「プレイタイム」
(原題:Playtime)
1967年12月26日公開。
ジャック・タチの遺作的作品。
受賞歴:
- 1968年度 パリ・アカデミー・デュー・シネマ グランプリ
- 1969年度 モスクワ国際映画祭 銀賞
- 1969年度 ウィーン映画祭 大賞
- 1969年度 ストックホルム・スウェーデン映画 オスカー
脚本:ジャック・タチ、ジャック・ラグランジュ、アート・バックウォルド
監督:ジャック・タチ
キャスト:
ユロ氏:ジャック・タチ
バーバラ:B・デネック
あらすじ:
コンピューター化され、機械文明が高度に発達した現代のパリ。
おのぼりさんのユロ氏(J・タチ)は、一流の近代的な大会社に就職するためにやって来たが、ノンキ者の彼は、面接係に会ったもののちょっとした行き違いから、すぐはぐれてしまった。
最新の商品を展示してあるモダンな会場に迷いこんだユロ氏は、そこで観光旅行団の一行に出会い、若い娘バーバラ(B・デネック)と知り合いになる。
その夜、街に出たユロ氏は、偶然、会社の面接係と再会して話をつける。
次に近くのドラッグ・ストアでパンを食べていると、友人の“ローヤル・ガーデン”のボーイにさそわれ、パーティに出かけることになった。
そこで、またしても観光団に出会うが、ユロ氏は玄関に入るやいなや、総ガラスのドアを壊すやら、柱にぶつかるやらで散々。
パーティが最高頂に達するや、混乱は混乱をまねいて、収拾がつかなくなってしまった。
やがて明け方となり、人々はひと晩の狂宴を終え、それぞれ家路につく頃、ユロ氏とバーバラは街に出た。
ついに二人の別れの時が来た。
ユロ氏は、パリの思い出にとバーバラにネッカチーフをプレゼントした。
楽しい思い出とネッカチーフを胸にバーバラは、オルリー空港へと向かうのだった。
コメント:
ジャック・タチ監督&脚本&主演の超大作であるが、ストーリーらしきものがあって無いようなものなので、なんとも言えないまま2時間経ってしまう不思議な楽しい映画だ。
ジャック・タチが、自らの集大成を目指して多額の資金を注ぎ込んだ野心作であり、フランス映画史上屈指の超大作である。
1964年から制作に入り、1967年にフランスで公開された。
タチはこの映画でも「ユロ氏」を演じているのだが、ユロ氏は必ずしもメインキャラクターではない。
「タチ・ヴィル」と呼ばれる、ガラスの超高層ビルや空港・博覧会場・アパート・オフィスなどのモダニズム建築群からなる2500平方メートルの巨大なセットがパリ郊外のヴァンセンヌに作られ、高画質の70mmフィルムを使用して撮影が行われた。
細部へのこだわりから全体の3分の1を撮り直したり、ほぼ全ての俳優のパントマイムをタチ自ら指示するといったこだわりもあり、最終的には撮影期間は丸2年、制作費も現在の額にして1540万ユーロ(当時の価格にして1093億円)というフランス映画では前例のない多額に及んだという。(ほんまかいな?)
フランソワ・トリュフォーら一部の映画人には絶賛されたものの、アメリカでの配給がうまくいかなかったことや、タチに反感を抱いていたマスコミによる酷評などがたたり、興行的には惨敗したようだ。
クライマックスとなるレストランでの喧騒シーンは、凄いなと思える。
100人以上は居る空間で「誰に焦点を合わせるでない撮り方」、つまり、手前の人は何かをしていて、その後ろの人も何かしていて、更に後ろの人達も何かしている、といった風に「全員の行動を全部映し出そうという試み」を感じさせる。
このあたりが実に上手い。
全編通じて、映像的にも凄いのは、序盤で出てくる無機質な空間だけではなく、途中途中でガラスに映るエッフェル塔やモンマルトル寺院など不思議な感覚だ。
更に、メリーゴーランドの様に回転する車の波も素晴らしかった。
興行的に大惨敗となったため、再利用の希望もかなわずタチ・ヴィルは取り壊され、タチは破産に追い込まれてしまう。
しかしタチ自ら「私の遺作」と語ったほどに、監督の文字通り全身全霊が捧げられたこの超大作は、多くの映画人から絶賛されている。
これぞ、ジャック・タチの世界だ。
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