「一茶」
俳人・小林一茶の知られざる破天荒な生きざまを描いた藤沢周平の小説「一茶」を、リリー・フランキー主演で映画化。
しかし、封切直前に突然公開できない状況に陥り、すべては闇の中に。
2023年7月現在、公開時期は全く不明のまま。
まぼろしと化すか?
制作自体は終了し、公開前の宣伝活動もしていたのが、突然ストップがかかった。
2017年に公開予定だったこの映画の概要を記しておく。
原作:藤沢周平「一茶」
脚本:柏田道夫
監督:吉村芳之
出演者:
リリー・フランキー、中村玉緒、伊藤淳史、石橋蓮司、佐々木希、内野聖陽、奥田瑛二らが出演。
あらすじ:
稀代の俳諧師、小林一茶(リリー・フランキー)。
牧歌的な人物として語られがちな彼の生涯は、孤独と苦悩に満ちたものだった。
継母さつ(中村玉緒)との折り合いが悪く、家に居場所がなかった一茶は江戸へ奉公に出される。
どこの奉公先でも長続きしない一茶だったが、やがて俳句の世界に独自の感性を表現する術を見出し、俳諧師となる。
しかし、能力を認められる一方で、耽美な表現を評価する当時の俳諧において一茶の句は田舎俳諧と揶揄され、彼の生活は貧しいものだった。
やがて父・弥五兵衛(石橋蓮司)が逝去、その遺言を巡って一茶は自らの家族と争うことになる。
確執を遺しながらも故郷に戻って家庭を持った一茶だったが、若い妻・菊(佐々木希)と幼い子に相次いで先立たれてしまう。
だが深い失意の中でも尚、一茶は自らの性分に突き動かされ、句を詠み続けるのであった……。
コメント:
江戸時代後期に活躍した俳句の名人・小林一茶。
この人物を藤沢周平が小説化しており、タイトルは「一茶」。
小林一茶は、宝暦13年5月5日(1763年6月15日) - 文政10年11月19日(1828年1月5日))は、日本の俳人。
本名は小林弥太郎、一茶とは俳号である。別号は圯橋、菊明、新羅坊、亜堂。庵号は二六庵、俳諧寺。
信濃国(長野県)の北部の豪雪地帯にある柏原で中農の子として生まれた。
15歳の時に奉公のために江戸へ出て、やがて俳諧と出会い、「一茶調」と呼ばれる独自の俳風を確立して松尾芭蕉、与謝蕪村と並ぶ江戸時代を代表する俳諧師の一人となった。
継母との折り合いが悪く、そのために江戸に奉公に出された一茶だったが、どこの奉公先でも長続きせずにいた。
やがて俳句と出会い、その世界に魅了され、俳諧師となった。
しかし、当時の俳諧では田舎俳諧と揶揄された俳諧師としての一茶の生活は貧しく、父が逝去した際には遺産をめぐって自らの家族と争うことになる。
故郷に戻り、家庭を持つが、若い妻と幼い子に相次いで先立たれるなど、さまざまな苦境に立たされながらも、句を詠み続けた一茶の半生を描いていく。
小林一茶の代表的な俳句がこちら:
「我と来て 遊べや親の ない雀」
「やせ蛙 負けるな一茶 これにあり」
「これがまあ つひの栖(すみか)か 雪五尺」
この映画が公開中止となった理由を伝える情報は以下の通り:
藤沢周平の原作を基に、監督・吉村芳之、主演・リリー・フランキーを迎え、俳人・小林一茶の波乱に満ちた人生を描いた本作。他にも豪華キャストが名を連ね、大河ドラマを多く手がけた吉村芳之(故人)の初映画監督作ということも含め、注目を集めたが、製作会社が4億円の負債を抱えて破産したため、資金繰りが悪化。
撮影地の長野県北信地方では、映画スタッフの宿泊代を立て替え払いした飯山市の観光局などが支払いを受けられず多額の損害を受けた。
この時点ですでに撮影は終了しており、あとは公開を待つのみという状態だったが、製作会社の金銭トラブルで暗礁に乗り上げ、キャストやスタッフのギャラも未払いのまま。さらに立て替え払いした飯山市の被害額は数千万円にも及んだ。さらに、吉村監督は撮了後、まもなく他界。結果として「遺作」となってしまう事態に陥った。
このままお蔵入りの可能性が高まった2018年。
状況は急展開を見せる。
京都市の建設業「沖潮開発」の沖潮吉績社長が、約2000万円を飯山市に寄付することを申し出たのだ。
幼い頃から大の映画好きだったという沖潮社長は持病で倒れ、リハビリ中に映画『一茶』お蔵入りのニュースを見て、飯岡市への寄付を決意。映画好きのパトロンが、この国にはまだまだ健在であることを示すエピソードだ。
さらに、同作のスタッフは『映画“一茶”を救う会』を結成し、スポンサーを募集。クラウドファンディングを募る声も上がり、上映を熱望するリリーからのメッセージも紹介された。
資金問題をクリアし上映へと漕ぎつけることはできるのか。監督を務めた故・吉村芳之氏も、6年越しの上映を草葉の陰から心待ちにしているはずだ。
残念ながら、その後明るいニュースは全く無いまま、2023年に至っている。
どうやらこの作品はお蔵入り確実かも知れない。
藤沢周平も草葉の陰で泣いているのでは。