「顔のない眼」
(原題: Les Yeux sans visage)
1960年1月11日公開。
単なる怪奇映画とは異なる、新聞の三面記事的な事件の設定から、恐怖の本質をつこうとする異色作。
脚本:ボワロー=ナルスジャック、ジャン・ルドン、クロード・ソーテ
監督:ジョルジュ・フランジュ
キャスト:
- ジェネシュ博士 - ピエール・ブラッスール
- ルイーズ - アリダ・ヴァリ: ジェネシュ博士の助手。
- クリスチアヌ - エディット・スコブ: ジェネシュ博士の娘。
- エドナ - ジュリエット・メニエル: 誘拐されて顔の皮膚を切除された娘。最後は絶望して自殺をしてしまう。
- ジャック - アレクサンドル・リニョー: クリスチアヌの元婚約者。
- ポーレット - ベアトリス・アルタリバ
あらすじ:
パリに住む皮膚移植手術の権威ジェネシェ博士(ピエール・ブラッスール)には、自動車事故で顔をめちゃめちゃにされた娘クリスチアヌ(エディット・スコブ)があった。
世間には娘は死んだと偽り、彼は助手のルイーズ(アリダ・ヴァリ)を使って若い娘を誘拐し、その顔の皮膚を娘に移植しようと努力していた。
ルイーズも事故で傷ついた顔を博士に治してもらった女なので、彼の命令に従ったのである。
皮膚移植の手術は失敗した。
そして二人目にはスイス娘のエドナ(ジュリエット・メニエル)が誘拐されてきた。
二度目の手術は成功したかにみえた。
しかし日がたつと娘の顔の皮膚は腐ってくずれおちた。
エドナは逃れようとして階上の窓から身を投げて死んだ。
警察はひんぴんと若い娘が失踪するのを不思議に思い、万引の前科をもつ娘ポーレット(ベアトリス・アルタリバ)を使って、おとり捜査をはじめた。
クリスチアヌの許婚者であるジャック(アレクサンドル・リニョー)は、ある日自分の心を押さえられなくなったクリスチアヌが思わずかけた電話で、何か秘密が隠されていることに気づいていた。
病院では博士の助手であるジャックは、警察に協力を申し出た。
おとりのポーレットは、わざと博士の病院に入院した。
そして案の定、退院と同時に彼女は、博士に誘拐された。
彼女は博士とルイーズの手で手術室に運ばれた。
それを見ていた娘のクリスチアヌは、メスでポーレットを縛ったいましめを解いた。
そしてルイーズを殺し、地下室に実験用に押しこめられていた猛犬の檻を開いた。
犬たちは庭におどり出て博士を食い殺した。
博士の顔はめちゃめちゃに食い裂かれた。
白いゴムの仮面をつけたポーレットは、ひとり鳩を抱いて森の中をさまよった。
コメント:
フランスの恐怖映画を代表する作品。
高名な外科医師のジェネシエ博士の娘クリスチアヌの顔が交通事故で醜くなり、郊外の屋敷に手術室をもうけ、助手ルイーズに若い娘を拉致させては、顔の皮膚の移植手術を重ねていたが、うまくいったかに思えた手術は時間の経過とともに醜く崩れ出してしまう。
モノクロ映像ならではのコントラストは鮮烈で、少しも恐怖をあおっている訳でもないのに、超現実的な感覚で恐怖が迫ってくる。
ラストで鳩の群れに囲まれながら森の中に消えてゆくクリスチアヌの姿が網膜に焼き付けられた思いがする。
この手のホラー映画はフランスでは希少価値であり、今後も名作として残ることは確実だ。
異色の監督・ジョルジュ・フランジュによる特異のホラー作品。
この人は、フランスの映画監督、脚本家。
シネマテーク・フランセーズの共同創設者として知られる。
ヌーヴェルヴァーグの先駆と位置づけられている。
主な作品は、以下の通り:
- Le Métro (1934年/短編)*トリュフォーの『終電車』で映像使用
- 獣の血 Le Sang des bêtes (1949年/短編)
- グラン・メリエス Le grand Méliès (1952年/短編)
- 白い少女 La première nuit (1958年/短編)
- 壁にぶつかる頭 La Tête contre les murs (1959年)シネクラブ上映
- 顔のない眼 Les Yeux sans visage (1960年)
- Pleins feux sur l'assassin (1961年)
- テレーズ・デスケルウ Thérèse Desqueyroux (1962年)ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞ノミネート
- ジュデックス fr:Judex (film, 1963)Judex (1963年) TV5MONDE放映
- 山師トマ Thomas l'imposteur (1965年)ベルリン国際映画祭金熊賞ノミネート
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