フランス映画200選 第14作 「舞踏会の手帖」 20年前の舞踏会の相手を巡る女性の旅を描く! | 人生・嵐も晴れもあり!

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「舞踏会の手帖」

(原題:Un carnet de bal

 

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「舞踏会の手帖」 予告編

 

1937年9月9日公開。

日本未公開作品。

 

 監督・脚本:ジュリアン・デュヴィヴィエ

 

キャスト:

  • クリスティーヌ: マリー・ベル - イタリアのコモ湖畔の古城に住む未亡人。
  • ブレモン: モーリス・ベナール - クリスティーヌの亡夫の秘書。
  • マルグリット・オディエ: フランソワーズ・ロゼー - ジョルジュの母。
  • ピエール・ヴェルディエ: ルイ・ジューヴェ - キャバレーの経営者。現在の通り名はジョー。
  • アラン・レニョー: アリ・ボール - 元音楽家。現在はドミニク神父として少年合唱団を指導。
  • エリック・イルヴァン: ピエール・リシャール=ウィルム - 山岳ガイド。
  • フランソワ・パチュセ: レイミュ - 田舎町の町長。
  • ティエリー・レナル: ピエール・ブランシャール - 堕胎専門の闇医者。
  • ファビアン・クティソル: フェルナンデル - 美容師。
  • ジャック: ロベール・リナン - ジェラールの息子。

 

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あらすじ:

秋も終わろうとする11月のイタリア。

コモ湖畔に立つ宏荘な古城は霧こめて憂愁であった。

クリスチーヌは年かさの夫の野辺の送りを済ませたばかりである。

非常に人の良い夫ではあったが、年齢が離れすぎていた為にクリスチーヌは夫に愛を感じないでしまった。

美しい若妻をいとおしむ余りか、夫は彼女に何人との交際も許さなかった。

36歳の今、クリスチーヌは過ぎた20年の結婚生活に青春の悦びを味わう事のなかった淋しさを今更の様に感じるのである。

夫を失ったクリスチーヌは誰ひとりの身寄りもなく、訪ねるべき友もない。

だが彼女はまだ若い。

もう一度人生を新しく出直そう。

クリスチーヌは夫の形見をすべて召使達に与え、思い出の品を炉に投げた。

その中からふと取り落とした一片の手帖。

それはクリスチーヌが一人前の女として初めて舞踏会に出た折りの、ダンス相手の男の名を書き記したものだ。

あの時の十人の若者達はどうしているのであろう。

想い出そうとしても二十年の歳月は記憶を消してしまった。

否、ジェラールをどうして忘れ得よう。

あの時彼は十八歳だった。

金髪で、ギリシャ神話の神の様に美しかったジェラール。

十六歳のクリスチーヌが秘かに愛を感じたジェラール。

彼女は目を閉じた。

瞼に浮かぶのは美しいシャンデリヤのもと、甘いワルツの曲に乗って、白いレースの裳も軽く、踊りに酔った20年昔の舞踏会だ。亡き夫の秘書であったブレモンに頼んで、十人の男達の住所を調べて貰うと、その二人はすでに他界していた。

そして皮肉にもジェラールだけが、住所が解らない。

思い立った事だ。

クリスチーヌは旅装を整えた。 

先ず訪れたジョルジュ・オーディエの家で、出迎えたのは母のオーディエ夫人であった。

夫人は彼女と対座すると、貴女はクリスチーヌでしょう、いまにジョルジュは戻ります、是非会って、貴女の娘さんと結婚させて下さい、と言う。

ジョルジュは20年前クリスチーヌの婚約を聞いた時自殺したのだ。

動転した母親はその死亡通知も出さなかったので、クリスチーヌも今初めて知ったのだ。

狂気の母は彼女を追い出した。

次はキャバレエの経営者となっているピエール・ヴェルディエだ。

今はジョウと名も変わって、夜盗団の采配を振る前科者だ。

ヴェルレーヌの詩を誦した昔日の面影はすでに失せている。

それでも昔話に夜の更けるのも忘れたが、踏み込んで来た官憲にジョーは曳かれて行った。

ピアニストのアラン・レニョオルを訪ねると、今は神父ドミニックであった。児童聖歌隊に讚美歌を教えている老僧も、かつてはクリスチーヌを想って死のうとした事もあったとういう。

それを聞いて彼女の心はまた痛むのだ。

次にアルプスに登ってエリック・イレヴァンに会った。

詩人を志した彼はいま山案内人である。

昔を語り合って、二人の心は溶け合った。

彼とならば新生をともに出来ようか。

しかしエリックは雪崩の警鐘を聞くと彼女を捨てて義務へ走った。

南フランス海岸の田舎町には、政治家志望だったフランソワ・パテュセが町長をしている。

彼女が訪れた日、彼は女中を後妻に迎える結婚式に忙しかった。 

マルセイユで医師チェリーを訪れたが、彼は既に反狂乱の廃疾者だった。

彼女は生まれ故郷で理髪師になっているファビアンと、日曜の夜の舞踏会へ出て見た。

それは彼女が瞼に描く舞踏会とは似もやらぬ侘びしい田舎びたものだった。

幻滅と共に帰った彼女はジェラールが湖の対岸に住むと初めて知り、訪れると彼は一週間前に死んでいた。

彼女はその忘れ形見ジャックを養子に迎えた。

何か母性愛に似た愛情を抱いて。

 

舞踏会の手帖 - ネタばれせずにCINEるか

 

コメント:

 

あらすじを読むと、とても重苦しい作品に思えるが、実際は一流舞台俳優をそろえたキャストは豪華で、演技派ばかり。

この俳優陣のおかげで、悲喜こもごものバランスのとれた群像劇に仕上がっているのである。

 

次々に登場する男達は、ギャング、神父、登山家、町長、医者、美容師と様々。

すでに自殺している者、悪に手をそめたもの、隠居生活のような暮らしをしているもの・・・。

息子が自殺したショックで時が止まったままの母親の哀れさや、クリスティーヌを“再び”失って人生を悲観し、内縁の妻を殺してしまう男など、衝撃的なシーンも強い印象を残す。

何故か一番印象に残った男は、一番平凡な人生を歩んでいる美容師のファビアン。

普通の結婚生活を送り、子供も3人いて、金持ちでも貧乏でもないいたって平均的な生活をしている。

彼女と再会しても、「いい思い出」がひとつ増えるだけで、今後の人生に大きな影響をあたえることもない男。

この一番平凡な男の登場が、見ている私をホッとさせてくれた。

彼がいたからこそ、クリスティーヌも初恋相手の息子を引き取って育てるという新たな幸せを掴むことができたのだ。

ラストシーンでその息子の初めての舞踏会につきそう彼女の誇らしそうな笑顔が、どんな人生も捨てた物じゃないと語っている。

 

この映画のタイトルが意味するものは、かつての青春時代の思い出の詰まった舞踏会の手帖だった。

青春よもう一度的なスタートで数々の男たちと再会して行くという、奇抜な発想の作品だ。

そして、最後は初恋の男の息子を引き取るという年相応のエンドになっている。

 

このヒロインを演じているのは、マリー・ベル。

ボルドー南郊で生まれたフランス人で、舞台女優、映画女優、劇場支配人をつとめた。

1922年以降、約40本の映画に出演した。

日本では、ジャック・フェデーの『外人部隊』、ジュリアン・デュヴィヴィエによる本作『舞踏会の手帖』などの映画によって知られた。

 

この映画は、日本未公開だが、数年前にNHK BSプレミアムで放送された。

現在は、以下のサイトで動画配信中: