「スリ (1959)」
(原題:Pickpocket)
1959年12月16日公開。
キネマ旬報ベストテン第9位。
監督・脚本:ロベール・ブレッソン
キャスト:
ミシェル:マルタン・ラサール
ジャンヌ:マリカ・グリーン
ジャック:ピエール・レーマリ
警部:ジャン・ペルグリ
あらすじ:
ロンシャン競馬場で、ミシェル(マルタン・ラサール)は前の女のバッグから金をスリ取った。
彼は貧乏な学生だ。
母から離れ、安アパートで暮している。
生れつき手先が器用なのだ。
--ミシェルはたちまち捕まった。
だが、証拠がなく、すぐ釈放された。
母にその金を届けた時、隣室の娘ジャンヌ(マリカ・グリーン)に逢った。
小才のきく真面目な友人ジャック(ピエール・レーマリ)に、ミシェルは仕事の世話を頼んだ。
仕事へ行く地下鉄で、スリの犯行を目撃し、ひきつけられた。
練習ののち、最初の犯行は成功した。
毎日つづけた。
時には失敗したが。
ジャックと喫茶店にいる時、じん問された警部ジャン・ペルグリに会った。
彼はミシェルになぜか目をつけているらしかった。
ミシェルは平常から抱く“盗みの哲学”を話した。
--本もののスリが彼をアパートの出口で待っていた。
見込まれた彼は種種の手口を教えられた。銀行の前で、最初の共同の仕事をした。
駅では、三人で組んでかせいだ。
ジャンヌの置手紙がきていた。
母が危トクらしい。
彼女はミシェルが久しぶりにあってすぐ死んだ。
教会で涙がでた。
--ジャンヌは不幸な娘だった。
妻に去られた父と妹たちの面倒をみていた。
彼女とジャックと三人で遊園地で遊んだとき、ミシェルは他人の時計が気になった。
二人のいぬ間に、時計をスリ取り、追われ、傷ついて帰った。
ジャックはなにかを察したようだ。
立ち去る彼に、ジャンヌを愛しているんだろうとミシェルは浴びせた。
喫茶店でジャックといたとき、また警部に会った。
愛読書“スリ王”を持ってたずねてこいといった。
ミシェルは待たされた。
警部はスリの話をちょっとしただけだ。
その間に、家宅捜査をしたらしかった。
盗品は発見されていなかった。
--二人のスリ仲間が捕まった。
それに、ジャンヌが警察に呼ばれた。
ミシェルは彼女をたずねた。
彼は独居するとき母の金を盗んだのだ。
母は知らずに訴え、すぐ取り下げた。
それと競馬場でのスリ以来、警察は彼に目をつけていたのだ。
急に出発の気分が彼を襲った。
彼を愛しているジャンヌをふりきり、ミシェルはイタリアへ発った。
それから英国へ渡り、二年間、スリの生活をした。
彼はまた帰ってきて、例のアパートの室へ立ち寄った。
ジャンヌが子供とそこで暮らしていた。
ジャックに捨てられたのだ。
彼は更生を誓い、しばらくは真面目に働きジャンヌを助けた。
だが、競馬場で、警察の罠にかかり、補まってしまう。
刑務所にジャンヌが面会にきた。当りちらした。
だが、三週間後、子供の病気がなおったあときたジャンヌと、彼は鉄格子ごしに抱きあった。
《君にあうために、どんなに廻り道をしてきたことか》。
コメント:
この作品は、フランスの第一回「新しい批評賞」で最優秀フランス映画賞を得た。
スリの芸術的な要素が主人公の青年の内面的な動きに於いて捉えられる。
内容は、あるスリが犯行と更生を繰り返し逮捕される姿を追った犯罪サスペンスである。
ロベール・ブレッソン監督作品なので、例によって出演者は素人ばかり。
その中でジャンヌ役を演じたマリカ・グリーンが本当に美しい。
整った顔立ちと清楚なイメージに心奪われる。
物語の方は、タイトルからすぐに判るように「スリ」のドラマなのだ。
スリのテクニックに感心してしまう。
しかし、この手先が起用な技の数々は「ロベール・ブレッソン監督の芸術表現」のひとつなのかも。
この映画は、