『ザ・デッド 「ダブリン市民」より』
(原題:The Dead)
1987年9月3日公開。
アイルランドのある老夫婦の晩年を描いた感動作。
全米映画批評家協会賞受賞作品。
原作:ジェイムズ・ジョイス『ダブリン市民』
脚本:トニー・ヒューストン
監督:ジョン・ヒューストン
キャスト:
- アンジェリカ・ヒューストン - グレタ・コンロイ
- ドナルド・マッキャン - ガブリエル・コンロイ
- レイチェル・ダウリング - リリー
- キャスリーン・ディレイニー - ジュリア
- ダン・オハーリー - ブラウン氏
- ヘレナ・キャロル - ケイト・モーガン
- マリー・キーン - マリンズ夫人
- ドナル・ドネリー - フレディ・マリンズ
あらすじ:
1904年雪降るクリスマスを迎えたアイルランドの首都・ダブリンの街。
大学教授のガブリエル(ドナルド・マッキャン)と妻のグレタ(アンジェリカ・ヒューストン)はジュリア(キャスリーン・ディレイニー)とケイト(へレナ・キャロル)というモーガン叔母姉妹が毎年主催している舞踏会に遅れてやってきた。
大勢の男女が集まり、談笑とダンスの活気で、暖かくなごやかな雰囲気につつまれていた。
幸福感に満たされたまま宴は終わったが、帰り際に「オーリムの乙女」という歌を聴いた時から、グレタの様子が日頃とは別人のようにおかしくなる。
ホテルに戻ったガブリエルは、グレタから彼女がまだゴールウェイの田舎に住んでいた娘時代に出会った恋人と、その死についての悲しい思い出話を聞かされた。
ガブリエルは、今夜起こった様々な光景を思い出し、生きとし生けるものが遅かれ早かれ移り住むおびただしい死者の群れの世界を想った。窓の外に降りしきる雨は、今夜はアイルランド全土を優しくつつみこむかのようであった。
コメント:
20世紀の最も重要な作家の1人と評価されるアイルランド出身の小説家であるジェイムズ・ジョイスの短編集『ダブリン市民』の一篇「死者たち」が原作である。
ヒロインを演じている中年の美人女優は、アンジェリカ・ヒューストン。
見てすぐに「アダムスファミリー」のお母さんだとわかる。
だが、その印象を引きずることなく、優雅な淑女として熱演している。
アイルランドの首都・ダブリンの上流家庭のちょっとしたパーティが賑やかに開催され、招かれた夫婦の妻は、誰かが余興で歌った歌に一人涙する。
帰宅後夫が問いただすと、少女の頃の若くして亡くなった恋人がかつて歌った歌だという。
パーティの席上でも、亡くなった友人を悼む言葉があり、パーティが終わっても妻は死んだものを連れて帰ってきてしまった。
ラストのモノローグには無常観が溢れていて、これが老境の心なのかと思わせる。
落ち着いた名作である。
ジョン・ヒューストン監督の遺作となった作品である。
この人は、ハリウッド映画の繁栄の基礎を築いた名監督であった。
ハンフリー・ボガートを世に出した『マルタの鷹』(1941年)を皮切りに多くの作品を世に送り出した。
代表作は、『黄金』(1948年)、『アスファルト・ジャングル』(1950年)、『アフリカの女王』(1951年)、『赤い風車』(1952年)、『白鯨』(1956年)、『王になろうとした男』(1975年)、『女と男の名誉』(1986年)、『ザ・デッド/「ダブリン市民」より』(1987年)。
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