両親を亡くし、娘らしい楽しい思い出もないまま育ってきたおすみ。
伯父にまかされた履物屋でひとりで暮らす彼女は、自分の意思とは関係なくがさつな職人・勝蔵との縁談も決まり、人生に希望を抱くこともない日々を送っていた。
ある夜、おすみの家に「ケンカをして追われているのでかくまってほしい」と若い男が突然逃げ込んできた。
小奇麗な身なりをしたその男は、おすみを「お嬢さん」と呼び、その響きにおすみは心の揺らぎを感じていた。
新七と名乗るその男を信用し、かくまうことにしたおすみだったが、実は新七が人を殺して追われている身であることを知る。
コメント:
時代劇専門チャンネルが藤沢周平の小説を映像化する「藤沢周平 新ドラマシリーズ」の第2弾。
短編集「橋ものがたり」に収められている一編「小ぬか雨」を映画化。
「眠狂四郎」「座頭市」などを手がけたベテラン井上昭のメガホンで映像化。
脚本は「座頭市」テレビシリーズや高倉健の「夜叉」「あ・うん」などを手がけた中村努。
おすみ役を北乃きい、新七役を永山絢斗がそれぞれ演じる。
訳ありの逃亡者を匿う女。
逃亡者の男がどんな罪を犯したのかも徐々に分かってくる一方、女もあまり幸せでない身の上であることが知れてくる。
1時間あまりの中に、男と女のいっときの情愛と別れを大映プログラムピクチャーを支えた監督らしく、井上昭が細やかに描いている。
常識的に見たら何でこうするのかというストーリーなのだが、これが実は現実に起きている事件なのだ。
こういう時代小説こそ、藤沢周平が最も得意とするカテゴリーだ。
こういう非常識で、理不尽で、切なさだけが残る世界を書き続けたのが、藤沢周平だった。
このシリーズものが今後もずっと続くことを祈りたい。
偶然、罪を犯した男・新七役を演じた永山絢斗が、つい最近、自身も罪を犯し、警察に逮捕された。
人を殺したわけではなく、大麻の使用・所持という軽い罪だったので、執行猶予3年という判決になったが。
なかなか存在感のある良い演技をする役者なので、今後は真面目に俳優業に専念し、また藤沢作品に出演してほしいものだ。
この映画は、時代劇専門チャンネルで動画配信中: